「農民」記事データベース20211213-1485-08

急ピッチで進む開発・実用化

ゲノム編集食品は誰のため?
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―世界でも日本が突出

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 特定の遺伝子を壊す新しい技術、ゲノム編集を使って食品や動植物の開発・実用化が矢継ぎ早に進められています。誰のため、何のためなのか、その問題点をみます。


ゲノム編集トマトを販売開始

苗を小学校に配布する計画も

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ゲノム編集トマト

 急ピッチで進められているゲノム編集技術。今年5月にはゲノム編集トマトが各地で栽培され、9月には販売が始まりました。同トマト「シシリアンルージュ・ハイギャバ」はベンチャー企業、サナテックシード社が開発したもので、血圧を下げ、リラックス効果があるなどとされます。

 看過できないのは、サナテックシード社が、「ゲノム編集食品を支持するコミュニティーができた」として、それをさらに広げて、来年から障がい児福祉施設にゲノム編集トマトの苗を無償配布、さらには2023年には小学校に苗を無償提供する計画を持っていることです。

 サナテックシード社の実質的な親会社パイオニアエコサイエンス社は「介護福祉施設へはリハビリテーションなどの一環としての園芸活動の資材として、また小学校をはじめとする教育機関へは食農教育や科学教育の教材としての提供を予定している」と表明。子どもたちをターゲットにゲノム編集食品の“啓発”を行うことをねらっています。

介護福祉施設や小学校への配布中止を求める
署名にご協力を

 サナテックシード社に小学校へのゲノム編集のトマトの苗の配布計画を撤回することを求め、また介護福祉施設に栽培させる計画の中止を求めるオンライン署名を行っています。 https://okseed.jp/act/

他の動植物も続々開発

 開発はトマトにとどまりません。9月にはゲノム編集マダイ、10月にはゲノム編集トラフグの届け出が厚生労働省で相次いで受理され、マダイの提供は開始されました。マダイは、バイオ企業リージョナルフィッシュ社が開発。受精卵の段階で、筋肉細胞の成長を抑える働きがある「ミオスタチン」の遺伝子の一部をゲノム編集技術で壊しています。成長すると、通常のマダイに比べて身の量が約1・2倍になると見込まれます。

 ゲノム編集トラフグも、同社が開発し、食欲を抑える遺伝子「レプチン」を働かないように操作。よく食べるようになり、成長速度が約2倍に上がりました。通常2年以上かかる飼育期間の短縮やえさの削減につながるとされています。

 ほかに、動物では、養殖に適したおとなしいマグロや共食いしないよう攻撃性を減らしたマサバ、成長の早いコオロギなど。植物では、芽の毒素ソラニンを低減させたジャガイモ、収量増をねらったイネなどの開発を行っています。

 世界に目を向けると、実用化されたゲノム編集食品・動植物は、日本の3品種に加え、飽和脂肪酸の含有量が少なくトランス脂肪酸が含まれない高オレイン酸大豆(米国、カリクスト社)だけです。日本が突出して開発を進めています。


ねらいは知的財産権

企業が利益を一人占め

 ゲノム編集技術で最も大きな問題点は、「オフターゲット」と呼ばれる現象です。ゲノム編集はねらった遺伝子を正確に壊す技術だといわれますが、DNAを切断して遺伝子を壊す際に、目的とする遺伝子以外のDNAを切断してしまうケース(図1)がよく確認されています。オフターゲットにより生命体として大事な遺伝子の働きが失われることも起こりえます。そもそも壊してよい遺伝子などありません。

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 それに加えて、ゲノムは、遺伝子同士が連絡を取り合うなど複雑なネットワークを形づくっています。オフターゲットは、遺伝子の働きを壊してしまうことにより、そのネットワークをかく乱してしまうおそれがあります。

 さらに、ゲノム編集植物であれば、花粉が風に乗って運ばれたり、ハチなどに付着して運ばれたりして、はるか離れた場所へ移動し、他の品種と交雑を起こす可能性があります。

 動物であれば、養殖場から逃げ出すなど、いったん外に放たれると、勝手に移動するため、影響は深刻です。

(新聞「農民」2021.12.13付)
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2021年12月

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