「農民」記事データベース20010917-508-09

全国研究・交流集会への報告(3/4)

農民連事務局長 笹渡 義夫

関連/
I 全国研究・交流集会の目的
II 選挙結果をどうみるか
III 農業・食糧をめぐる 情勢について
IV この間のたたかいの教訓
V 第14回定期大会を展望した当面の活動
VI 今がチャンス、大きな大志をもって新聞「農民」と会員拡大に全力をあげよう
VII むすびに


V 第14回定期大会を展望した当面の活動

 1、たたかいの重点課題

  (1)畦道の要求を世界に働きかける秋のたたかいに全力を
   イ、十一月の「WTO閣僚会議」にむけたWTO改定を求めるたたかい
 十一月にカタールで開かれる「WTO閣僚会議」は、WTO協定の改定を求めるたたかいの当面の焦点です。

 また、その前段にローマで開催されるNGO主催の「食糧サミット」も閣僚会議に直結する重要な会議です。この国際会議に代表を派遣するとともに、食健連がよびかける「2001グリーン・ウエーブ」(10月〜12月)と連動させ、「輸入しながら減反・青刈りは許せない」「米価の下支えや価格保障を実現せよ」「自給率の向上を」など、地域の具体的な要求で日本政府が改定を主張することを要求してたたかいましょう。

 地域での学習会やシンポジウムなど、草の根の世論を盛り上げましょう。二つの国際会議に代表を派遣するための「募金」に取り組みましょう。

 九月十五日〜十六日に開催(早稲田大学・国際会議場)される「非同盟運動シンポ」を成功させましょう。

   ロ、三品目のセーフガードの本発動と、他の品目の発動を求めるたたかい
 秋のたたかいの焦点のひとつは、セーフガードの発動を要求するたたかいです。

 三品目の暫定セーフガードは、十一月八日で二百日の期間を終了します。ネギにしろ椎茸にしろ、期限切れ後が輸入のピークとなることから、関係農民や単協、自治体など、本発動への要求は切実です。

 三品目以外の農産物のセーフガードの発動を求めるたたかいを広げましょう。

 この間のたたかいによって、輸入で被害を受けている生産者団体が政府にセーフガードの「調査開始」を申請することが可能になりました。これを生かして作物ごとに「協議会」や「部会」をつくり、世論と運動を広げましょう。

   ハ、ミニマムアクセス米の削減・廃止、値幅制限の復活、減反・青刈りやめろのたたかい
 歯止めのない米価暴落の原因が外米にあることや、減反を拡大しても米価が回復しないことは農民のなかで常識となっています。

 「輸入しながら減反・青刈りは許せない」「外米を減らせ」「自主流通米の値幅制限の復活を」の世論と共同を広げましょう。

 農協中央が、政府になりかわって減反を推進し、農民への締めつけを従来よりさらにエスカレートさせているため、現場での混乱や矛盾が激しくなっています。単協に足を運んで率直に問題提起しながら、外米の削減・廃止やWTOの改定、実効ある暴落対策を要求する共同を広げる努力を強めましょう。

 しがらみや販路がない場合は、減反に協力せざるを得ないのが農民の現実です。農民連と一緒に米産直に取り組むことは、農家にとって大きな展望です。また、転作を話し合ったり、加工して販売するなど、あきらめずに作ってもらいましょう。

   ニ、価格保障と農産物価格の実現、負債対策など
 対政府要求と、地方での制度化を結んでたたかいましょう。畑作価格、畜産・酪農、米価を実現するため、共同を広げ、再生産を保障する価格を要求してたたかいましょう。

 JAの「不良債権処理」が実施されているなか、農家の負債対策は緊急課題です。「離農勧告」を許さず、政府の責任による対策を要求してたたかいましょう。

  (2)「食健連・2001グリーン・ウエーブ」の取り組みと地域食健連の活動
 今年のグリーンウエーブは、「WTO閣僚会議」を目前にしたなかでの、国民の食料と健康を守るたたかいです。すべての都道府県で計画を具体化し、参加団体との話し合いや合意を大切にし、学習やビデオ上映会、宣伝行動、収穫祭など要求をもとに創意ある行動を展開しましょう。

