「農民」記事データベース20120312-1012-08

TPP反対の一点で
国民的共闘の大きな波を
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安心・安全の国民医療の
崩壊を招くTPP反対

全国保団連・事務局次長 寺尾 正之

 医療品価格決定の仕組み見直し

画像 TPPには、国民皆保険医療を崩す「仕掛け」が入っています。

 一つは、薬の混合診療です。アメリカは新薬の価格をさらに引き上げるため、医薬品の価格を決める仕組みを見直すよう求めています。すでにアメリカの製薬企業は、オーストラリアやニュージーランドに対しても同じ要求を突きつけています。

 実は、日本でも1997年の「規制改革会議」のなかで検討されたことがありました。政府が決める公的な価格の薬より値段が高い薬を使った場合には、その差額を患者が負担するというもので、これがまさしく公的医療に私的医療を持ち込む“混合診療”にあたるわけです。日本の医薬品の市場は10兆円です。アメリカはまさにもうけの市場をねらっているわけです。

 病院の経営に営利企業を参加

 二つ目は、病院の経営に営利企業を参加させることです。アメリカは日本に、「外国の企業を含む営利企業が病院の運営をできるよう認可せよ」と求めています。営利企業は利益を出資者に配当するため、採算が上がらない部門を切り捨てたり、地方から撤退したり、お金持ちの患者を優先したり、安全・安心の医療を低下させます。

 TPPに参加しなくても「特区」で認める可能性があります。すでに「国際戦略総合特区」(7地区)や「地域活性化総合特区」(26地区)が定められ、そのなかには「先端医療総合特区」(静岡市)や「国際医療交流特区」(大阪・泉佐野市)などがあります。また、政府の「行政刷新会議」でも、営利企業の役員が医療法人の役員を兼務できることや、医療法人の剰余金配当を認めるという「中間報告」をまとめています。以前、小泉「構造改革特区」で1例だけ営利企業が病院経営をしたことがありましたが、倒産しました。なぜかというと、すべて私的で自由な診療だったからです。公的医療をベースにして自由診療をしないと利益は出ないということです。

 国民皆保険医療なくなる危険も

 最後に、TPPに参加したらすぐにも混合診療になって国民皆保険が崩れてしまうわけではありません。TPPに参加するハードルは低くしておいて、徐々に高めて「いつでも、誰でも、どこでも」受けられる国民皆保険医療ではなくなる危険があります。厚労省は例外として「先進医療」に混合診療を認めていますが、その実績は全体のわずか0・047%にすぎません。アメリカはここを10%、20%にしろといっているわけです。

 公的給付を削減し、高まる医療サービスの需要には自己負担・自己責任という「医療の市場化・営利化」は、まさに野田内閣の「社会保障と税の一体改悪」そのものです。つまり、根はいっしょです。医療界あげて、TPP参加を断念させる運動をいままで以上に強めていかなければなりません。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2012.3.12付)
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2012年3月

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