「農民」記事データベース20031222-616-08

二〇〇三年第二回全国委員会への報告(3/5)

二〇〇三年十二月十日 農民運動全国連合会常任委員会

関連/はじめに
  /〔1〕総選挙の結果からくみ取るもの
  /〔2〕農業をめぐる情勢と、国民の食糧を守り、地域の再生をめざす農民連の役割
  /〔3〕一年間の運動の成果を生かして取り組む当面の課題
  /〔4〕新たな情勢に対応した組織づくりへの挑戦と、新聞「農民」を運動と組織の中心に据えて広げよう
  /〔5〕イラクへの自衛隊派兵や改憲阻止、平和・くらしを守る国民的たたかい


〔3〕一年間の運動の成果を生かして取り組む当面の課題

 (1)FTAによる自由化阻止、WTO協定の改定、価格保障を中心にした農政の転換を要求するたたかい

  1、「国際米年」の取り組みを「米改革」を中止させる運動として全国で

 国連は二〇〇四年を「国際米年」とし、米を守る国際的な世論喚起を呼びかけています。世界の六割がカロリーを米に依存し、今後の世界の食糧確保と環境、文化にとって米が最も重要な穀物であるという立場から呼びかけられたものです。

 行動の詳細は明らかになっていませんが、自由化を前提に米の生産を縮小し、稲作農民を生産から締めだす「米改革」を中止させ、稲作を再生する契機として、すべての都道府県で、広範な農業団体や自治体、階層と共同して集会やシンポジウム、創意あるイベントを具体化しましょう。

  2、中央での記念行事  として「WTO協定と 食糧主権をテーマに した国際シンポジウム」(仮称)の開催を 検討します

 数年来、進めてきた農民連の国際交流は、WTO協定がアメリカや一握りの多国籍企業が一人勝ちする一方、先進国や途上国、日本のような輸入大国を問わず、世界中の農業を破壊し、農民収奪の元凶であることを私たちが実感するうえで大きく貢献してきました。

 また、WTO協定を絶対化して農業つぶしを進める日本の農政とは別の流れが世界に広がっている事実は、日本でたたかう私たちに大きな確信と展望をもたらしています。世界に広がる「WTOノー」「食糧主権」の確立を求めるたたかいと連帯して国内で運動を広げることなしに日本で農政を転換させることはできません。

 こうした立場から、食健連と共同して「WTO協定と食料主権をテーマにした国際シンポジウム」(仮称)の開催を検討します。

  3、「米改革」とのたたかい

 平成十六年度は「米改革」の初年度であり、米を守るたたかいはいよいよ正念場です。「米改革」のねらいが明らかになるにつれて矛盾が深まり、三月末を期限とする「地域水田農業ビジョン」作りが遅々として進まない状況にあります。一方、農水省による自治体への締めつけが強められているもとで、農民を主人公にした話し合いを放棄して行政と農協が主導して担い手を決めるなど、一方的なビジョン作りが行われています。

 今年の不作によって、政府が十分な備蓄を放棄し、在庫減らしを最優先する需給計画のもとで、在庫の大半が平成八年、九年産米と、ミニマムアクセス米だけで、前年産の在庫が底を突くという状況が引き起こされました。

 こうした事実をまったく無視して政府は、農民を米づくりから締めだす「米改革」を進め、前年度と同じ百六万ヘクタールの減反を押しつけ、国民に主食を安定供給する責任を放棄しています。

   (1)「米改革」のねらいを農民に知らせ、全市町村、集落で学習会や「座談会」などを開き、「私たちの地域(集落)の米作り計画」をつくろう

 「米改革」の危険性は、ますます明瞭です。

 農民連は米改革の中止と、「みんなが担い手」、価格保障を農業政策の中心にすえること、耕作が困難な地域での家族経営を支援する助け合いを要求し、真に地域の生産を維持・発展させるための計画づくりを要求してたたかいます。

 地域での集落ぐるみの運動として、地域で話し合って「私たちの地域(集落)の米づくり計画づくり運動」をよびかけます。

 その中心は、(1)多数の農民を米づくりから締めだす「ビジョン」に対抗し、「みんなが担い手」の立場から、地域の条件にあった米づくりや地域の生産を広げる計画をつくること、(2)耕作できなくなっている農家、兼業農家、専業農家が地域ぐるみで助け合って生産する実践を進める、(3)米や転作作物の販売ルートの開拓、加工などにも取り組む、(4)この計画を自治体に届けて支援策を提案し、政府に対して一緒に「米改革」の中止と農政の転換を求める運動に発展させるなどの内容です。

   (2)(国民の主食・米と農業を守れ)の行動を広げよう

 米問題は、国民にとっても一大事であり、主食・米を守る国民的運動なしには跳ね返すことできません。食健連と力を合わせ、農民の怒りを結集し、地域住民や自治体、農業委員会、JA、商店街などと共同して、「米・農業つぶしを許すな、地域の経済を守れ」の地域集会、シンポジウム、軽トラコンボイや宣伝行動など多様な行動を地域ぐるみで広げましょう。食にかかわる広範な団体との共同を広げましょう。

