「農民」記事データベース20030811-598-05

安全でおいしい

国産小麦をもっと食卓に

自給率なんと11%だって

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 パン、うどん、菓子などの原料である小麦は、米に次ぐ主要な食糧。ところが国産はわずか一割にすぎません。なんとか地元の小麦を業者につないで、国民的な自給率向上の運動を起こせないかと、北海道農民連は七月、大阪の製粉業者と懇談しました。


“国産小麦、もっとほしい”

北海道農民連 大阪の製粉業者と懇談

 付増やしたいの思いこめて

 北海道産小麦の主力品種「ホクシン」はいま、収穫の最盛期。天高く晴れ渡った青空のもと、大型のコンバインが、黄金色の小麦を次々と刈り取っていきます。でも生産者の表情はいま一つさえません。それは、小麦の作付面積が二〇二〇年の目標を上回ったとして、農水省やホクレンが作付を制限する動きを強めているからです。

 小麦は、畑作地帯では大豆やジャガイモ、テンサイなどと輪作するうえで欠かせない作物。また水田地帯でも転作田への作付が定着しており、小麦なくして北海道の農業は語れません。

 わずかに上がったとはいえ、小麦の自給率は、たった一一%。ほとんどの輸入小麦はポストハーベスト農薬づけ、安全・安心の国内産を求める世論の高まりのなかで、「もっと作付を増やすべきではないか」という思いを胸に、小麦生産者とともに、全国連、大阪府連の協力で、大阪の製粉業者を訪ねて懇談。そこでの話し合いは胸のすく思いがするものでした。

 話を聞いてみて展望がわいた

 はじめに訪れた製粉会社の専務は「近畿製粉協会として、品質にバラツキが少なく、外麦よりも安いホクシンを買い入れている。ミスマッチは解消している」と話します。

 この“ミスマッチ”という言葉は、国産小麦は輸入小麦より品質が劣る、パンには向かない、という意味合いで農水省が使い始めたもの。農水省は九八年に「新たな麦政策大綱」を策定。製粉業者など実需者のニーズが生産者に伝わらないとして、それまでの麦の全量買い入れ制度をやめ、二〇〇〇年産から入札を基本とする民間流通に移行。競争原理を導入して国産小麦を買いたたく仕組みを作ったのです。

 ところが現実は、国産小麦は“ミスマッチ”どころか、製粉業者が欲しくても手に入らない状況。訪問したもう一社の専務は「最近、国産麦を希望するところが増えており、今すぐにでも千トンほしい。学校給食用に三割くらい使っているが、今後も増えると思う」と言います。これを聞いた訓子府町の小麦生産者、中西康二さんは「思っていたような話を聞けて本当によかった。これで展望がわいてくる」と語っていました。

 “ミスマッチ”要因は製粉大手だ

 「国産小麦がほしいが手に入らない」と製粉業者が言う一方で、産地では作付を制限する――これこそ、本当の“ミスマッチ”。その主な要因は、輸入小麦への依存を強め、業界の独占的な地位を占めている大手製粉企業です。

 国産、輸入を合わせて約五百万トンの小麦粉のシェアは、日清製粉、日本製粉の上位二社で六割、さらに昭和産業、日東製粉を加えた大手四社で七割を占め、他の百社以上の中小業者が残りのシェアを分け合っています。「正直言って、大手の影響力は絶大。小麦の流通はガンジガラメだ」と、ある業界関係者。

 その人はさらに「ホクレンは大手しか眼中にない。だから中堅以下の製粉業者はみんないやな思いをしている」と言います。ホクレンは、道産小麦の九五%以上を集荷し、販売の窓口ですが、大阪の製粉業者も「作柄の情報などがまったく伝わってこない」「産地の特定さえできない」と不満を口にしていました。

 小清水農協の理事も務める大沢稔・北海道農民連副委員長は「われわれ生産者は、品質をよくするためにできることはすべてやり、生産履歴も全部つけている。ところがこうした努力がまったく伝わらず、本当に国産小麦が必要な業者に渡らない。新たな流通を考えていかないといけない」と語っていました。

(北海道農民連 野呂光夫)

(新聞「農民」2003.8.11付)
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2003年8月

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