“変革の時代”を切り開く
農業・農山村を再生する
国民運動と、強固な組織づくりを(3/4)
2010年1月18日 農民連常任委員会
関連/“変革の時代”を切り開く 農業・農山村を再生する国民運動と、強固な組織づくりを(1/4)
/“変革の時代”を切り開く 農業・農山村を再生する国民運動と、強固な組織づくりを(2/4)
/“変革の時代”を切り開く 農業・農山村を再生する国民運動と、強固な組織づくりを(3/4)
/“変革の時代”を切り開く 農業・農山村を再生する国民運動と、強固な組織づくりを(4/4)
II 方針の補強
(1)新たな情勢のもと農民連の役割と運動の基本スタンスについて
今、農民運動に最も求められるのは、第1に、国民が切望する食料自給率の向上や食の安全・安定供給、農村の衰退に歯止めをかけ、地域再生の担い手として生産の拡大の先頭に立つことです。
第2に、自公政治にノーの審判を下した農民や国民のエネルギーと連帯し、一致する要求と政策の実現、日本農業と農民経営を脅かす政策に反対してたたかうこと、特に農協との一致点での共同の発展を重視し、広範な農林漁業団体、生協などとの連携を広げることです。
第3に、農民連が掲げる要求や政策が広範な人たちと共感しあえる時代となり、生産や販売の要求実現や農山村の再生のためにも農民連の役割の発揮が今ほど求められているときはありません。「農業でがんばる人はみんな農民連へ」を合言葉に、大きな構えですべての農家に働きかけ、あらゆる運動に組織作りを貫いて会員と新聞「農民」読者拡大を大飛躍させることです。
(2)農政の“2つの焦点”に対する国民運動の展開
鳩山政権の戸別所得補償政策への失望が広がっています。また、買いたたきによる農産物価格の下落は深刻化しており、これを規制しない政治に農民の怒りが広がっています。いま農民の最大の要求は、価格保障と所得補償を組み合わせた農産物の価格政策であり、実現の運動が焦点となっています。
一方、WTO交渉や日米FTAの推進を公約した鳩山政権のもとで、今年末の合意をめざすWTO交渉は重大な山場を迎え、日豪EPAも重大局面となります。また、鳩山首相が提唱した日中韓FTAに加えて、アメリカや中国、オーストラリアを含むアジア太平洋FTA構想も急浮上しており、農産物の輸入自由化を阻止するたたかいが今年の大きな焦点になっています。
1、あらゆる農産物価格の下落を打開する突破口として「米価闘争」の展開
米戸別所得補償モデル事業を見越して、米価引き下げを求める大手米卸の動きがあり、さらなる米価引き下げの要因にされる可能性があります。
野菜や果樹、畜産などの価格対策に全力をあげつつ、米価を突破口に戸別所得補償制度を乗り越えて、価格保障を基本にした経営安定対策を実現させることが重要になっています。また、ミニマムアクセス米、特に主食用に回されているSBS米(10万トン)を中止させる運動に力を尽くします。
こうしたたたかいを“米価闘争”と位置づけて全国的に展開し、政府に対してゆとりある備蓄の確保と価格に影響を及ぼす買い入れや棚上げ備蓄の実現を求め、戸別所得補償の実施を口実にした買いたたきの監視と規制を要求してたたかいます。大手量販店や業界団体に対する要請行動も行います。
食料・農業・農村基本政策審議会の食糧部会が開かれる3月末、6〜7月、でき秋の3段階で全国的な行動の展開を呼びかけます。
2、WTO、FTA・EPAを許さない国民運動の展開
輸入自由化阻止の運動は、最も共同が可能な課題です。WTO合意に向けた閣僚会議がいつ行われても対応できるようにするとともに、地方・中央で「自由化ノー」の共同運動を展開し、11月に横浜市で開かれるAPEC首脳会議に呼応して大規模なデモンストレーションを展開します。APEC貿易相会議(6月・札幌)を皮切りに、農相会議(10月・新潟)など地方都市で開催されるAPEC閣僚会議でも可能な共同行動を展開しましょう。
すべての議会での採択をめざすFTA・EPA反対の議会請願、署名運動、意見広告などに取り組みます。
国政選挙時に発行してきた「農民」号外を前倒しして大量活用をはかります。
3、自由化阻止・米価闘争募金の取り組み
“2つの焦点”とのたたかいは、今後の日本農業を大きく左右するものであり、大きな構えで展開することが求められます。都道府県連と本部のたたかいを支えるための募金運動を行います。
(3)自治体への働きかけと自治体農政確立運動
