「農民」記事データベース20231211-1581-11

地産地消とアグロエコロジーで
学校給食を地域再生の力に
(3/3)

安全・安心な給食を子どもたちに

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給食無償化運動のバージョンアップを

有機農産物を学校給食に

寄稿
島根大学法文学部
教授 関 耕平さん

 給食費無償化を求める運動が、かつてないほどの盛り上がりを見せ、全国各地に広がっています。こうした取り組みを、地元の農家・農業を守り、地域を再生していくための運動へとバージョンアップしていくことが必要です。

 具体的には、給食で使う食材を同じ地域内から調達し、地場産化すること、さらに最終的な目標として、安心・安全にこだわった地元の有機農産物を、給食の食材としてしっかりと買い支えていく自治体の政策へと高めていくことが求められているのです。こうした給食費無償化運動のバージョンアップがなぜ求められているのか、考えてみましょう。

 地球環境保全や気候危機克服も

 私たちが普段何気なく食べているアボカドは、メキシコなどの南米で膨大な水を浪費し、環境破壊をしながらつくられています。さらに膨大な燃料・エネルギーを浪費して日本へと運ばれて消費されています。このことから考えても、最低でも国産、できれば地場産の食材にこだわって食料自給率を高めていくことは、地球環境保全や気候危機克服の観点から大きな意味を持ちます。

 また、海外の農産物を買い続けることは、私たちの貴重なお金がその代金として国外へ流出し、世界的なアグリビジネスをもうけさせることを意味します。給食食材の調達先を地元産に切り替えることは、資金を地域へと還流させ農家を支えるとともに、こうした資金が地域内をめぐることで地域経済全体の再生へとつながるのです。

 そして何よりも、子どもたちにどんなものを食べさせたいか、という視点で考えれば、地元の安心・安全な有機農産物を給食で使ってほしいというのは当然の要求でしょう。

地域の農産物を給食食材として買い支え、
地域農業守る自治体の政策に

 顔の見える関係で真の「食育」を

 一方で、実際に地域内で有機農産物を調達しようとすると、有機に取り組む農家が少ない、十分な量を確保できない、という声をよく聞きます。この点を克服するためには、子どもたち、PTA・保護者、学校給食に携わる栄養士・調理師など専門職が一緒になって、地元の農家と対話・交流し、より安全で安心な農産物づくりを、ともに進めていく運動が必要です。

 つまり有機JAS認定の農家を探して給食食材を調達しようとするのではなく、子どもたちとともに現場に出かけ、地元の農業の現場をしっかり理解し、顔の見える関係を築く中で、農家と一緒になって安心・安全な農産物づくりを追求すること、ともに有機農業を育てていくことが求められているのです。これこそが本当の意味で「食育」ではないでしょうか。

 農薬や化学肥料をできるだけ減らしながら、安心・安全な農産物づくりをすすめるには手間もコストもかかります。それを給食食材としてしっかりと買い支えていく、こうした施策を自治体に求めていくことこそが、給食費無償化運動のバージョンアップとして求められています。

 地元農家を支えて地域を豊かに

 「有機農産物を学校給食に」という運動は、地元農家を支えることで地域経済全体を豊かにしていくだけでなく、子どもたちの食の安全・安心の確保、農薬や化学肥料の使用を控えることで地域の環境や生態系が守られること、環境破壊を引き起こす農産物貿易の抑制など、多くの意義を持ちます。「有機農産物を学校給食に」を合言葉に、全国の地方自治体の政策を変えていきましょう。


子どもたちのために安全・安心な給食を!
無償化をすすめよう!
学校給食について考えるオンラインシンポジウム
日時 12月16日(土)午後4時〜6時
プログラム
(1)講演 「私たちがめざす学校給食無償化」
 学校給食費の無料化をめざす会代表世話人・石田清人さん
(2)リレートーク
 ●無償化のとりくみ 新婦人・池田亮子さん、●無償化のとりくみ 全教事務職員部・奥村久美子さん、●給食民間委託化に対するとりくみ 自治労連・平野あゆみさん、●給食民間委託化に対するとりくみ 全教現業職員部・永西英俊さん、●食教育・自校給食の意義 全教栄養職員部・猪瀬里美さん、●定時制高校における給食の意義 全教定通部・柳澤宏至さん、●食の安全、地産地消 農民連・齋藤敏之さん
(3)まとめ・閉会あいさつ
申し込み QRコードまたはメールで
     Eメール kyobun_kyozai@educas.jp

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主催 全日本教職員組合・教組共闘連絡会・日本自治体労働組合総連合
お問い合わせ 全教教財部
 電話 03(5211)0123


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愛知県津島市 桜井久美子

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(新聞「農民」2023.12.11付)
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2023年12月

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