「農民」記事データベース20160314-1205-08

東日本大震災5年
原発再稼働は絶対許せない
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津波・原発で米作り断念
米価暴落で離農深刻な浜通り

避難指示区域外・南相馬市鹿島区 澤田忠徳さん

 原発事故は、福島県浜通り地方全体の農業にも大きな打撃を与えています。避難指示区域外とされた南相馬市鹿島区の澤田忠徳さん(74)も、原発事故を機に、米作りを断念した一人です。

 澤田さんの田んぼは八沢浦干拓地のなかにあり、水田も、自宅も、津波の被害を受けました。震災発生時、自宅にいた父と妻は2階に避難し、翌日ヘリコプターが救助。床上浸水した自宅はなんとかリフォームして、6月には戻ることができました。

 ガレキと泥をかぶった干拓地の水田は、ちょうど震災直前に基盤整備事業の準備が進んでいたこともあって、津波被害を機に、一気に担い手への農地集約が進められました。澤田さんを含めて、担い手以外の多くの農家が米作りを断念するなか、「担い手に名乗りを上げた壮年の農家がいたのはよかった」と澤田さん。しかし「本当は米作りを続けたかった。津波で農機具も被災してしまって、断念することにした」と寂しそうに話してくれました。

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農民連の仲間の森重行さん(右端)、キヨ子さん(左から2人目)夫妻が営む農家民宿「森のふるさと」の前に立つ澤田さん(右から2人目)と渡部チイ子さん(左端)。米作りのこととなると話が止まらない森重行さんは、原発事故で作付けが制限される前は、米のおいしさが民宿の泊まり客などに評判で、全量を消費者に直売していた。しかし作れるようになった今も「もう米は作らない。この米価では割に合わないし、ここの米を食べてくれる人はいない」と言う。しかしキヨ子さんによると、本当は「また作ってほしい」というお客さんの声は多い。

 鹿島区は避難指示区域外にありますが、原発事故の影響で3年間は米は作付け自粛となり、賠償がされました。しかし2015年からは作付けしなければ賠償請求できなくなったことや、除染作業が進んだことで、少しずつ米作りが再開され始めています。

 「でも原発事故から5年がたって、農家の高齢化も進んで、また農業をやろうという人は本当に少ない。それにいちばん深刻なのは米価が安いこと。福島の米価なんて最悪だ。TPPの心配もある。仕方ないので再開した人も飼料米を作っている」と、澤田さんは嘆きます。福島県産の米は、全量・全袋、放射能検査が実施されていますが、それでも消費者の不安はぬぐえずスーパーなどの店頭には並んでいないのが実態だからです。

 「原発事故は農家のもの作りの意欲に、本当に大きな打撃を与えたと思う。原発再稼働は絶対に許せない」

(新聞「農民」2016.3.14付)
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2016年3月

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