「農民」記事データベース20210927-1474-10

野党連合政権の実現で
日本の農と食の未来を切り開こう
(2/4)

検証
破たんした安倍・菅=自・公農政

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自・公政治9年

米価暴落、生産基盤崩壊
食料自給率史上最低

 「米価暴落放ったらかし」政権

 出来秋の農村を米価暴落の波が襲っています。コロナ禍で米の需要が激減して過剰在庫が積みあがり、各地で発表される米の概算金は軒並み1俵(60キロ)8000円〜9000円以下(1)。生産コスト1万5000円を大幅に下回っています。

(1) 米価は暴落、自給率は史上最低
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 民主党政権時代の2012年には1万4千円だった米価が、21年には約9000円。5000円も下がっており、安倍・菅政権は“米価暴落政権”です。

 私たちは昨年来、政府に「過剰米を買い入れ、需給の安定を」「コロナ禍による生活困窮者に食料支援を行え」と要求してきました。しかし、安倍・菅政権は頑として冷たく拒否し続けたまま。

 米価暴落は、二重の意味で安倍・菅「新自由主義」政権による人災であり、自・公政治は“米価暴落放ったらかし政治”だといわなければなりません。

 第一は、コロナ禍のもとで起きている過剰・暴落の解決策を、減反拡大という農家の「自己責任」だけに押しつけていること。

 アメリカなどで実施されている過剰農産物の買い入れや食料支援という当たり前の政策は何一つ行わないばかりか、消費量の1割におよぶミニマムアクセス(最低輸入機会)米の輸入をやめる素振りもありません。

 第二に、安倍・菅政権は18年、米農家への戸別所得補償を廃止し、米の生産調整の配分をやめて、「農家が自分の責任で需要に合わせて生産をすべきだ」という政策に転換しました。「米が余っているから仕方がない」という農家の“自己責任” 意識につけ込んだ政策です。

 これは米の需給調整に対する政府の責任放棄であり、米価暴落の根源はここにあります。

 8月に北海道・東北6県のJA中央会会長が連名で「過剰米の備蓄買い入れ」「生活困窮者、フードバンクへの支援」「米政策の検証・見直し」を要請しました。米危機を緊急に打開するカギはこの方向にこそあります。

 “米価暴落放置政権”を退場させ、市民と野党の共闘で新しい政権をつくりましょう。

 「食料自給率引き下げ」政権

 自・公政治9年間のもう一つの大きな特徴は、食料自給率を史上最低に落ち込ませた「食料自給率引き下げ政治」です(1)。

 自・公政治は、環太平洋連携協定(TPP11)をはじめ、日米貿易協定、日本・欧州連合(EU)経済連携協定、東アジアの包括的地域連携協定(RCEP)と立て続けに、農産物輸入の自由化を行ってきました。

 アメリカやカナダ、オーストラリア、ヨーロッパなどからの農産物にかけられている関税が引き下げられ、最終的にはゼロになります。

 その結果、20年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は、過去最低の37・17%に落ち込みました。未曽有の米の凶作に見舞われた1993年度を下回る異常事態です。

 コロナ危機で食料の輸出規制に踏み切る国が相次いでおり、外国頼みの危うさが改めて浮き彫りになっています。除草剤(グリホサート)汚染のパン、成長ホルモン入りの牛肉・豚肉、残留農薬たっぷりの野菜・果物……。食の安全は決定的に脅かされ、「安全な食料は日本の大地から」という願いは遠ざかるばかりです。

 2010年に民主党政権が作った「食料・農業・農村基本計画」は、戸別所得補償の実施を柱にして食料自給率を当時の41%から50%に引き上げるという意欲的なものでした。

 ところが、安倍政権は戸別所得補償を廃止し、15年改定の「基本計画」で自給率目標を45%に引き下げ、20年「計画」でも踏襲し、総自由化体制に突入しました。

 自・公農政こそが食料自給率低下の元凶であり、その転換なしには、「45%」目標は単なる飾り物に終わるばかりか、自給率はさらに落ち込むことは必至です。

 民主党政権時代の経験は、野党と国民の共同による連合政権の方向にこそ食と農の未来があることを示しています。

 農業と農村を維持できるのか

 自・公政治の9年間は、安倍・菅「官邸農政」が吹き荒れた9年間でした。

 (1)外国産と競争できる経営を育成するとして、小規模経営や家族経営を切り捨て、企業化、大規模化を推進する「構造政策」

 (2)家族経営の協同組合である農協を大企業に明け渡す「農協つぶし」

 (3)農業生産と命の源である種子を大企業に明け渡す「種子法廃止・種苗法改定」

 その結果、農業の生産基盤が大きく崩れつつあり、農業と農村を維持できるのかが問われています(2)。

(2) 崩れる生産基盤
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 この10年間で、販売農家と農業従事者は3分の2に減り、農地面積は22万ヘクタールも減りました。中国5県の農地がそっくりなくなった勘定です。一方、「担い手」への農地集積割合は49%から56%になったにすぎません。

 大規模化・効率化一辺倒で大多数の中小農家の切り捨てに熱中してきた自・公政治のもとで、農業生産基盤の底が抜けてしまい、農業生産は増えず、自給率も最低に落ち込んでしまった――これが10年間の実態です。

 菅政権成立後、政府は「即席麺」のように、そそくさと「みどりの食料システム戦略」をつくり、底が抜けた農業生産基盤の「補修」に乗り出そうとしています。

 しかし、その実態はどうか。関根佳恵・愛知学院大准教授は次のように指摘しています。

 「地域に大規模な農場がぽつんと存在し、ロボットが農業を担う未来像には、地域コミュニティやそこで生活する人としての農家が存在しない」「農民なき農業か、農民的農業か」が問われている、と(『世界』21年10月号)。

(新聞「農民」2021.9.27付)
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2021年9月

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