研究交流集会での特別報告 (2)米卸の提起「準産直米」生産者と米屋をつなぐ東北・北海道産直ネット 森谷 精新潟で '2000全国研究交流集会/ あいさつをかねた報告/ 研究交流集会での特別報告 (1)/ 研究交流集会での特別報告 (3)/ 研究交流集会こぼれ話
東北・北海道産直ネットワーク、通称「ほくほくネット」は、「流通の変化に対応した多様な探究を」の全国連の提起を受けて、一昨年の二月から準備を始めました。 きっかけは、食健連運動のなかで全国連事務局と米卸業者のZ会社の労組が結びついたことです。このZ米卸が提起した「準産直米」は、米屋と生産者をつないで、顔の見える米を消費者に提供するという方式です。産直運動に取り組んできた我々にとっても受け入れやすい方式でした。
農民連なら安心と高い評価を受け米卸の側では、モラルもルールもない価格競争、加えて新食糧法による米屋の新規参入、「提携・吸収」など業界再編が進んでいます。「本物」や「安全」を求める消費者の目も厳しいなかで、「街の米屋が繁盛してこそ、米卸も生きられる」との立場から、通常の利幅は取れなくても産地と小売店のパイプ役を果たすことによって、みんなが元気になるのではという思いがあったと思います。一方お米屋さんの側ですが、「西東京米研」というグループがあります。この「米研」傘下のお米屋さんは、これまでも卸のいいなりでない、店のオリジナルを全面に押し出し、消費者の信頼をかちとってきました。しかし、価格面でスーパーの攻勢が続くなど、年々苦しい環境にあり、農民連という全国組織との連携、そして間に卸が入る安心感などで「準産直米」を受け入れる要素があったのではないかと思います。 私たちは、Z米卸にも、西東京米研にもそれこそ束になって足を運び、会合も重ね、昨年九月五日に「ほくほくネット」を結成しました。 九九年産の取り扱い実績数量は目標の一万五千俵を大きく上回り、二万俵を超えています。この中には銘柄米の他にも二類、三類の米も扱って一定の評価を受けたことで、会員拡大に結びついている組織もあります。昨年産は高温障害やカメムシ被害が相当ありましたが、いいものを必死になって出荷したことが高い評価を受け、後半は「農民連なら安心」とサンプルを示す必要もないほどでした。
米屋の店頭でのイベントが好評取り組みで重視した一つに交流事業があります。私たちは「秋にはイベントをやりましょう」と申し入れていました。今回は開催店を一つにしぼり、同時に他の米研各店にはセール協賛としてナガイモ、ダイコン、アンポ柿などの農産物を一店あたり五千円分提供するなどをしました。ところが開催店がなかなか決まりませんでした。聞けば、これまでも店頭販売で、自分のお客さんが農家に取られてしまったという苦い経験があったとのことです。この不安は、お米屋さんの中に多かれ少なかれ染みついていることがわかり、Z米卸を仲立ちにして、「お客さんとの直接取引は行わない」「小売店も卸を抜きにした農民連産地との直接取引は行わない」などの申し合わせを確認しました。結局、米研の幹事長さんの東大和市のお店で、十一月二十七日にイベントを開催できました。お店ではチラシを二回折り込み、「つきたてお餅券」と空くじなしの抽選券を配付し、ほくほくネットからは抽選の景品のラフランス、りんごなどの農産物や沖獲りの荒巻鮭などを提供。さらに山形・庄内の餅つき、福島・会津のそば打ち実演を織りまぜ、威勢のいい餅つきの音と、お餅券、抽選券が功を奏して、人垣ができました。気の早いお客さんは今年はいつやるのかと問い合わせてきているそうです。 「ようす見」をしていた米研会員からも「ぜひうちでもやってくれ」と申し込みが相次ぎ、私たちの知らない間に今年は三つのお店でやることがすでに“決定”しているそうです。 この取り組みは、私たちにとっても卸・小売にとっても画期をなすものとなりました。今年六月には幕張メッセで開かれた「米研全国大会」にも招待され、各地の米研会員さんと交流することができました。
米卸、米屋と意見交換会を出荷した農民側にとっては、すべてが万々歳というわけではありません。こだわり栽培が必ずしも価格面に反映されていないことや、地元業者との価格差、さらに農協出荷との価格差がどうしても前面に出てきます。実際、七道県すべての銘柄米で農協出荷より下回ったという結果が出ました。今年の取り組みを進めるうえでも、価格問題は大きな関門になっています。 そこで、これまでのやり方を少しでも変えようと、小売店との意見交換会を、八月二十日にZ米卸主催で企画してもらいました。意外にも小売店が四十一店も集まり、Z米卸、ほくほくネット含めて総勢八十一人という大交流会になりました。「安くていい米を今年も頼むよ」という声ももちろんありましたが、スーパー・量販店の安売り攻勢に厳然と立ち向かい、「米屋で買った米は違うということを必死にお客さんに発信しつづける。お客さんにも育ってもらいたいし、店も育ててもらいたい」という米屋さんの発言もありました。ほかにもさまざまな要求や、今後の活動への激励もいただき、貴重な経験になりました。
価格問題を解くカギは運動で肝心の価格問題でのつっこんだ交流にはなりませんでしたが、価格問題は、生産者・卸・小売という流通の一つのコップを、どうかき回してみても、根本的な解決にはならないと思います。自主流通米市場の値幅制限を撤廃してしまった政治、減反の押しつけ、WTO協定の改定などの問題から目をそらすわけにはいきません。要は、これらの問題を我々農民も本気でやらなければなりませんが、ほくほくネットで結びついた卸や小売店、消費者の皆さんとどんな運動を提起できるか、ここがカギだと思います。この秋には西東京米研以外に、大田区の米穀商業組合のイベントが控えています。常日頃は“ライバル”同士の米屋さんが一緒に取り組み、昨年とはまた違う展開になると思います。 今年は、扱い数量も昨年の倍以上の五万俵を目標に取り組むことにしており、関東・北信越ブロックも新たにZ米卸との取り組みが始まります。連携して農民連の風を大いに吹かせたいと思います。
(新聞「農民」2000.9.11付)
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[2000年9月]
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