田畑と自然を汚し 生活の糧を奪った東電は全面的に償え(3/4)
育てた野菜、胸張って売りたい出荷の最盛期に停止の知らせ茨城県では3月19日に、ホウレンソウから暫定規制値を超える放射性物質が検出され、出荷停止になりました。稲敷市の野菜農家、四ツ谷和之さん(30)は、弟の仁和(まさかず)さん(27)、母の律子さんらとホウレンソウをはじめ、ニンジン、ジャガイモなどを作っています。ホウレンソウは、3、4月が出荷の最盛期。本来ならば1日5000束、金額にして40〜50万円は稼ぐはずでした。冬の低温を何とか乗り切り、「これから一気に挽回しよう」としていた矢先に、作付け禁止、出荷停止の知らせがありました。 収穫してあったホウレンソウは、保冷庫に詰め込みましたが、すぐにいっぱいに。多くは、畑に穴を掘って捨てました。さらに収量を上げようと今年から始めたハウスのホウレンソウは、手をつけられずそのままに。3週間ほどたったときには、雑草が生え放題になりました。 出荷できない間も、資材や肥料代はかさみ、パートさんへの給料も払えない事態になっています。
4月17日に、ホウレンソウの出荷制限は解除になりました。しかしその間の収入はないままで、借金だけが増えています。 農協からは「出荷しても値がつかない」と言われ、作付けしてあるものは、すべて刈り取り、1カ所に置いておくように指示されています。結局、作付けしてあるものはそのまま放置され、春作のホウレンソウの作付けはあきらめざるをえません。 四ツ谷さんは訴えます。「東電は、原発事故の被害を早く収束させ、全損害の完全な賠償を一刻も早くしてほしい。おれたちは、放射能に汚染されたものでなく、丹精込めて育てた野菜を胸張って売りたいんです」
安全安心の努力がムダに外国人研修生が農場を去る四ツ谷さんも参加し、県内の若手でつくる農家グループ「カルティベイト」は「茨城の農家を元気にしよう」と8年前に結成されました。代表を務める鈴木泰幸さん(36)は石岡市でホウレンソウ、小松菜などを栽培しています。3週間ほど出荷できない時期が続き、損失額はホウレンソウだけで300万円にのぼりました。鈴木さんは、4月5日に茨城農民連が水戸市で行った、東京電力茨城支店への賠償請求行動に参加。「安全・安心を売り物に農産物を作っているが、放射能汚染でその努力がむだになってしまう。消費者にどう説明すればいいんだ」と怒りをぶつけました。
「カルティベイト」は9日に、土浦市で30人が集まって定例の異業種交流会を開き、鈴木さんが「原発事故による風評被害を吹き飛ばし、ポジティブ(前向き)に考えて、茨城の農産物をアピールしよう」とあいさつしました。 参加した農家から「宮城や岩手に農産物を届けよう」という訴えがあり、物資を運ぶ2トン車提供の申し出もあるなど、茨城の若者は元気いっぱいです。 土と水にこだわり、微生物の働きを活用しながら鉾田(ほこた)市でメロンを栽培する「カルティベイト」メンバーの方波見(かたばみ)洋一さん(41)も原発事故の被害者です。雇っていた中国人研修生は7人全員が、放射能汚染を恐れて農場を去りました。 方波見さんは「温度管理や水管理で半年かけて、心を込めて育てています。風評被害は心配ですが、消費者の笑顔を思い浮かべながら安心・安全なメロンを作り続けたい」と、原発事故に負けずに生産に励んでいます。
(新聞「農民」2011.5.2付)
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[2011年5月]
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