   (3)「米改革」初年度の来年、米の流通ルートを広げ、「準産直米」 の取り組みを全国共通課題として広げよう

 政府が「米改革」を強行しようとしているもとで、農政の対象からはずされる農家はもちろん、「担い手」や集落営農に取り組む地域にとっても、米のルートをもつことは、いよいよ差し迫った課題です。

 流通の面でも、大手卸が「米改革」と米不足を絶好の機会として市場を独占する動きが強まり、中小の卸や米屋さんに安定的に米が届かないという状況が広がっています。全農も大手量販店のみを対象にした流通につき進んでいるもとで、中小卸・小売、そして消費者に安全な米を安定的に届けるための「準産直米」の取り組みを抜本的に拡げることが求められています。

 広範な農家や生産グループ、条件のある単位農協を含めて共同を広げ、中小の卸や小売との提携を軸に、消費者にまで視野を広げて流通ルートづくりを広げることは、「米改革」とのたたかいという側面にとどまらず、流通の大企業支配とのたたかいとしても重要な役割をもっています。

 こうした視点で、すべての組織が、安全・安心・信頼できる米作りの努力と、会員の拡大を結んで「準産直米」の取り組みを飛躍的に前進させるために全力をあげましょう。

  4、価格保障、セーフ ガードの発動を

 関税の大幅引き下げ、あるいはゼロにして外国農業と競争させ、日本農業が生き残れなくてもかまわないという小泉「改革」の方向か、世界の多くの国がとっている価格保障を中心にした方向かのたたかいです。

 農業予算の使い方をゼネコン中心の農業土木偏重から、価格保障中心に切り換えさせ、地方でも自治体独自の価格保障を実現する運動を広げましょう。セーフガードを発動させる運動も重要です。

  5、農業つぶしの正面 に躍り出た財界・大 企業とのたたかい

   (1)大企業のねらいの暴露とたたかい

 開発輸入の実態や財界・大企業の農業・食糧、農地支配のねらいなど、暴利をむさぼり社会的責任を省みない大企業の横暴を暴露することが重要になっています。住民ぐるみで大企業を包囲するたたかいを広げましょう。

   (2)具体的な要求で大企業とのたたかいを

 農業資材の独占価格、市場の支配や買いたたき、街壊しなど具体的な問題で大企業とのたたかいを全国で広げましょう。日本経団連や関係する大企業への抗議・要請行動も配置してたたかいます。

  6、たたかいの裾野を 広げよう

   (1)地域食健連づくりを軸に、草の根からの食健連運動の新たな発展を

 イ、「地産地消」を軸に、住民ぐるみで地域をコーディネイトする運動を進めよう。

 ロ、小売や商店街と共同してライフエリアを守る運動の担い手として活動し、特に都市部への地域食健連づくりを重視しよう。

 ハ、農業・食糧つぶしに対し、一致点による共同を広げてたたかおう。

   (2)自治体、農協、がんばっている生産グループとの共同

 単位農協や生産グループへの働きかけは特別に重要です。時に未合併でがんばる農協や、自治体合併に反対し、農業を軸に地域経済の再生に向けて努力する自治体との共同を広げましょう。

   (3)FTAで影響を受ける業界と共同してたたかおう

 メキシコとのFTAでは、養豚や柑橘関係などが焦点になっています。今後、韓国やタイ、オーストラリアとの自由化交渉によって大きな影響を受ける品目にかかわる農民への働きかけを強め、関係団体や業界との共同を広げましょう。

 (2)大いにものづくりを広げ、ネットワークの力を生かして多様なルートを広げよう

  1、来年に向けた作付けを組織する「話し合い」を全国共通課題として

   (1)「準産直米」の取り組みをすべての組織で

 「準産直米」を正面にすえた話し合いをすべての組織と地域で広げましょう。地域の特性を生かし、消費者、業者が求める「安全でおいしい米作り」をどう進めるか、安定供給をどう確保するか話し合いましょう。春のうちに〇四年産の「産直・準産直の登録」を組織しきる構えで、積極的な目標を持って取り組みましょう。

   (2)地域にあった作物の生産を呼びかけよう

 「佐久楽農倶楽部」などの経験に学んで、産直センターと農民連組織が共同し「畑を遊ばせず、ものを作って売ろう」と呼びかけましょう。特に高齢者や女性、リストラされた兼業農家などへの呼びかけを重視しましょう。

  2、全国ネットワーク の立ち上げ

 「全国ふるさとネットワーク」は、すでにネットワーク機能を生かして運動が進んでいる米を中心課題に位置づけ、野菜や果樹など、主要品目別の「部会」の確立、多様な販路の拡大、リレー出荷の調整、専門的な情報の提供、経営や経理のサポートなど、全国の運動と事業に貢献できる役割をもった組織として、来年の夏に立ち上げることをめざします。全国ネットの「青写真」(事業内容、組織、財政)を作成し、全国に提案できるようにします。

