「農民」記事データベース20190527-1361-07

「ゲノム編集」食品が
今夏にも食卓に!?
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 遺伝子を操作する「ゲノム編集」という技術を使った食品が夏にも市場に流通し、私たちの食卓に登場するおそれがでてきました。「ゲノム編集」とは何か。その問題点は?


遺伝子を操作する技術
ゲノム編集とは

 ゲノムとは、すべてのDNA(生命の設計図)のことをいい、DNAには、生命の設計図である、すべての遺伝子が含まれています。

 遺伝子組み換え技術は、別の生物の遺伝子を入れることによって、農薬や害虫に強い品種をつくる方法です。一方、現在代表的なゲノム編集技術とは、特定の遺伝子を切断してその働きを止める方法で、遺伝子を操作する新しい技術です。細胞内で遺伝子を切断する酵素を使い、特定の遺伝子にねらいをつけて切断し、機能を失わせたり、別の遺伝子を組み入れたりします。

 ゲノム編集が急速に進んだ背景には、「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)」という技術の登場で誰でも簡単にできることになったからです。これは、遺伝子を壊すハサミ役の酵素と、その案内役であるガイドRNAを組み合わせたものです。この仕組みを利用すると簡単に目的の遺伝子を壊すことができます。

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パンフレット『私たちはモルモット!?ゲノム操作食品』から

 世代を超えて破壊し続ける

 そのほかゲノム操作技術として、遺伝子ドライブがあります。これは、ゲノム編集のDNAを切断する仕組みを遺伝させ、世代を超えて同じ遺伝子を破壊し続ける技術です。

 たとえば、雌になる遺伝子を破壊する「クリスパー・キャスナイン」を遺伝子の形で蚊に組み込み、この改造蚊が、自然界にいる野生の蚊と交雑すると、雄の子どもしか生まれません。交雑が繰り返されると、雄しか誕生しないため、やがてその種は絶滅してしまいます。※1

 また、ゲノム編集よりも容易に遺伝子の働きを壊すことができる「RNA干渉法」もあります。これまでの遺伝子組み換えは、DNAを操作してきましたが、DNAの情報を伝えるRNAを操作して、DNAの情報を伝えないように邪魔する技術です。ある作物の遺伝子の機能を止めたい場合、その作物に遺伝子の情報を伝えないように設計したRNAを取り込ませるだけでできるものです。ゲノム編集よりも容易に遺伝子の働きを壊すことができます。


ゲノム編集の生物への応用例

 ゲノム編集したものにはどんなものがあるのか。植物では、栄養価の高いトマト、有毒なアルカロイドを含まないジャガイモなどがあります。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、初めてゲノム編集技術を使った「シンク能改変稲」の隔離圃(ほ)場での栽培試験を始めました。これは、花芽の分裂を促進する植物ホルモンを分解する酵素の遺伝子を壊すもので、植物ホルモンが増加し花芽が増え、もみ数が増加するものです。

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試験栽培が行われている「シンク能改変稲」=茨城県つくば市(農研機構ホームページから)

 アメリカでは、2015年から除草剤をまいても枯れないナタネが、18年には、トランス脂肪酸を減らした高オレイン酸大豆が栽培・収穫され、流通を始めました。

 家畜や魚類への応用も広がっています。筋肉の成長を抑制するミオスタチン遺伝子を壊した食肉用の筋肉ムキムキの豚や、成長ホルモンに関わる遺伝子を壊して成長を止めたペット用のマイクロ豚が誕生。肉づきがよく成長が早いマダイやトラフグなどもつくられています。

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ゲノム編集を行うベンチャー企業「セツロテック」のホームページ


【訂正】 6月3日号にて、以下の訂正がありました。
 5月27日付「ゲノム編集食品が今夏にも食卓に!?」の特集で、4面下から3段目の小見出し「世代を超えて破壊し続ける」の記事中、13行目から始まる文章※1を次のように訂正します。「この改造蚊が、自然界にいる野生の蚊と交雑すると、雄の子どもしか生まれません。交雑が繰り返されると、雄しか誕生しないため、やがてその種は絶滅してしまいます」
 2019年6月10日、訂正しました。

(新聞「農民」2019.5.27付)
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2019年5月

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