「農業振興条例」を制定させ、予算と実効力のある対策を要求します。改悪農地法が施行されるもとで、企業の農業参入が加速されようとしています。利潤最優先の大企業参入を地域ぐるみで跳ね返す運動とともに、助け合って生産を拡大し、農地を維持する取り組みが決定的に重要になっています。企業参入を監視する農業委員会と連携し、その機能強化を要求して運動を強めます。
(4)都市農業、中山間地対策
国土交通省で都市農地の位置づけを転換する動きがあるなかで、審議会答申の精神を農政や税制にいかし、宅地並み課税の廃止や都市農業振興策の確立を求める運動が重要になっています。また、地産地消など市民ぐるみの運動も重要になっています。
中山間地では、高齢化と担い手不足、鳥獣被害など多くの困難を抱えています。中山間地の直接支払い制度を充実させるとともに、社会政策として人の住める山村にするための支援を要求します。鳩山内閣が「事業仕分け」で鳥獣被害対策を地方に押し付けようとしていることは許されません。鳥獣被害をなくすための根本的な対策と当面の対策が必要であり、十分な予算措置を要求して運動を強めます。
(5)要求運動について
1、生産と販路を広げる運動の重点
農民の最も本質的な要求である生産の拡大は、農民と農村に活力をもたらし、地域を元気にするカギです。生産の拡大と結んで食品加工など多様な産業をおこすことは、日本経済を外需頼みから内需中心に転換し、地域循環型に変えるうえで決定的に重要な課題となっています。
(1)「準産直米」の取り組み
「準産直米」を全国ネットワークの要として、米流通に影響をあたえる規模に発展させることはますます重要な課題です。広範な農家に働きかけて組織的結集をはかるとともに、農協や集落営農組織などとの共同事業として発展させましょう。
(2)多様な産直の発展
すべての組織が地域で朝市や直売所、インショップ、旅館や飲食店など、地域のあらゆる消費の場面に、地場産の農産物を提供する地域ぐるみの取り組みを広げましょう。学校・保育所などの給食を地産地消・食農教育として重視します。また首都圏などの学校給食への食材の提供をふるさとネットワークの重要な課題として発展させましょう。組織内産直として、東北のりんごと九州のみかんの「ふるさと便」が初めて取り組まれました。この「ふるさと便」を発展させましょう。引き続き、新婦人産直を発展させましょう。
(3)自給飼料、米粉などの生産
輸入飼料の価格が再高騰しているなかで、輸入飼料の動向に左右されない畜産経営を確立するためにも、自給率を向上させるためにも、国産飼料への転換をはかることが急がれます。米粉とあわせて、「水田利活用自給力向上事業」の助成も活用して耕畜連携による飼料米生産に大いに取り組みましょう。
(4)安全・安心な農産物を生産する運動、食品分析センターの取り組み
食の安全を求める国民の要求にこたえて、安全・安心な農産物を生産して国民に提供する先頭に立ちましょう。食品分析センターの役割はますます重要になっています。農民連加盟組織が、分析センターを積極的に活用して残留農薬検査を定期化し、農産物の安全性を証明できる体制を確立しましょう。また、学校給食の安全チェックなど市民運動との提携を広げ、分析センターが食の安全の“相談所”としての機能を発揮できるようにすることが求められています。輸入農産物の安全性の監視を強めます。引き続き、専門家の力も借りて法人化に向けた検討を行います。
2、多様な要求に基づいた運動
(1)重税阻止と自主計算・集団申告の運動
鳩山内閣は、4年間は消費税率を引き上げないと公約したものの、軍事費と大企業・資産家減税に手を付けないために財源確保が行きづまり、消費税率の引き上げをはじめ、国民増税のねらいを強めています。消費税率の引き上げを許すなら、暮らしと経営が重大な困難に直面させられ、日本経済がさらに困窮することは必至です。消費税率の引き上げや人的控除の廃止・縮減を許さない運動に全力をあげましょう。
また、家族労賃を認めない所得税法56条の廃止を実現する運動にも取り組みましょう。
確定申告に出足早く取り組み、会員拡大の大飛躍に結実させましょう。また、「春の大運動」だけの取り組みから脱皮するため、確定申告が終わったらただちに記帳簿の普及と相談員の系統的な育成を進めましょう。すべての組織が税金を運動の柱に据えて取り組めるようになることは、運動と会員拡大の飛躍にとって不可欠です。農家の切実な要求である固定資産税の負担を軽減させる運動に取り組みましょう。
(2)後期高齢者医療制度の廃止、国保税・介護制度の改善を求める運動
