「農民」記事データベース20000911-462-07

研究交流集会での特別報告 (1)

「みかん産地を守る」その一致点で共同実現

愛媛県連 大野政信

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 今年は野菜が大暴落し大変だと小林さんの報告にもありましたが、九九年産のみかんもとても大変でした。「このままではみかん作りをやめてしまう」「産地が崩壊する」というみかん価格の暴落でした。

 農家手取りは再生産価格の三分の一以下で、一キロ三十円〜五十円、島嶼部では十円以下という所もありました。そのために廃棄処分したり、収穫せずに山に放置したりという深刻な事態が各地に見られました。

 愛媛農民連は「このまま放置できない。なんとかしよう」と二月下旬に常任執行委員会で「WTOに関する国際シンポジウム」の地域版として実践をしようと、みかんシンポジウムを四月九日に開くことを決めました。準備期間は一カ月余でしたが、二百三十人の参加で大成功し、みかんを守ろうという幅広い共同が実現し、そのシンポでの要求をもとに農水大臣との交渉をしようということになり春名衆院議員の紹介で五月十七日に行いました。

 これらの行動を通して、みかん危機の背景には、農産物の輸入自由化の影響があることがわかりました。グレープフルーツ、オレンジ、バナナなどの生鮮果実が年間百六十万〜百七十万トンも輸入され、国内の消費量と同じくらいの量です。それに加えてオレンジ、リンゴなどのジュース類が年間に百二十五万トンという膨大な量が入っています。その元を断つということで大臣交渉をしたのです。

 交渉では大事な成果をいくつか勝ち取りました。一つは、みかん等改植補助事業の継続を前向きに検討するということ。もう一つは、中山間地の条件不利地への直接支払いの条件緩和です。さらに学校給食へのジュース供給拡大の要求については、九千万円を予算化させたこと。交渉では県農協中央会や県信連、みかん産地に関わりの深い農協、農業委員会、自治体首長、県生協連など四十団体の賛同署名も手渡しました。

 交渉後、すぐに四十団体やシンポを開いた地元に大臣交渉の報告を行うとともに、県議会での決議をしてもらおうとオルグにまわりました。同時に「みかん産地を守る要請」の署名運動にも取り組みました。今までと比べると反応がまったく違っていました。みかん署名では第一次分として七千三百九十五人を集め、七月十三日に矢野副知事へ提出しました。この要請には、自民党県連の森高政調会長と共産党の佐々木県議も同行しました。翌日の七月十四日には、県議会で二十回目の「新たな果樹農業政策確立に関する要望意見書」が全会一致で可決されました。これは農民連県連などが要望していたものです。

 産地を守るためにも市場出荷にも取り組もうと、七月十七日には「第六回愛媛産直学校」を開きました。

 こうした一連の取り組みが成功した要因は、(1)県連が農民の苦悩・要望を真正面から取り上げ、結果を恐れずに全力で活動したこと、(2)輸入自由化のたたかいのスタートとなった一九六九年の「西日本みかん農民大集会」など、たたかいの伝統、蓄積があり、経験ある幹部による運動の積み重ねがあったこと、(3)党派を越え、「みかん産地を守る」という一致点で幅広い層の協力・共同の関係が築けたことです。

 成果は、農民連の存在とその果たす役割を地域に認識させ、認められたこと、また、柑橘の価格低迷の主な原因は、外国産の輸入増大にあるという認識が一定程度に定着してきた、さらに農民組合員が胸を張れるようになり、現在の農政への怒りが出てきたことです。国や県が一定の「みかん危機」の認識を深め、県は県議会の決議を踏まえて何らかの対策を打ち出さざるを得なくなっています。

 今後の課題は次の通りです。

 (1)セーフガードの発動、WTO協定の抜本的改定の要求をどう世論化していくのか、外国からの輸入自由化はやむを得ないとの考えをどう変えていくかです。

 (2)愛媛県はみかんが重要な地域産業となっており、これをどう守っていくのか、自治体や農協など、党派や考え方の違いを越えて引き続き大きな運動にしていく必要があります。とりわけ南予用水事業での農家負担を軽減させることが緊急になっており、行政の援助・支援が不可欠になっています。

 (3)愛媛農民連の主体的な力量をつけることは、これからの運動を進めるうえで、どうしても必要です。そのためにも組合員を増やし、組織の拡大・強化が求められています。

(新聞「農民」2000.9.11付)
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2000年9月

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