 小泉首相にむけた「国民署名」をすすめましょう。農民連の単組に対応した「地域食健連づくり」を広げましょう。

  (3)大企業の横暴や小泉「改革」とたたかう国民的な共同を
   イ、小泉「改革」とたたかう地方、中央での共同を
 「不良債権処理」による倒産や失業、景気のいっそうの悪化、福祉の大改悪、消費税増税などに対し、地域での共同を広げ反撃しましょう。「10・23国民大集会」や「10・24中央総行動」(省庁交渉)を秋のたたかいの節目として成功させましょう。

   ロ、「地域づくり」の視点をもった共同を
 地域農業の衰退、地場産業の破壊、中小企業の倒産や失業問題、ライフエリアの破壊を許さない町ぐるみ、地域ぐるみの共同を広げましょう。

 2、大いにものを作り、視野を広げた共同・連帯、多様な産直を

  (1)輸入農産物に打ち勝つための国民との連帯を
 輸入が増えても、消費者が「食べない」という状況になるなら、大企業や商社にとって、これほど手ごわいことはありません。また、政府が家族経営農業つぶしを進めても、助け合って家族経営を維持するなら、これも政府にとって手ごわいものとなります。

 私たちの国民との連帯や、消費者との交流は、単にものが売れればいいということにとどまらず、人間と人間の信頼関係に根ざしたものであり、この視点を堅持することなくして運動は前進しません。

 市場などに出荷しても出しっぱなしになっていないか、流通関係者や消費者の期待に応えているか、物を動かすことに目を奪われて農家の目線を忘れていないか、産直の代表者がひとりで請け負って「売ってやる」という対応になっていないか、生産する農家の側も交流することを面倒だと思っていないか――ルートを広げる条件が広がっているだけに、その可能性を汲みつくすために、原点にかえって議論しましょう。

  (2)輸入攻勢や資本の買いたたきとたたかう国民との連帯を
   イ、流通関係との提携は決定的
 市場の形骸化で卸、仲卸の経営が深刻化し、小売の倒産・廃業がさらに進んでいます。米も、八つの大手米卸が事業提携を開始し、外米を目玉に大手量販へ売り込みを競い合い、米屋さんへの供給の中止が相次いでいます。こうした輸入や大企業の横暴による市場機能の破壊、米卸の再編や小売りへのしわ寄せは、ライフエリアを破壊し、生産者にとっては“買いたたきの構造”だけが残る許しがたいものです。

 市場や米卸、八百屋や米屋とルートを広げ、消費者との提携を作る活動は、組織をあげて取り組む課題です。県ネット、全国ネットの機能を強め、市場を通した小売り、消費者との提携を計画的に進めましょう。出荷するだけにせず、ライフエリアを守る視点を貫き小売との交流を進めましょう。米卸とほくほくネットとの提携が、関東や北信越ネットにも広がり、量的にも前進しています。全国やブロック、県ネットを生かし、近畿をはじめ、各ブロックに拠点となる米卸との提携を広げましょう。

   ロ、朝市・直売所づくりを全国共通のとりくみに広げよう
 「一支部一直売所」を合言葉に、直売所や朝市を開設し、農民の組織と生産を広げる契機にし、市場との提携や多様な産直に発展させましょう。直売所・朝市の横の連携を強め、市場出荷や産直に発展させましょう。

   ハ、新婦人産直の発展、生協、学校給食など多様な産直を広げましょう
  (3)輸入農産物とのたたかいは、ものを作ることなしに前進しない
 私たちが生産から撤退すればするほど、輸入農産物が押し寄せることになり、私たちが生産を広げることは輸入農産物とのたたかいそのものです。

 減反・青刈りへの対応で転作を話し合ったり、高齢化などで農作業が困難な人を助け合ったり、耕作放棄された農地を組織で借り上げて共同で耕作するなど、あらゆる知恵や力をしぼって生産を広げましょう。少しでもいいものを、一粒でも余計に穫る心意気で、もの作りに全力をあげましょう。

