「農民」記事データベース20231211-1581-09

地産地消とアグロエコロジーで
学校給食を地域再生の力に
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安全・安心な給食を子どもたちに

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 地場産農産物使用、食材の有機化、無償化など、学校給食を充実させ、アグロエコロジーで地域を再生させる取り組みが各地で広がっています。千葉県佐倉市と東京都日野市の実践例と、給食無償化運動のバージョンアップについて、島根大学法文学部の関耕平教授のコメントを紹介します。


学校給食への無農薬米提供へ
実証栽培がスタート

千葉 佐倉市

 千葉県佐倉市では今年から小中学校給食へ有機米の提供をめざした実証栽培が始まりました。生産者6軒のうち4軒は千葉県農民連印旛農民センターの会員で、そのうちの1軒はこの取り組みの中で入会した新規就農者の夫婦です。農民センターの菊間秋彦事務局長と小出一彦さん、田端大輝さん(35)、希さん(35)夫妻に話を伺いました。

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おだがけの残る小出さんの田んぼで(左から小出さん、田端大輝さん、希さん、菊間さん)

 市が部会設置し有機栽培を推進

 佐倉市は今年の「オーガニックビレッジ宣言」に向け、昨年から市や農政局、JA、栄養士、消費者などで検討部会を設置し、米や野菜の有機栽培の推進について検討してきました。

 検討部会で米は実証栽培を行うことを決定。アンケートで生産者に意向調査を行い、6軒の農家が実証栽培に応じました。NPO法人民間稲作研究所に講師を依頼し、年5回の研修会も実施。収穫したお米は12月に市内の小中学校34校すべてで提供される予定です。

 給食納入用のコシヒカリはJAが一旦買い取りし、差額を市が補てんしています。

 安全安心な食べ物を自分の手で

 有機米の実証栽培を通じて新しく農民連に加わったのが田端さん夫妻です。和歌山の出身で祖母の農作業を手伝っていた大輝さんは、7年前から就農を考えていました。「援農や田んぼの学校などに参加をしながら、ゆくゆくは安全な食べ物を自分の手で作りたいと考えていました」

 希さんも「子どもが3人いて、給食を安全なものにしたいと思い、夫の挑戦も手伝うつもりでした。昨年10月にDVD『静かな汚染、ネオニコチノイド』を見る機会があり、『お手伝いじゃだめだ』と一緒に就農することにしました」と話します。

 ふたりは、1月から兼業で就農し、有機米の実証栽培にも手をあげました。自然栽培で米以外にも露地野菜を5アール耕作し、ブルーベリー10アールも最近植えています。

 「兼業農家でもあり、田植えもイベントとしてやったことなどで、適期から少しずれた作付けになり、草が生え、分けつが少ないなど不安もありましたが、10アール当たり300キログラム収穫でき、安どしました。機械をそろえることもできず、代かきは管理機で、くろ塗りはクワで行い、20アールすべて手で植えるなど重労働になりましたが、楽しくできました」と1年目の米作りを振り返ります。

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満面の笑顔で話に花が咲きます

 就農者を地元の農民連で応援

 田端さん夫妻はもともと小出さんと家が近く、野菜も買うなど交流がありました。稲刈りには小出さんがバインダーを貸し出し、もみすりも県連の小倉毅副会長の施設を利用するなど、サポートする中で農民連の仲間に加わることになりました。「いろいろ相談できて心強いです。新聞『農民』もたくさんの情報が載っていて楽しみにしています」

 「20ヘクタールくらいあればすべて有機米に切り替えられるという試算もあります。会派を超えて有機給食を支持する市議会議員がいますし、市民からも『給食の会』結成の動きが出ています。そうした人たちと力をあわせて続けられるようにしたい。新規就農者の受け皿にしていきたい」と菊間さんは意気込みます。

 「自校方式を生かし、栄養士と手を組んで地域の学校だけでもいいから少しずつ地元の無農薬野菜とお米が供給されるとよいね」と小出さん。

 田端さん夫妻も「子どもたちには安全なものを食べさせたい。温暖化など環境問題が深刻化する中で、おとなが何もしないのは格好悪いですよね」と耕作面積を広げてがんばる決意をしていました。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2023.12.11付)
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2023年12月

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