「農民」記事データベース20030303-576-06

WTO農業交渉

三つの選択に乗るのではなく食料主権を貫け

衆議院予算委で質問 中林議員(日本共産党)

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 「日本は関税率の引き下げ競争に乗るべきではない」「食料主権を貫き、WTO農業協定の改定を」――日本共産党の中林よし子衆議院議員が、二月十三日の衆議院予算委員会で、WTO農業交渉について質問し、ハービンソンWTO農業交渉議長の第一次案(3〜4面参照)、日本政府が支持を表明したEU提案ともに日本の農業を守る内容ではないことを明らかにしました。


 議長提案もEU提案も開発輸入への危険

 中林議員はまず、十二日に発表されたハービンソン第一次案の内容について質問しました。大島理森農水大臣は「輸出国に偏った内容で、総体として容認できないが、途上国に向けての配慮はされている」と答弁。

 とくに問題となるのはハービンソン第一次案、EU提案ともに「先進国は、後発途上国からの全輸入に対して無税・無枠を供与する」、さらにEU提案では「途上国からの輸入の五〇%を無関税に」という内容を含んでいることです。

 この問題で中林議員が、アジアではどの国が後発途上国となるのかを質すと、「バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、ネパール、ラオスなどの国々が該当する」と農水省は答弁。さらに中林議員は「これらはお米の生産が可能な国々だが、商社などが開発輸入を行ったりしたら日本の農業は大変な事態になる。対策はあるのか」と追及。

 これに対し、大島大臣は「その分野については私どもも問題意識をもっている」と渋々、開発輸入の危険性を認め、「ハービンソン議長提案の途上国の部分すべてを支持するわけではない」と開き直りました。

 また途上国からの全輸入の五〇%を無税にというEU提案についても、「中国、タイ、韓国、インドなど日本が農産物を輸入している途上国から、全輸入量の五〇%が無税で入ってきたら日本農業に大変な打撃になる」と追及し、大島大臣も「当然のこと」と答えました。

 世界には公平公正な貿易ルールを求める声がある

 また、中林議員は関税率の引き下げについても質問し、「政府が数字を含めて支持を表明しているEU提案でも、日本の農業・米は守れない」ことを明らかにしました。EU提案では、平均三六%、最低でも一五%関税率を引き下げるとなっています。中林議員は「米については最も低い一五%関税で計算しても、十キロあたり三千七百八十円で輸入米が入ってくることになる。平均三六%にするためには他の作物はもっと関税率を引き下げなければならず、これでは日本の農業も米も守れない」と指摘。

 そのうえで、今後の交渉への日本政府の姿勢を質しました。「WTO交渉は農業分野だけではない。日本だけ孤立することはできない」と繰り返し答弁する大島大臣に対し、中林議員は「一見日本が孤立するかのように見えても、世界には公平公正な貿易ルールを求める声がたくさんある。アメリカ提案やハービンソン一次案よりEU提案の方がマシだというような三つの選択に乗るのではなく、日本は食料主権を貫いて、WTO農業協定の改定を主張するべき」と日本共産党の提案を示して、強く迫りました。

 関税引き下げ競争に追いこまれた原因は歴代自民党政治

 中林議員は“究極の困難な三択”に追い込まれた原因が、歴代自民党の政治にあることも明らかにしました。「米を関税化した四年前の当時、中川(昭一)農水大臣は“関税化した方が次期交渉で有利になるから”と言い、次の玉沢(徳一郎)農水大臣も“高関税を維持できる、維持する観点で交渉していく”と答弁して、野党の反対を押し切って関税化に踏み切った。しかし有利な交渉にはならず、関税引き下げ競争に日本政府も追い込まれているではないか。この責任をどうとるのか」と、まず福田康夫官房長官に答弁を求めました。

 しかし答弁に立ったのは大島大臣。「その都度将来を考えて判断して発言したのではないか」と答弁し、さらに福田長官は「農水大臣が答えたとおりだ」とさらに無責任な態度のままでした。

 中林議員は重ねて「これまでの過ちを繰り返してはならない。日本の農業を崩壊させ、消費者の安全な食料を求める声にも応えられないような状況にしてはならない」と質問を終えました。

(新聞「農民」2003.3.3付)
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2003年3月

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