「農民」記事データベース20111031-995-08

食糧主権、アジアの経済と
農業を破壊するFTA・TPP
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さらなる運動と連帯で新自由主義に対抗し、
公正で正義あるルールを!

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最も不公正で屈辱的な韓米FTA
全アジアへ拡大がアメリカの狙い

 韓国全国農民会総聯盟
イ・チャンハンさん

画像 WTOは関税を引き下げる内容でしたが、FTA・TPPは関税の撤廃が中心です。そして相手国の制度や法律にまで関与することが特徴です。韓米FTAがアメリカ議会を通り、あとは韓国議会での批准を残すのみで、韓国では今たいへんな状況になっています。

 まったくのウソだ

 韓国政府は、同時多発的にいろいろな国々とFTAを推進していますが、アメリカとのFTAは史上類例のないものであり、最も不公正で最も屈辱的なものです。

 韓国政府は、韓米FTAによってGDPが6%成長し、雇用を35万人創出して韓国に利益をもたらすものだと大々的に宣伝してきました。しかし、政府が根拠としていた数値が間違っていたため、まったくのウソだということが証明されました。日本でも数値そのものがまやかしなんだということをはっきりさせていくことが必要です。

 農業分野でいうと、1531の品目のうち、米を除いてすべて15年以内に関税を撤廃しなければなりません。そのうち10年以内の品目もたくさんあるし、35%の品目は協定が発効したら即時関税が撤廃されます。このような協定はこれまでにありませんでした。

画像
熱心に各国代表の報告を聞くフォーラム参加者

 農業分野の被害がもっとも大きいことは政府も認め、農家に被害補償を行うと盛んに言っています。しかし、韓米FTAによって農業の根底が崩される時に、被害補償で問題をすりかえられるものではありません。だから、韓国の農民はいつも先頭に立って熾烈にたたかってきました。私たちはこの5年間の反対闘争のなかで、どれほど血と汗と涙が必要なのかということを身にしみて感じています。だから韓米FTAは、必ず阻止する決意です。

 腹立つ「毒素条項」

 韓米FTAには、だれもが驚くようなたくさんの「毒素条項」が入っています。一つは「ラチェット条項」で、その意味は「のこぎりの歯」。つまり一方方向しか進めず、後戻りできない条項のことです。一度開放したら修正できない、開放し続ける内容です。つぎに、「サービスのネガティブ方式」で、開放から除外する品目を決めてほかの品目はすべて開放するというやりかたです。だから、たとえば新しいサービスが生まれたとしても、品目に羅列されていないのですべて開放の対象になってしまいます。

 また、「未来最恵国待遇」というのがあるのですが、これは将来、韓国が他国とFTAを結んだ時に、アメリカよりも有利な項目があったら、さかのぼって韓米FTAにその有利な条項をあてはめるというものです。「ISD条項」は、FTAに違反していなくても相手国を提訴できるという条項で、韓国の政府や地方自治体がアメリカの多国籍企業によって国際機関に訴えられ、アメリカの企業に損害賠償を支払わなければならなくなります。あといくつか「毒素条項」がありますが、話していると腹が立ってくるのでもうやめます。

 全く同じ危険に

 アメリカのねらいは、韓米FTAはテストケースであり、これをアジア地域に広げようというものです。TPPの本質はまさにそこにあります。だから、TPPに対抗するために、韓米FTAをよく研究してください。韓国と日本の民衆はまったく同じ危険にさらされています。今後、各国でたたかうことも大事ですが、お互いが連帯してたたかうことはもっと大事になってきます。

(新聞「農民」2011.10.31付)
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2011年10月

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