後期高齢者医療制度の即時廃止を求めてたたかいます。払える国保税への引き下げ、保険証の取り上げを許さない、出産手当の拡充、老年者控除の復活や公的年金控除の拡大などとあわせ、国保税への国庫負担の増額や自治体に減免を要求する運動を進めます。
3、地球温暖化防止の運動
農業は温暖化で最も直接影響を受けています。昨年12月にデンマークで開かれた国連気候変動枠組み条約第15回締結国会議(COP15)では、法的拘束力のある国際協定に合意することができなかったのは残念でしたが、鳩山政権が約束した2020年までに25%の削減を実現させるために、大口排出源の規制をはじめ国内対策の実施を要求して運動を強めます。また、食糧の外国依存を減らして食料自給率を向上させることが温暖化防止に役立つことを大きく打ち出し、この角度からも農政の転換を求めましょう。
暮らしや生産、流通のなかで温暖化対策の実践が求められます。低コスト、環境負荷を減らす多様な取り組みを話し合い、政府や自治体に支援策を要求しましょう。公害地球環境問題懇談会を軸に共同を広げ署名を広げましょう。
4、林業、漁業を守る運動
林業の再生は山間地の活性化、雇用と地域経済の再生、温暖化対策からも重要な課題です。また、漁村の活性化と食料自給率の向上にとって漁業の振興も重要な課題です。林業、漁業の再生をはかるために関係団体との共同を広げ、従事者の組織化も視野に入れて取り組みを進めましょう。
(6)国際連帯
日本がFTA・EPA締結の対象としている国のビア・カンペシーナ傘下の農民組織との連携を重視した国際交流を行います。09年から定期交流を始めた韓国の農民組織との交流を重視します。
(7)結成20周年を迎える食健連運動の前進を
食と農を守る国民合意と共同を広げることが求められている中で、結成20周年を迎える全国食健連の組織と運動を飛躍させることが重要です。すべての都道府県と単組に対応した地域食健連を確立し、草の根から食と農を守り地域を元気にする運動を展開しましょう。
(8)平和、憲法、環境、暮らし守る運動、参院選挙など
1、核兵器廃絶の運動を強めよう
核兵器廃絶が国際政治の重要な課題となり、被爆国である日本の運動をさらに強めることが求められています。今年5月に、ニューヨークの国連本部で開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議の動向も注目されています。草の根からの運動を強め、本部と地方から代表を派遣します。
被爆の実相を世界に広げるために、原爆パネルをビア・カンペシーナ傘下の各国農民組織に贈って原爆展を呼びかけます。
2、改憲阻止、米軍基地撤去、「軍事費を削って暮らしにまわせ」の運動
総選挙の結果は、改憲勢力に重大な打撃をもたらしました。「9条の会」をはじめとする運動の成果です。同時に、鳩山内閣が憲法解釈を勝手に変えて自衛隊の海外派兵と武力行使を可能にするための国会法改悪案が提出されようとしていることは重大です。国会法改悪を許さず、憲法9条、25条を守り、いかす運動をさらに強めましょう。
米軍が沖縄の農民に銃剣を突きつけ、ブルドーザーで農地を奪って米軍基地をつくってから60余年、いまだに爆音と犯罪を繰り返し、沖縄県民の命と財産を危険にさらしています。普天間基地をはじめ、「米軍基地はアメリカに帰れ」の運動を強め、鳩山内閣に毅然とした対応を迫ります。今年は日米安保条約が改定されてから50年の年です。条約廃棄の世論を多数派にするために運動を強めましょう。
大量の非正規切りをはじめ、解雇・リストラで兼業農家が職を失う深刻な状況が広がっています。兼業農家の無法な雇用を許さない運動は、労働者の権利擁護はもとより、地域の農業と経済を守るためにも重要です。また、改悪農地法による企業参入が促進されようとしているなかで、地元農民や外国人労働者が劣悪な条件で雇用される状況の広がりが予想されます。こうした問題に地域の労働組合などと共同して取り組みましょう。
3、要求実現と政治を前向きに前進させる参院選挙に
政権交代後、初の国政選挙である参院選挙が7月にたたかわれます。昨年の総選挙で「政治を変えたい」という審判を受けて誕生した鳩山内閣が国民に信を問うことになります。
農民連は「要求と提言」を掲げ、農民の要求が通る政治の実現と、農と食を破壊しているアメリカいいなり、大企業中心の政治を打ち破って政治をさらに前向きに前進させるためにたたかいます。
(新聞「農民」2010.2.1付)
|