米を守る農民連の要求と提案
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輸入汚染米事件以来、米業者は主食用の輸入米からいっせいに手を引き、わずかに出回る輸入米は外食産業などでこっそり使用されてきました。ところが2012年春、スーパーの「西友」が公然と中国産の販売を始め、牛丼の「松屋」「吉野家」などが相次いでオーストラリア産やアメリカ産の利用を始めました。また、9月25日実施の今年度第1回目のSBS入札ではアメリカ、オーストラリア、中国の米が国産米を上回る高値で落札されました。一部の米業者は10万トンに限定されている主食用米輸入の「増枠」を要求しています。いずれも国産の低価格米の不足を口実にしていますが、国民の輸入米アレルギーの払拭とTPP参加への地ならしを狙うものです。
しかし、9月に“アメリカ産米がヒ素汚染”という衝撃的なニュースが伝わりました。アメリカの消費者団体が発行する「コンシューマー・リポート」が、国内の米製品を調査した結果、その多くに高いレベルのヒ素が含まれており、1日1回米を食べると44%、2食で70%も体内のヒ素濃度が上昇すると発表し、米の摂取を1週間に1合以下(120ミリリットル)に抑えるよう勧告しました。輸入米に対して国は厳しく検査すべきです。また、国民あげて輸入米を監視する取り組みが求められています。
農民連は次のように提案します。
(1)主食の需給と価格に影響を及ぼすSBS制度をただちにやめること。
(2)「輸入は義務」とした政府統一見解を撤回し、必要のない米は輸入しないこと。
(3)国家貿易の仕組みは維持すること。
農民連は「安全な食糧は日本の大地から」「輸入米ノー」の世論を広げ、こうした要求の実現のためにたたかいます。
しかし、戸別所得補償制度で加工用米の交付金は10アール2万円と低いため、同8万円の飼料用米や米粉用米に押されて作付けが減少しています。2011年産は前年の72%の生産にとどまり、酒造業界は必要量の半分程度しか確保できないと言われるほど深刻です。
圧倒的な国民が「原料は国産で」と求めているにもかかわらず、国産米の不足と価格の上昇で、再び輸入米にUターンさせることがあってはなりません。そもそも2020年までに米粉用米の生産目標は50万トン、飼料用米は70万トンと設定されていますが、加工用米は目標すら設定されていません。政府は、「加工用米は外国産」と考えているのかと言わざるをえません。
加工用米の農家手取りは助成金と販売代金を合わせて1万1500円程度で、主食用米に比べ相当見劣りするのが実情です。加工用米の生産量を確保する最善の道は、主食用米並みの所得を補償することです。実需者団体は政府に対し、“加工用米にも飼料用米並みの交付金を出すべきだ”と要求しています。この要求は生産者、米業者、そして国産を望む消費者・国民の共通の要求です。実需者が希望する量を国産で確保できるよう、政府は緊急に対策をとるべきです。
また、飼料用米や米粉用米は交付金は多いが、生産の増大に需要が追いつかず、飼料米の米代はタダに近く、米粉用米は1キロ20円などの問題をかかえています。世界的に穀物需給がひっ迫するもとで、飼料用米も小麦代替の米粉用米もむしろ大増産が必要であり、政府は需要の拡大のための具体策を講ずるべきです。
主食以外の米作りは助成金がバラバラなうえに、政府が責任を放棄し、「民間どうしの契約」にゲタをあずけています。その一方、流通の追跡調査に膨大な公務員を投入するなど、複雑であまりにも不合理です。
主食用米とともにあらゆる分野の米の安定的供給に国が責任を果たすべきです。備蓄米の運用とリンクして、一元的に管理する新たなシステムを検討すべきです。
2011年8月から始まった先物取引は、1日で60キロあたり2000円も変動する乱高下を繰り返した揚げ句、日を追うごとに停滞し、目標の10分の1から20分の1程度にとどまっています。米業者や米農家の参加が得られず、投機家からも見放され、同じ取次業者が売り買いを繰り返して、実績を取りつくろっているのが実態です。
その結果、もくろみがはずれた東京の取引所は、経営危機から閉鎖・廃業に追い込まれました。農水省は見当違いの認可をしたうえに「試験上場には認可取り消しの条項がない」として事態を放置し、大阪の取引所への統合を容認する姿勢です。取引の停滞が明確になった2011年12月、農水省はホームページ上で東京・大阪両取引所の情報提供を始めるなど、あくまで先物取引を存続させる構えでいますが、もはや認可の誤りは明白です。
試験上場認可は2年を待たずにただちに取り消し、拙速に認可した農水省の責任を明らかにすべきです。
[2012年11月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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