「WTOノー!」世界の農民とともに
「ミニマム・アクセスの拡大と関税の引き下げに断固反対!」――東京でWTO非公式閣僚会議が開かれた二月十四〜十六日、都内ではNGOや農業団体、市民団体が主催する集会やデモ、シンポジウムなどが連日、繰り広げられました。直前に公表されたWTO農業交渉のモダリティ(自由化の枠組み)一次案は、「国際的押し売り」であるミニマム・アクセスをさらに拡大し、関税を大幅に引き下げようというもの。様々なとりくみでは、海外の参加者からも「反対!」の声があがり、議長国として「モダリティ案は『触媒』」などと玉虫色のまとめをした日本政府の道理のなさが浮き彫りになりました。(関連記事3〜5面)
2・15 WTO国際市民集会公正・公平な貿易ルールを韓国から百人参加「公正で公平なWTOルールを」――2・15WTO国際市民集会が二月十五日、東京・日比谷野外音楽堂で開かれました。同実行委員会が主催したもので国内外から一万人が参加。とくに韓国から百人が参加し注目を集めました。農民連、食健連の代表も参加しました。 晴天に恵まれた会場は、「関税引下反対!」「日本の食料と農業を守れ!」などのプラカードやのぼり旗、横断幕などを掲げて参加した農民らで満員。アグネスチャンさんや菅原文太氏、ダニエルカール氏など著名人が壇上の大きなビデオから集会参加者に熱いメッセージを寄せました。
農業者を守れ!各国農林漁業団体の代表あいさつには十三人が登場。フランスやカナダ、インドネシア、韓国、フィリピン、スリランカ、アメリカ、台湾の海外からの代表、日本から全中会長、林業経営者協会の代表が発言しました。 フランス農業団体連合会のドミニク・シャルド専務理事は「歴史や文化を背景にして各国の農業が形成されてきた。WTOによって世界の食と農が画一的になることには反対だ」と言い、米国ナショナル・ファーマーズ・ユニオンのロバート・カールソン理事は「農業交渉の最大の目標は、公正・公平な貿易ルールを確立し、農業者を守ること」と強調しました。韓国農協中央会の鄭大根会長は、「韓国の四百万の農民はモダリティ案を絶対に受け入れられない。各国の家族農家がWTOに対して大きな声をあげよう」と述べて、日本の農家と連帯を強める決意を表明。全中の宮田勇会長は「強い国が生き残る輸出国の主張は断じて認められない。関税の大幅削減は、農業の多面的機能がまったく失われてしまう」と発言しました。
消費者の強い関心参加者は外国の代表らを先頭に会場から銀座を通り東京駅近くの鍛冶橋交差点までデモ行進。数寄屋橋交差点では、「関税の大幅削減・一律削減反対!」「6割もの食料を海外に依存していていいんですか?」ののぼり旗を立てて、道行く人たちにチラシやリンゴなどを配布して訴えました。チラシを熱心に読んでいた主婦は「世界が戦争になるかもしれないというときに食べ物の問題をないがしろにしてはいけないと思います」と語っていました。
2・14 シンポ「命と暮らしは売り物ではない!」「命とくらしは売り物ではない!」――三十の幅広い団体が結集した「WTOは誰のため?東京行動」実行委員会は閣僚会議の開催に合わせて、シンポジウムや宣伝行動にとりくみました。同実行委員会は、NGOの「ATTAC(アタック)Japan」が呼びかけたもの。農民連や食健連も賛同団体に加わって行動しました。 二月十四日に東京・労働スクエアで開かれたシンポジウム。約五百人の参加者の前で講演したタイのウォルデン・ベロー氏は、先進国と発展途上国との間の三つの“不平等”協定をとりあげました。
先進国と発展途上国との間の“不平等”協定その一つは「貿易関連投資措置に関する協定」。「この協定によって東アジアの工業化は事実上不可能になった」とベロー氏。かつては途上国に進出した企業は、その国の部品を一定の割合で使うことが義務づけられていましたが、協定によってこの規定が取り払われたといいます。 二つめは「知的所有権協定」です。ベロー氏は「技術の拡散を防ぐという目的のこの協定で、独占企業は権益を守り、さらに途上国の財産である“種子”などを特許化して奪っている」と指摘。 そして最後に「農業協定は不平等の最たるもの」と述べたベロー氏は、「先進国は補助金で輸出を促進し途上国は一方的に市場開放を迫られている」として、「WTOの自由貿易の理念は、もはや食料を独占しようとする多国籍企業を保護するものにすぎない」と厳しく批判しました。
途上国の農業守ることに触れないモダリティ案続いて連帯のあいさつをしたのは韓国全農の姜炳基(カン・ビョンギ)さん。 姜さんは、昨年十一月にソウルで開かれた「米輸入開放阻止」の集会に十万の農民と三万の労働者が結集したことを紹介し、「米は韓国民の魂。この大集会を契機にさらに大きなたたかいを準備している。ともにWTOとたたかっていこう」と呼びかけました。 また、十二の国に組織をもつNGO「Oxfam(オックスファム)」のリアン・フォッカーさんは、「先進国がダンピング輸出をやめることや途上国が自らの農業を守ることについては何も触れていない」と、モダリティ案を批判しました。 シンポジウムではさらに、WTO加盟国の多数を占める途上国を排除し、一部の先進国だけで交渉を進めようという非公式閣僚会議の開催をやめ、交渉の透明性を求める要請文を確認。翌日、閣僚会議が開かれている帝国ホテルを訪れて外務省に手渡しました。 新潟から参加した今井健さんは「いてもたってもいられなくて来た。韓国の農民のとりくみに励まされ、決意を新たにした」と語っていました。
(新聞「農民」2003.3.3付)
|
[2003年3月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2003, 農民運動全国連合会