農民連第十五回定期大会決議(案)
II 農民連のたたかいと国民との共同によって切り開いた成果――一年を振り返って
1、真の「米改革」を実現する農民連の提案に広がる共感農民連は、外米の削減・廃止や、暴落した米価の回復なしに稲作の再生はないと主張し、真の米改革の方向を提案してたたかってきました。 新聞「農民」号外は百万枚規模となり、農民連・食健連が提出した請願採択は、秋田県、鳥取県では自治体の七割を超え、新潟県でも過半数に迫るなど、各地で広がっています。自治体首長や農協との対話でも、岩手県では六割の首長が農民連・食健連の提案に賛同しています。東北では単位農協や県中央会が千人規模の集会を相次いで開き、政府に対する激しい怒りをあらわにし、全国農業会議所が株式会社の農地所有を推進する「特区」や農地法の改悪に「重大な懸念」を表明するなどの動きも広がっています。 まさに「米改革」を許さないたたかいをリードしているのは農民連であり、米・農業つぶしを許さないたたかいは農民連の奮闘と国民世論によって決まるというのが今日の情勢です。
2、BSEのたたかい二〇〇一年九月に日本ではじめて発症したBSEは、国民に衝撃をあたえ、畜産農民の経営破壊、焼肉・飲食店など関連業界にも打撃をもたらしました。 農民連は、政府の失政の追及と損害補償要求に全力をあげてきました。他の農業・農民団体が「嵐が通り過ぎるのを待つしかない」という対応をしたなかで、農民連の運動は、多くの畜産農民や国民の共感を呼び、BSEマル緊など一定の救済措置を勝ち取るとともに「BSE特別措置法」を制定させる大きな力になりました。農民連が取り組まなければこうした成果は実現できなかったでしょう。まさに「農民の苦悩あるところ農民連あり」の真骨頂でした。
3、食の安全を求める国民世論と結んだ農産物輸入とのたたかい国民の食の安全に対する不安がかつてなく高まったなかで、「国民の分析機関」として活動してきた「食品分析センター」が威力を発揮したことは特筆すべき成果でした。 中国産冷凍ホウレン草から基準値を超える農薬を検出し、これが国民の命や健康を守る責任を放棄してきた政府への怒りの世論となって広がり、ノーチェックだった冷凍野菜など一次加工品の検査を実現し、「食品衛生法改正」に結びつきました。 農民連の奮闘は、国民が輸入農産物を敬遠する状況を作り、国内産の安心できる農産物を求める世論を大きく広げています。開発輸入によって中国の農民を収奪し、日本農業を犠牲にしてきた大企業・商社への国民の批判も広がっています。
4、「もの作り」、流通との提携、多面的な産直の取り組み生産から撤退すれば農産物の輸入がますます増える、国民の期待にこたえてものを作ってこそ、農民が誇りを取り戻し、輸入農産物に打ち勝てる――農民連は、こうした立場から生産の維持・発展と、中小流通業者との提携など、多様なルート作りに全力をあげてきました。 生協の空店舗を「ファーマーズ生鮮市」にして成果をあげている東海ネットの取り組み、紀ノ川農協の直売所「ふうの丘」、関東ネットワークが都内に開設した「アンテナショップ」、それぞれの特徴をいかした朝市や直売所、地元スーパーと提携した「インショップ」など、多様な取り組みが広がっています。 多くの農民が失望しているなかで、農民連のよびかけと多様な実践は、ものを作る農民としての意欲を取り戻し、広く国民と手を結び、安全で本物の農産物を生産すれば展望が開けるという確信をもたらしています。 米の準産直が、東京に続いて大阪、愛知でも取り組まれ、他の地域でも挑戦が始まっています。七月に北海道・東北、関東、北陸ネットが東京で米屋さんとの「大交流会」を成功させ、秋の米屋さんの店頭でのイベントが東京に続いて大阪でも開かれ、「共倒れから、両者の利益を守るための提携」への合意を広げています。
5、税金をめぐる運動農民に増税を押しつけるテコとして、「農業所得標準」による申告から「収支計算」への移行が進むなかで、農民連の税金運動方針の優位性が浮き彫りになり、まさに出番となっています。 確定申告の運動を増税から暮らしと経営、納税者の権利を守る運動として、学習を強め、出足早く、全農民対象に取り組んだ組織では、例年以上に取り組みや会員拡大を前進させています。また、税金要求だけでなく、もの作りや多様な産直などの要求を結びつけて農民に働きかけたことによる前進も教訓です。 固定資産税を軽減させる運動が、この数年来の奮闘で一部の地域から全国的な運動へと広がり、農業用施設用地を農地として評価させたり、造成費を引き下げさせるなど成果をあげていることは重要な前進です。
6、組織と新聞「農民」三つの地域センターに事務所と専従を配置し、県内のすべての農民を視野に入れて税金やもの作り、産直などの要求で会員拡大を前進させている奈良県の経験は、全国が学ぶべき教訓です。 県連役員が団結し、税金や減免軽油、BSEのたたかいなど、要求運動を果敢に広げ、組織を前進させている鹿児島県連などの経験も、会員現勢の小さい組織から脱皮する取り組みとして全国を激励しています。 この間の会員拡大の特徴は、税金要求によるもの、「米改革」などの農業破壊への怒りと不安から「販売ルート」を求めて大規模経営農民が加入していること、大豆などの加工や直売所など、多様な要求を通して加入が広がっていることです。多様な生産グループなどの団体加入も進んでいます。 財政問題の解決と紙面の充実をはかるために、新聞「農民」の購読料を〇二年の三月から値上げする措置をとり、会員や読者に協力を呼びかけてきました。紙面改善は全国から共感され「食と農を守る共同の新聞」としての存在感を高めていますが、前大会でよびかけた「一日も早い五万部の峰へ」の取り組みは、現部数の維持にとどまり、目標にふさわしい取り組みになっていません。 前大会で議論した財政問題の打開は、新聞「農民」の購読料の改定、節約による支出削減などの改善に努力し、解決に向けた前進方向を切り開いています。全国の奮闘と団結に深く感謝します。
(新聞「農民」2002.12.9付)
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[2002年12月]
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