「農民」記事データベース20160725-1223-11

輸入柑橘類の残留農薬の実態は…
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TPPで関税がゼロになれば
農薬漬け柑橘輸入増は必至

 みかん生産6割減という試算も

 TPPのもとで、ポストハーベスト農薬漬けかんきつの輸入は、さらに増えることは必至です。

 政府は、みかんとオレンジは「差別化」がはかられている、国産果汁は「稀少的商材」だから影響はないと言いはって、TPPによるマイナスの影響は21〜42億円と過少に見積もっています。

 しかし、鈴木宣弘東大教授の試算によれば、オレンジ生果と果汁の関税撤廃によって、輸入は確実に増え、最終的にみかん生産額の6割、911億円も減少します。政府試算の40〜20倍です。

 オレンジ生果の関税は6〜11月が16%、12〜5月が32%ですが、それぞれ6年目、8年目に撤廃されます。輸入オレンジ12万トンのうち、11万トンがTPP参加国からの輸入(アメリカ8・3万トン、オーストラリア2・7万トン)。関税撤廃によって輸入が増加するのは必至です。

 オレンジ果汁の関税(25・5%)は6〜11年で撤廃されます。オレンジ果汁輸入量9・4万トンを生果に換算すれば100万トン。温州みかんの国内生産量78万トンを大きく上回っています。

 政府は、輸入果汁の大部分はブラジル産なので影響はないと言い訳していますが、関税が撤廃され、アメリカ産果汁の関税がゼロになれば、輸入が増えることは必至です。

 自由化後、半減したみかん生産

 政府やマスコミは“オレンジを自由化した後も、国内のかんきつ生産は生き残っている”と言いはっていますが、デタラメです。

 図のように、みかんの生産はピーク時の400万トン弱から、80万トンにまで落ち込みました。91年のオレンジ自由化後、みかん園の廃園・改植事業が各地で行われ、山の風景が一変したと言われたものでした。

 95年のWTO(世界貿易機関)スタートで、生果・果汁の関税が20%引き下げられたことが追い打ちをかけました。

 関税をゼロにするTPPの破壊力はWTOの比ではありません。

 自由化に有効な事後対策などありえないことは歴史が証明済みです。農家にも消費者にも百害あって一利なしのTPPを、なんとしてもつぶすことが求められています。


農薬⇒添加物⇒農薬?

 TPPは、1980年代以来、重ねられてきた日米構造協議の集約の意味をもち、ポストハーベスト農薬もその一つです。

 TPP付属文書(日米2国間の書簡)には「両国政府は、収穫前及び収穫後に使用される防かび剤……に関する取組につき認識の一致をみた」と記されています。

 日本では、収穫した農産物に農薬をかけることは禁止されています。しかし、アメリカが太平洋をまたいで輸出するためにはカビや腐敗を防ぐために農薬をかけなければなりません。

 “ポストハーベスト農薬とは聞こえが悪い”というアメリカの圧力で、日本政府は「農薬」を「食品添加物」に分類しました。

 しかし、日本で食品添加物の表示が義務化されると、今度はアメリカは表示義務のない農薬として扱うよう求めています。

 表向きは決着がついていないといわれていますが、付属文書では「認識の一致をみた」というのですから、アメリカの圧力に従って、消費者に農薬漬け柑橘を押しつけ続ける危険性が強いといわなければなりません。


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青森・むつ市 吉田眞佐子
 
埼玉・北本市 諸川トミ

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(新聞「農民」2016.7.25付)
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2016年7月

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