「農民」記事データベース20110502-971-09

田畑と自然を汚し 生活の糧を奪った

東電は全面的に償え(3/4)

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育てた野菜、胸張って売りたい

出荷の最盛期に停止の知らせ

 茨城県では3月19日に、ホウレンソウから暫定規制値を超える放射性物質が検出され、出荷停止になりました。稲敷市の野菜農家、四ツ谷和之さん(30)は、弟の仁和(まさかず)さん(27)、母の律子さんらとホウレンソウをはじめ、ニンジン、ジャガイモなどを作っています。

 ホウレンソウは、3、4月が出荷の最盛期。本来ならば1日5000束、金額にして40〜50万円は稼ぐはずでした。冬の低温を何とか乗り切り、「これから一気に挽回しよう」としていた矢先に、作付け禁止、出荷停止の知らせがありました。

 収穫してあったホウレンソウは、保冷庫に詰め込みましたが、すぐにいっぱいに。多くは、畑に穴を掘って捨てました。さらに収量を上げようと今年から始めたハウスのホウレンソウは、手をつけられずそのままに。3週間ほどたったときには、雑草が生え放題になりました。

 出荷できない間も、資材や肥料代はかさみ、パートさんへの給料も払えない事態になっています。

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ハウスのホウレンソウは雑草だらけ。左から四ツ谷仁和さん、律子さん、和之さん

 4月17日に、ホウレンソウの出荷制限は解除になりました。しかしその間の収入はないままで、借金だけが増えています。

 農協からは「出荷しても値がつかない」と言われ、作付けしてあるものは、すべて刈り取り、1カ所に置いておくように指示されています。結局、作付けしてあるものはそのまま放置され、春作のホウレンソウの作付けはあきらめざるをえません。

 四ツ谷さんは訴えます。「東電は、原発事故の被害を早く収束させ、全損害の完全な賠償を一刻も早くしてほしい。おれたちは、放射能に汚染されたものでなく、丹精込めて育てた野菜を胸張って売りたいんです」


安全安心の努力がムダに

外国人研修生が農場を去る

 四ツ谷さんも参加し、県内の若手でつくる農家グループ「カルティベイト」は「茨城の農家を元気にしよう」と8年前に結成されました。代表を務める鈴木泰幸さん(36)は石岡市でホウレンソウ、小松菜などを栽培しています。3週間ほど出荷できない時期が続き、損失額はホウレンソウだけで300万円にのぼりました。

 鈴木さんは、4月5日に茨城農民連が水戸市で行った、東京電力茨城支店への賠償請求行動に参加。「安全・安心を売り物に農産物を作っているが、放射能汚染でその努力がむだになってしまう。消費者にどう説明すればいいんだ」と怒りをぶつけました。

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東電茨城支店に訴える鈴木さん(左)

 「カルティベイト」は9日に、土浦市で30人が集まって定例の異業種交流会を開き、鈴木さんが「原発事故による風評被害を吹き飛ばし、ポジティブ(前向き)に考えて、茨城の農産物をアピールしよう」とあいさつしました。

 参加した農家から「宮城や岩手に農産物を届けよう」という訴えがあり、物資を運ぶ2トン車提供の申し出もあるなど、茨城の若者は元気いっぱいです。

 土と水にこだわり、微生物の働きを活用しながら鉾田(ほこた)市でメロンを栽培する「カルティベイト」メンバーの方波見(かたばみ)洋一さん(41)も原発事故の被害者です。雇っていた中国人研修生は7人全員が、放射能汚染を恐れて農場を去りました。

 方波見さんは「温度管理や水管理で半年かけて、心を込めて育てています。風評被害は心配ですが、消費者の笑顔を思い浮かべながら安心・安全なメロンを作り続けたい」と、原発事故に負けずに生産に励んでいます。

(新聞「農民」2011.5.2付)
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2011年5月

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