「農民」記事データベース20111031-995-11

食糧主権、アジアの経済と
農業を破壊するFTA・TPP
(4/4)

さらなる運動と連帯で新自由主義に対抗し、
公正で正義あるルールを!

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連帯、真の協力、相互補完性
ALBA(アルバ)に見る公正な貿易

日本AALA常任理事
新藤 通弘さん

画像 アメリカは1990年代、南北アメリカ大陸をすべて自由貿易圏にするというFTAA(米州自由貿易圏構想)を推進し、その最初としてアメリカ、カナダ、メキシコでNAFTA(北米自由貿易協定)を結びました。NAFTAでも新自由主義にもとづいて労働市場や農産物市場の自由化が進められました。

 日本でのTPPをめぐる議論と同様に、メキシコでもNAFTA加入時には“経済が発展する” “雇用が増える”と宣伝されました。しかし、加入後の2009年の経済成長率はラテンアメリカで最下位に落ち、雇用者数も減り、農産物の貿易赤字は20億ドルから60億ドルに拡大し、食料輸入は4倍に激増、農業人口は300万人も減ってしまいました。

 新自由主義でなく

 メキシコのこの姿を見て、新自由主義ではない、自分たち独自の経済協力をしようと、2004年にラテンアメリカの12カ国でつくられたのがUNASUR(南米諸国連合)です。このなかには保守的なコロンビアやペルー、チリも含まれていますが、こうした国も新自由主義の弊害を見て加盟しました。これは大きなできごとです。UNASURの理念には、新自由主義で破壊された連帯、協力、平和、民主主義が盛り込まれました。おもしろいのは反核や中小企業、協同組合への配慮も盛り込まれていることです。

 国民間の協力こそ

 その後誕生したALBA(米州諸国民ボリーバル同盟)では、さらに理念を深めようと、ベネズエラのチャベス大統領が連帯、互恵、真の協力、技術移転、資源の節約、そして加盟国間の補完性を提唱しました。しかも連帯と協力は、加盟国間だけでなく各国内の国民の間でも必要だと提案したのです。

 ALBAのもう一つの特徴が、加盟国間で互いに足りないものを補い合う相互補完性です。たとえば石油資源のない国にベネズエラから石油を輸出する際に、支払いを長期猶予したり低利子にするなどです。でもベネズエラは、こうした資金力で他国に干渉したり、立場を押し付けたりしたことは一度もありません。

 TPP、FTAAはなぜ良くないのか。経済協力のオルタナティブとしてあるべき姿を考えてみると、まず重要なのは、市場万能主義はもうだめだということです。市場万能主義の新自由主義はもう世界中で破たんしています。加盟国間の、そして国民間の連帯と協力こそが必要だと思います。

 それから重要なのが、相互補完性です。中小企業、農業を守らなければいけません。連帯と協力を理念にしたALBAでも、各国の食糧主権を守り、食料自給率の向上を掲げています。

 地球考えた発展を

 自然環境の問題もあります。TPPへの参加で、「とにかく競争に負けてはだめだ。産業を伸ばして経済成長しなければだめだ」といいますが、昨日はアイフォーンを買って、今日はトヨタのハイブリッドを買って…と、どんどん消費する生活を地球の70億人全員がしたら、地球は持ちません。もっと地球を考えた持続的発展をしようということです。

 貧富の差が一方的に開いていくのは、持続的な社会ではありません。母なる大地を大切にして、次の世代に継承していくことが必要です。「TPPで第3の開国をする」などと言わずに、私たちの経済成長の考え方、生活を根本から変えていくところに、経済統合のあるべき姿があるのではないでしょうか。

(新聞「農民」2011.10.31付)
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2011年10月

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