国連「家族農業の10年」で食料自給率向上、
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トラクターを先頭に「日米貿易協定は批准するな!」=2019年11月7日、都内 |
追加関税についても、得たのはアテにならない“口約束”だけで、協定には「安全保障上の措置をとることを妨げない」と明記されています。トランプ政権は「安全保障」を口実にして、今後、自動車への追加関税・輸入数量制限という強力な武器を振りかざしながら、「第2ラウンド」で「アメリカ第一主義」むき出しの日米FTAをゴリ押しすることは必至です。
第二に、安倍政権は「農産物はすべてTPPの範囲内」「米は守った」といっていますが、これもウソとゴマカシです。
牛肉関税は現在の38・5%から9%に、豚肉も1キロ482円の関税が50円に引き下げられ、事実上、関税ゼロ状態になります。一方、輸入急増から国内生産を守るための牛肉セーフガード(緊急輸入制限)は、一度でも発動されれば「発動水準を一層高いものに調整する」ために10日後に協議を始め、90日以内に決着させることが合意されており、セーフガードは完全に骨抜きにされます。
さらにアメリカは、協定付属書に「アメリカ合衆国は、将来の交渉において農産品に関する特恵的な待遇を追求する」と書き込み、「今後も農産物で譲歩を迫る」というアメリカの強い意志を示しました。国会では「米などが再協議の対象にならない保証が本協定案にあるか」という追及に対し、江藤農相は「ない」と認めざるをえませんでした。
選挙モードのトランプ大統領に頼み込み、同氏の地盤が産地であるトウモロコシ275万トン“爆買い”の見返りに、地盤ではないカリフォルニア米を除外してもらって体裁をとりつくろったものの、今後は「自動車のために米も差し出す」という密約の存在さえ疑わせるものだといわざるをえません。「米も危ない!」のであり、「米は守られたから安心」どころではありません。
アメリカ通商代表部が18年12月に議会に提出した「日米FTA交渉方針」は、最初に「対日貿易赤字の削減」を大目標として掲げ、日本に対して米を含む農産物の関税削減・撤廃や、医薬品・医療保険制度、食の安全基準などの規制緩和を強い調子で要求する一方、アメリカ産業、特に自動車については「アメリカでの生産・雇用拡大」を日米FTAに盛り込むことを要求しています。つまり、日本には保護・規制の撤廃を求める一方で、アメリカ産業の保護の強化と日本からの支援を要求する「TPP+アメリカ第一主義」むき出しの方針です。
とくに食の安全をめぐっては、発がん性やアレルギーなどの危険がある「成長促進ホルモン剤」をたっぷり使った牛肉・豚肉がますます大手をふって輸入される危険が強まります。すでに牛肉の自給率は36%、豚肉は48%であり、自給率がさらに下がってから「安全な肉を」といっても遅いという事態になりかねません。
また、農民連食品分析センターは輸入小麦を使ったパン、とくに学校給食パンから発がん性の農薬・グリホサートを検出し、農水省の調査でも、アメリカ、カナダ産小麦の90%以上からグリホサートが検出されました。収穫目前に農薬(除草剤)を散布する省力化農法が常態化しているためですが、日米貿易協定では、小麦にも「アメリカ枠」が設けられ、トランプ大統領は「小麦の大量購入」を要求しています。小麦の自給率は12%です。“農薬汚染パン”の脅威は今後も続くのです。
トランプ大統領は19年6月に「バイオ農産物規制の枠組みの現代化」という大統領令を公布し、遺伝子組み換え農産物と、それとセットで使用量が増えているグリホサートに対する「過剰な規制」を洗い出し、国内だけでなく海外でも規制を撤廃することを、政府機関に期限を区切って命令しています。
遺伝子組み換え農産物、グリホサート、成長ホルモンを頑として「安全だ」と言い張り、「アメリカ第一主義」むき出し、食の安全などどうでもよいという圧力が強まることが必至の日米FTA交渉はやめさせなければなりません。
安倍政権は、TPP11・日欧EPA・日米貿易協定を発効させ、中国や韓国を含む16カ国の「アジア地域包括的経済連携」(RCEP)の早期合意をめざし、さらにブラジルなど南米の農産物輸出大国とのFTAに乗り出して、世界中にTPPを拡散し、“世界総自由化”を狙っています。
そうなれば、日本の食と農はどうなるか、政府自身の試算が雄弁に物語っています。2010年11月、農水省は、農産物輸入が世界レベルで自由化された場合、食料自給率が39%から14%に落ち込み、米生産は90%減、豚肉・牛肉生産は70%減、小麦・砂糖生産は壊滅し、農業生産額は半分になるという悪夢の試算を公表しました。
いま安倍政権がのめりこんでいる“世界総自由化”が進めば、悪夢は現実のものになりかねません。「無農・亡食の国になるのを許さない」大運動が今こそ求められています。
さらに、公的医療保険制度を「社会主義だ」と忌み嫌うトランプ政権のもとで、日本の医療保険・薬価制度に対する攻撃はますます激しくなる恐れがあります。
[2020年2月]
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