「農民」記事データベース20031222-616-07

二〇〇三年第二回全国委員会への報告(2/5)

二〇〇三年十二月十日 農民運動全国連合会常任委員会

関連/はじめに
  /〔1〕総選挙の結果からくみ取るもの
  /〔2〕農業をめぐる情勢と、国民の食糧を守り、地域の再生をめざす農民連の役割
  /〔3〕一年間の運動の成果を生かして取り組む当面の課題
  /〔4〕新たな情勢に対応した組織づくりへの挑戦と、新聞「農民」を運動と組織の中心に据えて広げよう
  /〔5〕イラクへの自衛隊派兵や改憲阻止、平和・くらしを守る国民的たたかい


〔2〕農業をめぐる情勢と、国民の食糧を守り、地域の再生をめざす農民連の役割

 (1)「鎖国発言」を契機に、国民の食糧をますます外国に依存し、農業破壊を加速させる小泉政治

 選挙公示直前、小泉首相がタイで行った「農業鎖国は続けられない」「外国との競争に耐えられる構造改革は待ったなし」という発言は、十一月二十一日の「食料・農業・農村政策推進本部」での「過度に国境措置に依存しない体制を確立する」「やる気と能力のある経営を後押し」するという発言とあわせ、財界の要求に沿って農産物の輸入自由化を促進し、その邪魔にならないように農民のリストラと「農業構造改革」を、当初の計画を前倒しして推進するという、今後の農政の枠組みを表明したものとして重大です。

  1、ゆきづまったWTO交渉を代替えし、財界の利益を守るためのFTA(自由 貿易協定)交渉

 そもそもFTAは、WTOが深刻なゆきづまりに直面しているなかで、“多国間がだめなら二国間で”と、関税撤廃や投資自由化によって利益を確保しようとする財界の後押しを受けて政府が進めているものです。

 選挙前にメキシコとのFTA交渉が養豚農家などの抵抗で決裂したことに危機感を深めた財界が「四千億円損した」などと政府・与党に圧力をかけ、小泉首相がこれに忠実に応じ、民主党も「追加マニフェスト」でFTAの推進を打ち出して競いあっています。

 しかも、メキシコとの交渉から農水省を排除し、官邸が直接、乗り出して、なりふり構わず推進するという異常な事態にあります。新たな自由化攻勢であるFTAとのたたかいは、待ったなしのときを迎えています。

  2、自由化の邪魔にならないように徹底した「構造改革」の推進

 「鎖国」発言を受けて政府は、「農政改革にスピード感をもって取り組む」(亀井農水相)とし、来年三月にスタートさせる予定だった「食料、農業、農村基本計画」の見直しに向けた審議を十二月にスタートさせました。見直しの内容は、今後、韓国や東南アジア、オーストラリアなどとのFTA交渉の邪魔にならないように、(1)関税ゼロでも「競争」できるように徹底した「構造改革」を断行する、(2)自給率を四五%に引き上げる目標を棚上げする、(3)九割の農民を切り捨てて「望ましい農業構造」を実現するために農地制度を改悪し、株式会社の農地・農業への全面的な参入を認める(4)価格保障を完全に撤廃して、ごく一部の「担い手」に限定した直接所得保障を導入するなどです。

 (2)イデオロギー攻撃をはね返し、「食糧主権」の確立と価格保障の実現を要求して

 世界で広がる「食糧主権を最優先せよ」という運動は、人間にとって一日も欠かすことのできない食糧と農業が、WTOなどによって阻害されていることを批判し、各国政府に対して農産物の価格保障を第一義的に実現することなどを求めているものです。

 ところが日本の政府・与党や野党の民主党までが四〇%という食糧自給率を省みず、財界の要求にもとづいて農業つぶしを競い、農民の組織である全中までが、自由化を前提にした「構造改革」を押し進めるという異常な事態にあります。

 しかもこうした農業つぶしを推進するために、家族経営を「三千年前の経営スタイル」(日本経団連・奥田会長)と攻撃したり、経営規模の小さい農家や兼業農家、高齢者農家を「やる気と能力のない農家」のように描き、家族農業を守る動きを「抵抗勢力」にしたてようというイデオロギー攻撃が強められています。

 世界の農業も、日本の農業も家族経営が大多数であり、「食糧主権」を守るためには家族農業を中心に価格保障の充実などが欠かせないというのが世界の流れです。

 九月にメキシコ・カンクンで開かれたWTO閣僚会議が決裂した最大の要因も、途上国はもちろんのこと、輸出国の農民を含む世界のNGOの「食糧主権を守れ」の主張が、アメリカなどの横暴にストップをかけたことにあります。

 イデオロギー攻撃を断固跳ね返し、「家族経営でこそ日本の農業が発展する」という主張を高く掲げ、国民合意めざしてたたかうことが求められています。

 また、カンクンのWTO決裂を受けて、ますます燃え広がる食糧主権の確立をめざす世界の流れと連帯し、日本政府の異常な態度を浮き彫りにし、転換させる国民的なたたかいが求められています。

 (3)生産を広げ、農と食、くらしを守る草の根のネットワークを広げてたたかおう

 選挙前とは違った政治的状況が生まれ、農業をはじめ、国民生活のあらゆる分野で悪政との矛盾が激烈に広がっているいま、農民連の役割はいよいよ重大です。

  1、“もう一つの流れ”と共同して、生産を広げ、自給率を向上、住み続けられる元気な地域作り運動を

 自給率が先進国で最低という危機的事態にもかかわらず、さらに国民の食料を外国にゆだね、生産から流通に至るまで大企業に支配させる動きが強まっています。

 一方、安全・安心、信頼できる国内産の農畜産物を求める多数の国民や、大手企業の横暴とたたかっている地域の中小流通業者、国による一方的な自治体合併に抗して農林漁業を基幹に地域を活性化させようと懸命にがんばっている自治体、「みんなが担い手」として困難のなかで生産を守ってがんばる農協の存在など、もう一つの流れが生まれています。

 こうした流れは、今、進められている財界中心主義に対する国民の側の対抗軸として重要であり、農民連がしっかり着目し、連帯して自給率向上をめざす国民的運動や、住み続けられる元気な地域づくりのネットワークを結んで運動を広げる時です。

  2、今こそ農業つぶし とたたかう農民の団 結、共同を広げよう

 財界の利益を最優先に、関税撤廃、「米改革」、農地制度の改悪など農業版「構造改革」が進められているもとで、これまでの立場を超えて農民連の主張との一致が広がっています。秋田県の自治体ぐるみの住民集会などに学び、農民の団結と共同を広げ、地域から農政の転換を迫るたたかいを広げるときです。

(新聞「農民」2003.12.22付)
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2003年12月

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