 いま、なぜ、ネットワークか、県やブロックで何を共同して具体的にとりくむかの議論と計画を先行することが大切です。

  3、新婦人産直の発展を

 新婦人との産直は、米や野菜、豚肉など扱い品目が増え、小売や商店街と提携して、ライフエリアを守る運動として広がったり、加工業者と提携して学校給食に豆腐を供給するなど、従来の枠組み超えて多面的に発展しています。

 新婦人との産直は、信頼を何よりも大切に、農業、食糧を守ることを土台にした産直運動の原点です。それだけに、話し合いや学習、交流を通じた合意という点でも、自信のもてる農畜産物を届けるという点でも、あらゆる産直運動の典型とし発展させる努力が求められています。

  4、分析センターの活用を

 全国の募金によって重金属の分析機器を配備するなど、国民のための食品分析センターとしての機能を格段に強化することができました。全国の仲間や、募金にご協力くださったすべての方々に感謝いたします。

   (1)分析センターを生かした活動を

 「分析を依頼したい」という要求から農民連に加入する例や、分析センターをもっている農民連に流通業界や国民から期待の声が寄せられているように、食品分析センターは農民連の魅力と信頼を広げています。会員の生産した作物の分析を第一の任務として活用し、国民の食を脅かす輸入農産物などの分析を行って社会的にアピールする取り組みをさらに強化します。

   (2)施設の改善と人的配置を進めるために「二千万円募金」の目標を達成しよう

 新たな機材の配備により施設の改善や、増員、分析を担っている人たちの過重負担の改善などが求められており、今年の取り組みのなかで改善をはかります。そのためにも都道府連にお願いした「二千万円目標」の達成をめざし、もうひとまわりの協力を強くよびかけます。

 (3)重税をはねかえす運動をはじめ、多面的要求を実現する運動

  1、消費税増税阻止、「免税点一千万円」に対応した税金の取り組みで会員拡大を

 財界主導による消費税増税のねらいが強まり、公的年金控除や定率減税の廃止など、国民への全面的な増税が、大企業や大金持ちへの特権的な減税と抱き合わせで企てられています。

 消費税増税阻止の共同を広げ、あらゆる増税を跳ね返すために全力をあげましょう。

 税制改悪により平成十五年度の事業販売額が一千万円超の人は、平成十七年度から消費税の納税義務者にさせられるため、認定農業者や専業農家の多くが対象となります。税務署は、JAや納税協力団体を動員して実務対応をやらせる方針で、農家の立場に立って対応できるのは農民連だけです。

 増税阻止のたたかいとともに、組織として農家の要求に応えるために、消費税の仕組みをつかみ実務的に対応できる力をつけることが求められています。消費税問題の要求で会員拡大を前進させるためにも、民主的な税理士の力もかりて、すべてのブロックと都道府県連が消費税に対応できる相談員を養成する研修を行いましょう。

  2、二〇〇三年度の確定申告の取り組み

 二〇〇三年度の確定申告の運動を「余分な税金は払わない」という取り組みとともに、納税者としての権利を身につけ、国民的な増税を跳ね返す運動として位置づけ、宣伝・対話を広げましょう。

 年内から会員の学習や地域での「相談会」をスタートさせ、組織拡大で大きな飛躍をつくりましょう。

  3、固定資産税の軽減、廐肥施設を償却資産にさせる運動を

 固定資産税の評価替えの基準年であった今年の取り組みは、各地で積極的に異議申し立てや審査申出を行い、農業施設用地を農地として評価させたり、造成費の単価引き下げ、堆肥舎の不動産取得税を取り消しさせるなど、運動を前進させています。

 不況や農業所得が低下しているなかで高い固定資産税を引き下げさせる運動は農民の切実な要求であり、ますます加速される不平等税制とのたたかいとしても重要です。

 これまでの成果を生かし、農業用施設用地を農地なみに評価させること、三大都市圏の生産緑地指定の拡大、広大な一般市街化区域農地にも生産緑地を適用させる運動を広げましょう。固定資産税を標準小作料程度に軽減させる運動も重視しましょう。

 また、「厩肥施設は構造にかかわらず償却資産にせよ」の要求は、不動産取得税をゼロにし、固定資産税を低くするという点で畜産農家の切実な要求です。畜産農家や酪農協などの畜産団体とも共同を広げ運動を前進させましょう。

  4、土地改良費の負担 を軽減させる運動

 四割の減反水田も土地改良の賦課金の対象にされ、加えて米価暴落や離農などによって土地改良区の維持が困難となり、維持管理費の負担増となって農家を苦しめるという状況が各地に広がっています。今後、一握りの「担い手」が中心となれば、賦課金は基本的に耕作者である「担い手」が負担することになり、土地改良区の運営が破綻したり多額の負担となる可能性があります。国の政策によってもたらされる負担は国が負担すべきであり、こうした立場から土地改良の負担を軽減する運動を進めましょう。あわせて厩肥施設への補助率引き上げも要求しましょう。

(新聞「農民」2003.12.22付)
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2003年12月

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