「農民」記事データベース20230703-1559-08

パンフレット

食と農の危機打開に向けて
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〜新農業基本法に対する農民連の提言〜
ダイジェスト版

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  /農民連の「提言」を読んで

 農民連は新パンフレット『食と農の危機打開にむけて〜新農業基本法に対する農民連の提言』を発行しました。農水省・審議会の「中間とりまとめ」(5月)と岸田政権の「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」(6月)に対する批判と農民連の提言を、図表を駆使して紹介しています。提言は何を求めているのか、ダイジェスト版を特集します。


1 旧農業基本法以来60年その歴史的総括

 稲作農家の時給は10円!

 世界食料危機のもとで、日本の食と農は深刻な四重苦に直面しています。食料自給率38%、肥料・原油のほとんどすべてを輸入に依存している日本の危うさは明白です。現在の危機は基本法農政60年間の「なれの果て」というべきです。

 稲作経営の1戸当たり農業所得は2021年に1万円、稲作農家の時給はわずか10円で、他産業の時給(1669円)をはるかに下回っています(図表1)。

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 私たちは、まず第一に、基本法60年の総自由化・新自由主義政策の根本的な検証と反省を求めます。


2 食料増産と自給率向上で国民の食を守るのか、
自給率を低下させたままで国民を飢餓に
追い込むのか

 食料自給率38%は「砂上の楼閣」、38%どころか10%?

 肥料や飼料、種子の自給率の低さを考慮すると、カロリー自給率は38%どころか10%あるかないかの「砂上の楼閣」です。

 ところが、財政制度審議会は「国内増産による自給率の向上に主眼を置くのは疑問」「食料自給率をことさらに強調」するなと要求。野村農相は「日本の輸入先であるアメリカ、カナダ、オーストラリアに日本の自給率を足すと、カロリーベースで8割になる」と国会で答弁。まるで、自給率向上は不必要といわんばかりです。

 自給率向上を政府の義務に

 私たちは、自給率向上を放棄して国民を飢餓に追い込むのではなく、食料増産と自給率向上で国民の食を守ること、そのために新農業基本法では自給率向上を政府の義務とすることを要求します。

 食料の有事立法検討「花よりも米つくれ」

 大軍拡、「戦争する国」づくり段階の新基本法検討の性格をまざまざと表しているのが、「花農家にコメやイモをつくるよう命令し、価格統制や配給制なども視野に入れる」という食料の有事立法検討です。

 私たちは食料の有事立法検討中止を要求します。

 すべての人が、いつでも食料を得られる権利を

 コロナ禍、物価高騰のもとで「1日1食」に切り詰めるなど、「食べたくても食べられない」人たちが増えており、国と自治体、フードバンクや子ども食堂など、官民合わせた食料支援が切実に求められています。

 消費者庁の調査で、アメリカやフランスに比べて日本の食料支援対策の貧弱さは並はずれています。フードバンクへの食品の寄付量はアメリカの739万トンに対し、日本は2850トンで、わずか0・4%にすぎません(図表2)。

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 米も備蓄米91万トンのうち支援に回ったのは22年度に168トンで0・018%と“雀(すずめ)の涙”程度にすぎません。

 米欧と日本の決定的な違いは政府支援の有無です。

 政府主導の食料支援制度を

 「余剰」になっている米や牛乳・乳製品を政府が買い上げて食料支援に回すこと、学校給食を無償化することを強く要求します。これは、国民の食への権利保障、生活困窮者支援、そして農家に対する支援の“一石三鳥”の効果があります。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2023.7.3付)
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2023年7月

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