「農民」記事データベース20230703-1559-09

パンフレット

食と農の危機打開に向けて
(2/3)

〜新農業基本法に対する農民連の提言〜
ダイジェスト版

関連/食と農の危機打開に向けて(1/3)
  /食と農の危機打開に向けて(2/3)
  /食と農の危機打開に向けて(3/3)
  /農民連の「提言」を読んで


3 農産物総自由化の転換、とくに不要な米、
乳製品の輸入中止を

 1995年に発足したWTO(世界貿易機関)協定で「ミニマムアクセス」(MA=最低輸入機会)、「カレントアクセス」(CA=現行輸入機会)という奇妙なルールが定められました。

 しかし、これは、日本政府が世界の常識からかけ離れて勝手に主張している「輸入義務」ではありません。

 現にWTO加盟国全体でみても、MA、CA枠を満たしている品目数は半分にすぎず、国家貿易品目であっても55%にすぎません。ところが日本は米も乳製品も気前よく100%以上達成しています(図表3)。

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 アメリカ米の高騰によって、MA米の制度そのものが破綻しはじめていることは明らかです。1月30日に行われた主食用アメリカ産うるち米の売渡価格は1俵(60キロ)3万円! 国産米価格1万2878円の2・3倍です。

 提言 MA米・乳製品輸入をストップせよ

 (1)500億円もの無駄づかいである外米輸入の削減・廃止を。酪農家に「牛乳搾るな」を強制する乳製品輸入を即座にストップを。

 (2)新基本法に輸入自由化が農業生産と食料供給に及ぼしている悪影響をチェックし、是正する条項を設けることを提案します。


4 価格保障・価格転嫁・直接支払いの実現と充実を

 再生産できる米価・農畜産物価格の実現に国が責任をもつこと。

 私たちは、WTO・現行基本法のもとで壊されてきた価格保障をアメリカ・EU(欧州連合)並みに再建・充実することを要求します。

 価格転嫁――フランスの「エガリム法」の試み

 エガリム法は(1)任意であった農産物販売における書面契約の義務化、(2)一定の指数を定め生産費の変動に応じた価格改定の自動化、(3)契約当事者間の紛争の仲裁機能の強化――などで構成されています。

 日本もせめてフランス並みの価格転嫁制度をつくることを要求します。

 直接支払制度で農業所得と農地を支えているEUとスイス

 欧州諸国と日本の農業所得に占める直接支払い(補助金)の割合を比較すると、日本が30%に対し、スイス92%、ドイツ・フランスは77%、64%です。「EUやスイスは食料安全保障のための直接支払制度で農業所得と農地を支えている」のです。一方、日本の直接支払いはきわめて貧弱です(図表4)。

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 スイスの直接支払いは、農業生産維持と農地保全をめざす大規模な面積支払いに特徴があり、直接支払額は農家1戸あたり450〜500万円に達します。

 私たちは、(1)消費者の過大な負担を避けて農家の所得を維持するための「食料供給保障支払交付金」、(2)中山間地など条件不利地域を対象にした「農山村持続性確保交付金」、(3)環境負荷軽減や有機農業推進などに役立つように抜本的に拡充された「環境保全型農業直接支払交付金」を新農基法で実現することを要求します。

(新聞「農民」2023.7.3付)
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2023年7月

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