全国研究・交流集会への報告(1/4)農民連事務局長 笹渡 義夫I 全国研究・交流集会の目的/ II 選挙結果をどうみるか/ III 農業・食糧をめぐる 情勢について/ IV この間のたたかいの教訓/ V 第14回定期大会を展望した当面の活動/ VI 今がチャンス、大きな大志をもって新聞「農民」と会員拡大に全力をあげよう/ VII むすびに
I 全国研究・交流集会の目的1、参院選の情勢や新たな段階を迎えている開発輸入、WTO交渉の本格化などのもとで、国民と連帯して農民経営と日本農業を再生する農民運動の発展方向を研究・交流すること。2、もの作りや流通業者と提携、税金などの運動を交流し、支部・班を中心に運動を前進させる研究・交流を行うこと。 3、第十三回大会後の運動の到達点をふまえ、第十四回定期大会の成功にむけて特に新聞「農民」と会員拡大を飛躍させる決起の場とすること。
II 選挙結果をどうみるか1、「小泉旋風」は、自民党の政治的危機の深まりの中での、後のない延命作戦小泉政治に国民の期待が集まったのは、自民党政治の危機が進行するなか、小泉首相が「日本を変える」「自民党を変える」と言わざるを得ない事態に追い込まれ、悪政に苦しむ国民に「現状を変えてくれるのでは」という期待感が広がったことです。しかし、選挙で前進したとはいえ、自民党の政治的危機は解消されず、マスコミを総動員してつくった「小泉旋風」によって延命をはかったにすぎません。 危機を深める自民党は、比例選挙に自民党に有利な「非拘束名簿式」を導入し、団体に自民党候補を丸抱えさせて競わせました。しかし、かつて百万票以上得票してきた農政協や全国土地改良政治連盟などが数万票から数十万票にとどまり、他の業界政治団体の傾向も同様です。これは、自民党と国民との抜き差しならない矛盾の反映であり、従来の利益誘導と締めつけによる集票と政治支配ができなくなっている現れです。選挙の直前に、土地改良区が自民党費の立て替えや土改連の会費を肩代わりしていた実態が明らかとなり、全国でたたかいを展開しました。自民党が農業の公共事業による利益誘導をテコに土地改良区を支配してきた癒着の実態ですが、自民党自身の農業破壊政治で墓穴をほり、従来の政治支配ができなくなっていることは重要な変化です。
2、農民連はどう選挙をたたかったか四月から六月まで「総対話運動」に取り組み、その成果を生かして参議院選挙をたたかいました。選挙では、「暫定セーフガードを勝ち取った力を生かして、農業、農山村の復権を」「自民党農政を根っこから変えよう」をスローガンに、四つの要求(セーフガードの本発動、外米の削減・廃止、価格保障、WTO協定の改定)と、小泉「改革」が農業や農民にもたらす影響を告発し、百二十万枚の新聞「農民」大判号外の配付や農民との対話に全力をあげました。対話を通して、農民から吹き出した声は、輸入の急増による価格暴落への怒りや不安であり、「このままでは農業は続けられない」という悲痛なものでした。そして、小泉内閣に期待している農民を含めてセーフガードの発動や外米の輸入をやめてほしい、価格保障を実現してほしいなどの切実な要求が出され、農民連の政策的な提起への共感が広がりました。
3、小泉「改革」と国民との劇的な矛盾の広がり(1)国民に耐えがたい痛みを押しつける小泉「改革」と「不良債権処理」「非効率部門を切り捨てる」という小泉「改革」は、中小企業だけでなく農業もその対象とされています。「改革」の中心である「不良債権処理」は、二十万とも三十万ともいわれる中小企業を国策で倒産に追い込み、新たに百万人以上の失業者を生み出すといわれます。農業では、兼業農民が「農地がある」という理由で真っ先にリストラされる事例が相次いでいますが、農外収入をつぎ込んで農地を守り、経営を維持している九割を超える兼業農民の就労先が奪われることは、日本農業を土台から破壊するものとして重大です。 小泉「改革」が「自立・自助」と称して押しつけようとしている医療改悪や消費税大増税をはじめ、あらゆる増税のねらいも重大です。小泉政治がすすめようとしている「改革」は、国の経済と財政を破綻させ、国民のくらしと経営を取り返しのつかない事態に追い込むものです。
(2)JAの不良債権処理と農民への打撃JAは、四月に「整理回収機構」と不良債権回収業務の協定を結び、八月からは「系統債権管理回収機構」(サービサー)と不良債権回収業務の協定を結んで農民の負債整理を開始しました。農産物の輸入を自由化して価格を暴落させ、農民に規模拡大を押しつけてきた結果が、今日の農家負債の最大の原因です。この責任を棚上げして、第三者機関を動員して強権的に経営破綻に追い込むことは断じて容認できません。
(3)小泉政治の破綻は避けがたいすでに小泉政治の破綻は始まっています。深刻な不況のもとでの「不良債権処理」の強行に、一度は小泉内閣を支持した人も含めて不安や批判が急速に広がっています。外交でも、アメリカ・ブッシュ政権が地球温暖化防止の京都議定書からの一方的な離脱、「ミサイル防衛」構想の推進など、国際ルールを無視する姿勢をむき出しにしています。これに小泉内閣は、あらゆる問題で対米追随の態度を取りつづけ、国際的に孤立を深めています。 一方、靖国神社への公式参拝や歴史をゆがめる教科書問題で、侵略戦争への無反省の態度をむき出しにし、中国や韓国などアジア諸国との友好の道を閉ざす危険な態度を取りつづけています。 こうした国民に耐えがたい痛みを押しつけ、世界の流れに逆行する政治は、農業や経済でも、破綻に直面している財政でも、今日の危機的現状を打開することはできず、国民との新たな矛盾を深め、国民のたたかいによって破綻せざるをえません。 多様な要求で多数の農民に働きかけ、共感される量・質ともに強大な農民連をつくり、また、視野を広げて広範な国民との合意・連帯を広げるために全力をあげましょう。
4、広がるたたかいの新たな条件小泉政治は、国民の全階層に重大な「痛み」を押しつけ、その矛盾の深さは従来の延長にとどまりません。しかも、彼らが支持基盤としてきた勢力にも容赦なく向けられます。私たちのたたかいで広範な国民的共同によって自民党政治を包囲する新しい条件がつくり出されています。多様な要求で農民に働きかけ、量・質ともに強大な農民連をつくり、また、視野を広げて広範な国民との連帯を広げるために全力をあげましょう。
(新聞「農民」2001.9.17付)
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