急ピッチで進む開発・実用化ゲノム編集食品は誰のため?
|
関連/ゲノム編集食品は誰のため?(1/3) /ゲノム編集食品は誰のため?(2/3) /ゲノム編集食品は誰のため?(3/3) |
「ゲノム」は、生物が持っているDNAとそこに記録されている遺伝情報を指して呼ぶ名前です。ゲノム編集とは、この遺伝情報を司っている特定のDNAの場所をねらい、酵素などを用いて切断して機能を失わせたり(ノックアウト)、切ったところに別の遺伝子を入れたり(ノックイン)する「遺伝子操作技術」のことを指します。(図2)
クリスパー・キャスのキャスと呼ばれるハサミの役割を果たす酵素には数十種類があり、その中で9番目の酵素が用いられているので、クリスパー・キャスナインと呼ばれています。
クリスパー・キャスナインは、DNAを切断する場所まで誘導するガイドRNAと、DNAを切断する制限酵素のキャスナインを組み合わせたものです。この技術は、細菌のウイルスからの防御システムに目をつけたものです。
ウイルスは細菌に感染すると、DNAの形で細菌内のDNAに潜り込み、じっとして時期を待ちます。そして細菌のDNAを利用して自分を増殖し、細菌を食い破って外に出てきます。ウイルスの増殖のための戦略です。ウイルスが潜り込むと細菌自体の生存が危うくなります。細菌はそのため、 ウイルスに感染すると、その侵入したウイルスのDNAを認識し、クリスパー内に取り込み、キャス酵素で切断して無効にします。この仕組みを、遺伝子操作に利用できると考えたのです。
しかし、日本政府は、こうした議論を無視して、この技術を「自然界で起きる突然変異と同じもの」だと言って、安全審査も表示もなしに次々と流通を許可しています。
農水省が今年3月に募集した「みどりの食料システム戦略」へのパブリックコメント2700通のうち、95%が、この技術への懸念だったように、どう考えてもゲノム編集による品種改良と自然界で起こる突然変異が同じだとは考えられません。
人類は、よりおいしいもの、栽培しやすいものを選んで、栽培を繰り返し、様々な品種を育ててきました。
明治20(1887)年に千葉県八柱村(現松戸市二十世紀が丘)の、ゴミ捨て場から発見された二十世紀梨の苗は、当時、栽培されていた長十郎梨からの突然変異ではないか、と言われています。長野県の「野沢菜」も、京都、大坂で栽培されていた「天王寺かぶ」が栽培地の自然条件に合わせて、現在の形に変化したと言われています。
大正時代に、1代目は両親のそれぞれの良いところを引き継ぐ性質(雑種強勢)を利用した「一代交配」の育種技術が生まれ、生育スピードの均一性や形状がそろって歩留まりがいいことから、昭和30年代ころからスーパーマーケットの発展とともに、野菜はほとんどF1種になりました。
こうした突然変異や、一代交配技術を含めた育種技術は、変化した新しい特性が何世代かを経て固定され、自然に適用できる品種になります。
拙速な流通はやめて、安全性を確かめるべきです。
このマークの利用は無料ですが、使用には申し込みが必要です。詳しくは、OKシードプロジェクトのホームページ(https://okseed.jp/)から。
※【訂正】 12月20日号にて、以下の訂正がありました。
12月13日付4面「ゲノム編集とは?」の記事で「ゲノム編集技術は、2021年にクリスパー・キャスナイン法が開発されて」とあるのを「ゲノム編集技術は、2012年にクリスパー・キャスナイン法が発表されて」※1に訂正します。
2021年12月27日、訂正しました。
[2021年12月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2021, 農民運動全国連合会