国連「家族農業の10年」で食料自給率向上、
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開会あいさつする笹渡義夫会長 |
さらに、2017年12月の国連総会は、SDGsの目標達成に貢献する“核”として家族農業の役割を高く評価し、2019年からの10年間を国連「家族農業の10年」とすることを決めました。
また、2018年の国連総会ではSDGsの目標達成と家族農業の発展にとって不可欠な「農民と農村で働く人々の権利に関する国連宣言」(農民の権利宣言)を採択しました。
このように世界は、今日の危機的事態の認識のうえに立って、その解決のカギを握る小規模・家族農業を評価し、政策的な支援を強化する方向へと大きく舵(かじ)を切っています。
国連は長年にわたって、途上国・先進国を問わず近代化・大規模化による「緑の革命」を推進すれば、飢餓や貧困を解消して豊かになるという立場をとってきました。これは、多国籍企業の利益を最大化する世界銀行、IMF(国際通貨基金)、WTO(世界貿易機関)などのねらいに沿ったものでした。
しかし、こうした方向が引き起こしたのは飢餓や貧困の拡大、農薬や化学肥料による環境汚染、地下水の大量くみ上げによる水位の低下や塩害、化石燃料への依存と気候変動、脅かされる食の安全など、農業と社会の持続可能性を揺るがすものでした。そして2007年、08年には世界的な経済危機、原油価格や穀物価格の高騰、食糧危機に直面しました。
こうした路線を変えたのは、現状に対する危機感であり、農民連も加盟する国際農民組織ビア・カンペシーナをはじめ、世界の多くの民衆のたたかいの成果です。
こうした政策の結果、2018年の食料自給率は37%と、大凶作で米パニックとなった93年を下回る水準まで低下しています。農水省は異常気象の影響としていますが、生産基盤の弱体化とTPP(環太平洋連携協定)11、日欧EPA(経済連携協定)の発効が大きな要因です。その上に、日米貿易協定が加わり、日本の農業に甚大な影響を及ぼすことは必至です。
これは農民だけでなく、民族の自立と主権、地域経済や国土、自然環境の破壊など、国のあり方の根底にかかわる重大問題です。
そして、もはや食料はいつでも買える時代ではありません。食料を自給できない国は、国際的な圧力と危険にさらされます。生産する力が十分にある国が食料を輸入することは「他国の食料を奪う」ことであり、「飢餓の輸出」にほかなりません。
国際社会は、危機を回避して持続可能な社会に移行するための努力を、各国政府と自治体、経済界、そして市民社会に求めています。
この問題に日本の政治がどう向き合うのか、いま鋭く問われています。日本で持続可能な社会を実現する壮大なたたかいが求められています。
農民連は、広範な階層と連携して目先の大企業の利益を最優先する政治とたたかい、家族農業を基礎に持続可能な社会をめざす流れを加速させるために力を尽くさなければなりません。
いま、持続可能な社会に背を向けている安倍政権が、国民世論に追い詰められ、安倍首相の進退に関わる状況に陥っています。公的行事である「桜を見る会」を私物化し、公職選挙法や政治資金規正法違反の疑念に加え、反社会的な人物を招き入れていたことまで明らかになっています。
この問題で野党が結束し、真相究明と安倍政権の退陣めざし、共闘を発展させていることは重要です。7月の参院選で、1人区全32選挙区で野党統一候補を擁立し、10選挙区で勝利したのをはじめ、11月の高知県知事選挙では、市民と野党の共同候補が、大善戦・大健闘し、野党共闘をさらに深化させました。そして、総選挙で「野党連合政権」を実現するための協議を行っていることは大きな希望です。
今年は政治を大転換させる年です。安倍政権を打倒し、野党連合政権を実現するために全力をあげましょう。私たちが「野党連合政権」に期待するのは、日米FTA(自由貿易協定)をストップさせ、TPP11などの経済連携協定からの離脱、農政の基本に家族農業を置き、食料自給率向上、農産物価格の下支えなど、家族農業と地域を維持・発展させる政策の実現です。
[2020年2月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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