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米を守る農民連の要求と提案
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2012年11月 農民運動全国連合会

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 6.大手卸の米独占は許されない。地域を担う米屋さんも共存できる政策を

 従来、米の流通は地域ごとに中小の卸や小売りが担ってきました。食糧管理制度の廃止とその後の「米改革」を通じて、大手商社を含めて大量に業者が参入し、激しい価格競争とルールもモラルもないつぶし合いや、吸収・合併が展開されました。超大手といわれる数社の卸が市場に影響力を強め、また、膨大な資金や流通網・情報網を持つ商社が、川上から川下にまで着々と手を伸ばしています。

 多くの米屋さんは、激しい価格競争と後継者難から撤退を余儀なくされています。こうしたなかでも、地域の消費者に依拠し、配達機能や対面販売の特徴を生かして少なくない米屋さんが健闘しています。地域を知り尽くし、米の専門知識を持つ米屋さんは、街づくりのうえでも、産地と消費地を結ぶうえでも大事な役割を果たしています。量販店の店内備蓄はわずか数日分ですが、米屋さんは数週間分の在庫を常時持ち、災害時のライフラインを守るうえでも重要な役割を果たしています。

 米屋さんも含めて多様な流通が共存できるよう、農民連は次のように要求します。

(1)米業者は登録制とし、中小の米業者を含め共存できるよう必要な規制を行い、安定供給に責任を負わせること。

(2)生産原価を割り込む価格破壊や買いたたきを規制すること。

(3)低所得層向けの「新標準価格米」を国の責任でもうけ、供給すること。

(4)米の品質基準を設け、クズ米の主食への混入を規制すること。

 7.「米改革」とTPP参加の路線は消費者に何をもたらすか

 「米改革」以来、米価が下がり、消費者は安い米が手に入りやすくなりました。しかし、その一方で激しい価格競争のもとでクズ米の混入や輸入汚染米の恐怖も経験しました。いまも、国民は外国産や超古米を気にしながら外食したり、弁当を買わなければなりません。

 民主党政権の戸別所得補償制度は、輸入自由化を前提にし、「消費者負担から税による負担へ」との考えで米価の下落を容認するものです。しかし、消費者は同時に納税者であり、一時的に安く米が買えたとしても、そのツケはいずれ増税という形で負担することになります。

 財界やマスコミは、「日本の米価は高すぎる」と攻撃しますが、本当に高すぎるのでしょうか。1キロ400円以下が売れ筋などと言われていますが、生産費をまかなうには1キロ500円程度の米価が必要です。それでもお茶わん一杯にすればわずか35円程度で、缶コーヒーの3分の1にすぎません。

 農家は、戸別所得補償制度のもとでも不安定な需給と価格によって、大幅な生産費割れが続いています。さらに、万が一TPPに参加することになれば、米生産の90%がつぶされ、「残る国産米は10%」と農水省自身が予測しています。残る10パーセントは魚沼米や有機栽培米などと言われ、国産米を食べるのは一部の金持ち・富裕層だけになってしまいます。

 そして日本の消費量の9割、700万トンもの米を輸出してくれる国があるのでしょうか? 米はもともと自給的生産が多く、貿易に出回るのは生産量の4〜5%に過ぎず、米の種類も日本人が好まない長粒種が主流です。世界的な食糧不足の時代に「好きな米を好きなだけ輸入できる保証」はどこにもありません。

 食品添加物や残留農薬の規制もTPP参加によって大幅に緩和が要求され、毎日食べる米の安全性も大きく揺らぐことになります。これは「米は国産で」と望む大多数の消費者・国民とは相容れません。“日本の米守れ”を国民の共通の要求にした運動の発展が求められています。

 8.市場まかせの「米改革」路線と決別し、国が責任を持つ米政策へ

 2005年、小泉内閣のもとで強行された「米改革」は、国が米の管理責任を全面的に放棄し、市場に丸投げするものでした。米はどこからどう流れようとまったく自由になり、輸入汚染米事件に見られるような悪質な業者の参入も許しました。スローガンとして掲げられた「売れる米づくり」は、産地間の安売り競争をあおるもので、価格破壊と買いたたきを招き、米価が下落すればさらに減反を強化する地獄のサイクルへと陥りました。

 民主党政権は、「米改革」にもとづく市場原理をさらに徹底する道を進みました。農産物の完全な輸入自由化を前提に、価格保障なしの戸別所得補償制度を実施して米価暴落を放置し、100万トン備蓄に大穴をあけてしまいました。

 米価の下落防止や価格安定対策の要求に対して、政府は「米価は市場が決める」としてまともに取り合おうとはしませんでした。しかし、米価を決める「市場」は、いったいどこにあるのでしょうか。民主党政権は「コメ価格センター」を廃止してしまいました。代わりに全農などと卸の相対取引価格を調査し、1カ月半後に公表していますが、先行きを知りたい関係者には何の役にも立ちません。超大手卸のサジ加減一つで米価を自由自在に操れる「卸間売買」や、すでに取引所の閉鎖が決まっている先物取引を市場と見ているのでしょうか。公平で透明性のある米の「市場」はどこにも存在しません。まともな市場もないのに「市場原理」に丸投げしている現状は、米政策の無責任さの象徴ともいうべきものです。

 農家の田んぼは1枚1枚を厳密に管理し、需給調整の責任を負わせながら、米の流通はまったく野放しにするのは理不尽であり、「米改革」路線の破綻は明白です。この路線と決別し、米の需給と価格の安定に政府自ら責任を持つ政策への転換をはかるべき時です。

 農民連は、世界でもまれに見る生産性の高い日本の田んぼをフルに活用し、真に自給率向上の道に進むため、次のように提案します。

(1)米政策の最大の障害のひとつであるミニマムアクセス米を廃止すること。

(2)主食用、加工用、新規需要米も含めて国産で必要量を満たすため、思い切って増産に取り組むこと。

(3)米の大本を国が管理し、需給にゆとりを持たせ、少々の過不足でも米価の安定をはかる仕組みを構築すること。

(4)主要穀物を含めて、国が管理に責任を持つ政策への転換はかること。

(新聞「農民」2012.11.19付)
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2012年11月

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