  (4)地域農業をどう守るか、生産と農地を守る農家の目線で
 せっかく、販路を切り開いても、ものが足りず期待に応えられないという状況があります。期待に応えられない状況を解決するために組織をあげてもの作りに全力をあげましょう。

   イ、地域の全農家を視野に入れた大きな立場で
 価格暴落は、地域の全農家に打撃をあたえ、特に、規模拡大した農家ほど深刻です。各種出荷組織や生産グループなども困難に直面しています。地域農業の現実に心を痛め、農協や農業委員会、自治体が農業振興に果敢に挑戦している事例は数多くあります。

 今、農民連が組織の枠組みだけからみるのではなく、地域全体を視野にいれ、農業の現状と未来に心を痛めている人たちと共同するなど、地域の全農民に働きかける構えなしに生産を広げることはできません。

   ロ、農家の目線に立って、具体的な対応を
 「もう転作はコリゴリ」という人や「作っても価格が安いから」とあきらめている農家に、一般的にもの作りを呼びかけてもなかなか、その気になってもらえない場合が多くあります。

 直売所や市場への出荷、多様な産直の具体的なイメージを膨らませ、農家が“希望や意欲”をもてるよう働きかけましょう。実践し、成果を見せながら呼びかけることも大切です。全国で進められている「田わまり会」なども仲間を激励し、生産技術を向上させるうえで大切な活動です。全国でリレー出荷を広げた「スーパースイートきぼう」の経験を生かし、“リレー出荷第二段”を話し合いましょう。

   ハ、女性や高齢者の力を引き出すもの作りを
 女性の力に依拠することなくして生産を広げることはできません。特に直売所等は、きめこまやかで“商品開発の博士”である女性が中心に座るかどうかがカギです。女性会員を拡大し、もの作りの先頭に立ってもらいましょう。

 共販から締め出され、「できる分だけ作っている」という高齢者は地域に大勢おり、少しでも収入の道をという思いも強くしています。高齢者なくして技術の継承は出来ず、地域の生産を維持・拡大するために欠かせない存在です。この方たちに「売れる道」を示し、助け合ってもの作りへの参加を呼びかけましょう。

 3、税金など多様な要求運動とたたかい

  (1)学習と記帳簿を軸にした税金要求実現の運動
 農家の税金要求はますます高まっています。

 税金の取り組みは(イ)いかに早くから通年的に取り組むかであり、中心は記帳簿の普及であり、税金に強い相談員を養成すること、(ロ)農家全体を視野に入れた宣伝・対話、「相談会」を無数に開くことです。税金を重点課題として位置づけ、すべての都道府県連が税金に取り組みましょう。消費税増税阻止、三%への減税を要求するたたかいに全力をあげましょう。

  (2)相続税納税猶予制度廃止を阻止、固定資産税を軽減させるたたかい
 相続税納税猶予制度を廃止するねらいが強まっています。これを許すなら、都市農業が壊滅させられ、その影響は全国に及びます。農業委員会との共同を重視し、阻止するために全力をあげましょう。

 農業用施設用地の農地なみ課税、市街化区域農地の生産緑地の指定拡大、小作料を上回る固定資産税の減免など、固定資産税軽減の運動をすすめましょう。

  (3)線下補償、減免軽油の申請など、多様な要求運動を前進させましょう。
 電力会社の補償単価引き下げを跳ね返すたたかいに全力をあげましょう。また、送電線への「光ファイバー」併設は「送電事業」とは異なる「通信事業」であり、地権者が補償を要求することは当然の権利です。「一時払い」で打ち切られた地権者を含めて補償を要求するたたかいを全国で展開しましょう。

 4、兼業農民のリストラ・解雇を許さないたたかい

 「不良債権処理」などによる中小企業の倒産や兼業農民のリストラ・解雇問題が多発しています。泣き寝入りせず、地域労連などと相談して対応し、たたかいをすすめましょう。

(新聞「農民」2001.9.17付)
ライン

<<BACK][2001年9月][NEXT>>

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2001, 農民運動全国連合会