田畑と自然を汚し 生活の糧を奪った東電は全面的に償え(4/4)
やせ細り 出る乳量少なく請求書たまるし、収入はガタ減り水戸市の旧内原町で酪農を営む浅井富枝さん(61)は、夫と息子の3人で約40頭の牛の世話に忙しい日々を送っています。3月11日の地震で牛舎は停電に。翌日の午後に復旧するまで水も止まりました。その間、乳も搾れず、水もやれず、浅井さんは今でも、一晩中聞こえてきた牛の鳴き声が耳に焼きついているといいます。自家発電を利用して何とか搾乳もできるようになりましたが、集乳にきた人から唐突に「明日から搾った牛乳は捨ててください。製品化できないので」と言われました。
搾った牛乳を畑に捨てに行く集乳車はガソリン不足で来られず、紙パック製造工場も停電で稼働できないのです。追い打ちをかけるように、鹿島地域のコンビナートが津波と停電でやられて、配合飼料が供給できなくなりました。えさの量を減らさざるをえず、えさをねだる牛が1日中鳴いていました。牛はみるみるうちにやせていき、牛乳も出る量が少なくなっていきました。地震から10日余り。えさのめどもつき始め、「さあこれから再出発」というときにストップをかけたのが、原発事故です。県内の酪農家から基準を超える放射性物質が検出され、茨城の原乳は出荷停止になりました。 えさの量を半分に減らして、1日2回の搾乳を1回に抑えました。搾った牛乳は、近くの畑に捨てざるをえませんでした。しかし脂肪分が含まれているので、地下にすべてがしみ込まず、陽気がよくなるとにおいも強くなりました。捨てきれない仲間は産廃業者に、キロあたり10円から20円払って廃棄を頼んでいたといいます。 4月10日に出荷制限は解除になりましたが、手放しでは喜べません。その間、資材や飼料代、燃料費などの請求書はたまる一方でした。3月分の支払いは4月末。3月11日以降の収入がなかった分は、10日までの「みなし乳量」を基準にして酪農団体などから支払われることになります。それでも通常の収入よりは低くなってしまいます。 また、えさを減らしていたため、搾乳量は以前のようには戻らず、地震前の6割程度といいます。その分、収入も減っています。 浅井さんは「原発事故で受けた損害と収入が減った分を、東電はすべて弁償してほしい」と憤ります。
(新聞「農民」2011.5.2付)
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[2011年5月]
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