「農民」記事データベース20231211-1581-10

地産地消とアグロエコロジーで
学校給食を地域再生の力に
(2/3)

安全・安心な給食を子どもたちに

関連/地産地消とアグロエコロジーで学校給食を地域再生の力に(1/3)
  /地産地消とアグロエコロジーで学校給食を地域再生の力に(2/3)
  /地産地消とアグロエコロジーで学校給食を地域再生の力に(3/3)
  /学校給食について考えるオンラインシンポジウム
  /イラスト


全国に先駆け地場産活用

東京 日野市

 学校給食に地元産農産物を活用し、地産地消の推進を図り、食料自給率の向上に結びつける事例が各地で広がっています。東京都日野市では40年前から全国に先駆けて学校給食に地元産の農産物を取り入れる取り組みをしてきました。自校調理方式で温かく衛生的な給食が提供され、安全でおいしい給食を実現しています。

 食育推進計画で利用率アップ

 「40年前、子どもたちが市内の畑を荒らして困るとの苦情が農家から学校に寄せられたことから、学校の栄養士さんたちが子どもたちに地元の農産物を食べてもらうことで、少しでも地元の農業のことを理解してもらい、さらに給食の残さも減らすことができるのではないかと考えたことが、地場産農産物使用のきっかけでした」と関係者は話します。

「食育条例」制定し利用目標も

 2009年4月に「日野市みんなですすめる食育条例」が制定され、食育を実践するための「日野市食育推進計画」のなかで、地場産野菜の利用率の目標25%も定められています。

 地元産使用は2005年のにんじんに始まり、以後、長ネギ、リンゴ、キャベツ、大根、じゃがいも、玉ネギ、小松菜のほか30品目以上になります。地元の農産物使用は、市が掲げる「農あるまちづくり」の基盤になっているとともに、生産者による学童農園、体験農業等への指導と協力が学校教育の一端を担っています。

画像
生産者と一緒に田植えをしました(日野市提供)

 地場産野菜の利用率は、2013年度に17・9%だったのが22年には30・6%に増えるなど、日野市食育推進計画で定めた目標25%を超えています。

 関係者は「日野市の学校給食は、農協、農家、栄養士、調理員が一体になって協力し、顔の見える関係を築くことによって、子どもたちのためにおいしい給食をつくる取り組みを進めています」とアピールします。

 年度の始めに、打ち合わせ会議を開き、各学校の栄養士、農家、農協担当者、市が集まり、取り扱う品目・納品企画等を話し合い、地元野菜供給のための契約を進めます。

 地場産野菜利用の促進のために、(1)学校と農家の間に入り調整する「学校給食コーディネーター」制度(食材供給の橋渡しと価格の調整)を導入し、(2)学校と農家が農産物の供給に関する契約を結び「契約栽培」制度を実施しています。23年度からはJAがコーディネーターを務めています。

 高値で出荷でき農家は喜ぶ

 地元農産物の学校給食への出荷価格は、出荷する農家が集まる「出荷調整会議」で決めています。野菜単価の決定は、多摩・八王子青果の市場価格の動向をみながら、日野産野菜等が同時期に同一品目同一単価になるよう調整。(1)市場価格の平均価格を参考に価格を決め、(2)1キロあたり20円から60円の契約栽培事業奨励金が交付されています。

 こうして学校給食の仕入れ価格は市場での流通価格と奨励金が上乗せされ、市場価格より高値で出荷できることになり、農家に喜ばれています。

 具体的には、国立市にある多摩青果や八王子青果市場の市場価格の平均価格を参考に出荷価格を設定し、それにキロ単価20円から60円がプラスになります。例えば大根はキロ150円で購入したとするとプラスキロ60円が上乗せされ、キロ210円の仕入れ価格になります。

 また、天候等の影響によって農産物が不作になり市場価格が高騰することもありますが、このような時には市場価格より安価で出荷価格を決定することも多くあり、日頃からの農家と栄養士の顔の見える信頼関係があることによって、長く続く学校給食への地場産農産物の供給体制を支えています。

(新聞「農民」2023.12.11付)
ライン

2023年12月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2023, 農民運動全国連合会