安全でおいしい国産小麦をもっと食卓に自給率なんと11%だって
パン、うどん、菓子などの原料である小麦は、米に次ぐ主要な食糧。ところが国産はわずか一割にすぎません。なんとか地元の小麦を業者につないで、国民的な自給率向上の運動を起こせないかと、北海道農民連は七月、大阪の製粉業者と懇談しました。
“国産小麦、もっとほしい”北海道農民連 大阪の製粉業者と懇談付増やしたいの思いこめて北海道産小麦の主力品種「ホクシン」はいま、収穫の最盛期。天高く晴れ渡った青空のもと、大型のコンバインが、黄金色の小麦を次々と刈り取っていきます。でも生産者の表情はいま一つさえません。それは、小麦の作付面積が二〇二〇年の目標を上回ったとして、農水省やホクレンが作付を制限する動きを強めているからです。 小麦は、畑作地帯では大豆やジャガイモ、テンサイなどと輪作するうえで欠かせない作物。また水田地帯でも転作田への作付が定着しており、小麦なくして北海道の農業は語れません。 わずかに上がったとはいえ、小麦の自給率は、たった一一%。ほとんどの輸入小麦はポストハーベスト農薬づけ、安全・安心の国内産を求める世論の高まりのなかで、「もっと作付を増やすべきではないか」という思いを胸に、小麦生産者とともに、全国連、大阪府連の協力で、大阪の製粉業者を訪ねて懇談。そこでの話し合いは胸のすく思いがするものでした。
話を聞いてみて展望がわいたはじめに訪れた製粉会社の専務は「近畿製粉協会として、品質にバラツキが少なく、外麦よりも安いホクシンを買い入れている。ミスマッチは解消している」と話します。 この“ミスマッチ”という言葉は、国産小麦は輸入小麦より品質が劣る、パンには向かない、という意味合いで農水省が使い始めたもの。農水省は九八年に「新たな麦政策大綱」を策定。製粉業者など実需者のニーズが生産者に伝わらないとして、それまでの麦の全量買い入れ制度をやめ、二〇〇〇年産から入札を基本とする民間流通に移行。競争原理を導入して国産小麦を買いたたく仕組みを作ったのです。 ところが現実は、国産小麦は“ミスマッチ”どころか、製粉業者が欲しくても手に入らない状況。訪問したもう一社の専務は「最近、国産麦を希望するところが増えており、今すぐにでも千トンほしい。学校給食用に三割くらい使っているが、今後も増えると思う」と言います。これを聞いた訓子府町の小麦生産者、中西康二さんは「思っていたような話を聞けて本当によかった。これで展望がわいてくる」と語っていました。
“ミスマッチ”要因は製粉大手だ「国産小麦がほしいが手に入らない」と製粉業者が言う一方で、産地では作付を制限する――これこそ、本当の“ミスマッチ”。その主な要因は、輸入小麦への依存を強め、業界の独占的な地位を占めている大手製粉企業です。 国産、輸入を合わせて約五百万トンの小麦粉のシェアは、日清製粉、日本製粉の上位二社で六割、さらに昭和産業、日東製粉を加えた大手四社で七割を占め、他の百社以上の中小業者が残りのシェアを分け合っています。「正直言って、大手の影響力は絶大。小麦の流通はガンジガラメだ」と、ある業界関係者。 その人はさらに「ホクレンは大手しか眼中にない。だから中堅以下の製粉業者はみんないやな思いをしている」と言います。ホクレンは、道産小麦の九五%以上を集荷し、販売の窓口ですが、大阪の製粉業者も「作柄の情報などがまったく伝わってこない」「産地の特定さえできない」と不満を口にしていました。 小清水農協の理事も務める大沢稔・北海道農民連副委員長は「われわれ生産者は、品質をよくするためにできることはすべてやり、生産履歴も全部つけている。ところがこうした努力がまったく伝わらず、本当に国産小麦が必要な業者に渡らない。新たな流通を考えていかないといけない」と語っていました。 (北海道農民連 野呂光夫)
(新聞「農民」2003.8.11付)
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[2003年8月]
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