国産米の需要を奪い米価の安定を防げるミニマム・アクセス米(MA米)は
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ところがWTO協定は、輸入がゼロか5%以下の産品については、各国が不要なものでも最小限(ミニマム)の輸入機会(アクセス)を与えるべきだという理屈で、国際的な「押し売り」を制度化しました。これは「自由貿易」ではなく、アメリカ主導の「管理貿易」にすぎません。
この結果、日本は26年間で約1900万トン、国内の米生産量全体の3年分に当たるMA米を輸入し続けてきました(表)。しかも、まるで“MA米の半分はアメリカに引き渡す”という密約があるかのように、毎年、毎年、ハンで押したようにアメリカ米がほぼ半分を占めています。
日本政府は、WTOルールではなく、アメリカに対する「輸入義務」にしばられているといわなければなりません。
政府は「MA米は加工や飼料、援助用に回されるから、国内の米需給には影響はない」と弁解していますが、これは二重にデタラメです。
第一に、米の政府備蓄はかつては200万トン以上で、余剰米は政府が備蓄して米価を安定させ、古米は加工・飼料・援助用に向けられていました。しかし、MA米の用途とぶつかるため、備蓄米の規模を91万トンに減らしました。
そもそも、加工・飼料用米は国産米が担ってきたものです。MA米は、国産米の需要を奪い、政府備蓄米の運用と米価安定を妨げている元凶です。
第二に、SBS米は年10万トンで、多くは外食向けですが、国産米価格が下がれば、わざわざ外米を使う業者はいません。その結果、最近の11年間で、SBS米輸入が10万トンに達しなかったのは実に8年でした(たとえば14年は1・2万トン)。不要な外米は輸入しないのが「自由貿易」のはずです。
しかし、アメリカに対する「輸入義務」に忠実な政府は、残ったSBS枠を一般輸入枠に振り向け、MA米の輸入総量は一粒も削らなかったのです。
この異常ぶりは、バターなど乳製品に比べれば明らかです。乳製品でやっていることを、なぜ米ではやらないのか!? 今こそ大きく声をあげる時です。
第一に、最も「過剰」なのはMA米77万トンであり、その輸入を中止すれば、史上最大の減反拡大は全く不要です。
第二に、百歩譲ってMA米ゼロとまでは行かないとしても、過去の米消費量1000万トンを基準にしたMA米を、現在の消費量700万トンに見合って減らせば約57万トンで20万トン減になり、コロナによる需要減と同量です。
私たちは「政府は、この程度の交渉をすべきだ」と要求しましたが、農水省は「恐れ多い」とばかりに拒否しました。
田植え真っ最中(石川県農民連の宮岸美則会長=白山市) |
「需要減少分を政府が買い入れて人道支援に回せ」という要求に対しては「制度上・財政上の制約があるから無理だ」と逃げ回るばかりです。
しかし、需要減少分を買い上げるために必要な財源は、1俵(60キロ)1万4000円×20万トンで約460億円です。これに対し、19年度のMA米による財政赤字は418億円(農水省の試算368億円に海外援助の負担50億円を上乗せ)。
買い上げた米をコロナ禍で困窮する国民への支援に回すことは、国民も生産者も助かる対策です。外米にはふんだんに財政資金をつぎ込む一方で、人道支援も米価暴落対策もかたくなに拒否する菅政治は許されません。
[2021年5月]
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