「農民」記事データベース20100201-910-07

“変革の時代”を切り開く
農業・農山村を再生する
国民運動と、強固な組織づくりを(2/4)

2010年1月18日 農民連常任委員会

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(3)1年を振り返って

 1、農地法改悪とのたたかい

画像 昨年6月17日、参院本会議で自民党、公明党、民主党の賛成で農地法改悪案が可決・成立しました。農外企業や外資に対して農業への参入を自由化し、農地の所有に道を開くためのものでした。

 農地制度は、戦前の農民の命がけのたたかいの成果が実り、戦後の民主化の一環として確立されたものです。これを維持するための農地法は、日本農業の根幹にかかわるものであり、その根本にかかわる改変は、国民的な議論と合意が必要で、拙速に成立させることは許されません。成立を強行した自公民の責任は重大です。

 農地法改悪は強行されたものの、農民連・食健連を先頭にした法案阻止のたたかいは、短期間に情勢を突き動かしました。農地法改悪によって、今後、重大な矛盾と困難が農業と農村、国民にもたらされることが予想されます。利潤最優先の大企業参入を地域ぐるみで跳ね返す運動とともに、助け合って生産を拡大し、農地を維持する取り組みが決定的に重要になっています。

 2、農産物価格の下落対策を要求する運動

 09年春以降、大手量販店は「生活応援プライス」とし、玄米60キロ換算で1万円を割り込む価格で安売りを展開しました。これが09年産米の価格にも波及し、史上最低水準の米価が生産者に押しつけられています。野菜や果物、肉類や卵などの価格の買いたたきによる下落も異常なものでした。

 安売りの背景には、深刻な不況下での消費者の低価格志向や汚染米事件の心理的影響などによる消費の低迷もあります。同時に、「米改革」で流通の規制が撤廃されているもとで、政府の唯一の責務である備蓄米の買い入れを怠る一方、備蓄古米を低価格で市場に放出したり、ミニマムアクセス米の輸入を行ってきたことにあります。

 農民連は、政府が自ら決めた100万トンの備蓄水準を満たすことを基本に、緊急の米価対策を要求するとともに、新米価格の下落が明らかになって以降、市場の米のダブつき感を解消するために45万トン水準の買い入れを要求してきました。

 この間、中央行動と結んで、各地で決起集会やトラクターデモ、学習会、宣伝行動、農協・自治体要請などがいっせいに行われ、日本農業新聞に意見広告も掲載し、反響をよびました。日本チェーンストア協会(小売)や日本フードサービス協会(外食)、米卸団体に、異常な安売りによる生産現場の危機的な状況を伝え、農家の生産費や納入業者の仕入れコストを無視した低価格の強要や価格破壊は、食糧供給力や雇用、消費をさらに悪化させると指摘し、社会的責任を果たすことを強く要求しました。

 こうした運動が世論となり、農協組織にも共感が広がり、全国農協中央会が農民連と同様の要請を政府に行い、総選挙を前にして、農水省が備蓄米を買い入れる方向で動かざるを得ない状況に追い込んだことは、重要な運動の成果でした。

 しかし、当時与党だった自公の無責任さとともに、300万トンの棚上げ備蓄を公約しながら、「価格に影響を及ぼす備蓄米の買い入れ」に強く反対した民主党の態度は、きびしく問われなければなりません。米価下落対策の運動を前進させるための米価闘争募金は、農協組織をはじめ多くのところで歓迎され、運動を前進させる力になりました。こうした初めての取り組みは、今後の運動にいかすべき重要な教訓を含んでいます。

 3、都市農業を守る新たな情勢の展開

 昨年、国土交通省都市計画審議会は、都市農地を宅地や商業地への開発から、保全の方向に大転換する答申を打ち出しました。これは、市街化区域農地への宅地並み課税に反対する運動以来の都市農業を守る数十年来の運動の成果です。今後、答申の精神を農政や税制にいかし、宅地並み課税の廃止や都市農業振興策の確立を求める運動が重要になっています。

 4、生産、販路を切り開く運動

 第2回見本市を規模と質の両面で前回を上回って成功させたことは重要な前進でした。本部が呼びかけた「1組織・地域1プロジェクト運動」が、耕作放棄地を解消する運動や新たな直売所作りや加工など、豊かに実践されていることも大きな前進です。

 米価下落は農民連傘下の産直組織や、準産直米の取り組みに大きな影響を及ぼしました。こうしたなかでも全国ネットワークの力をいかし、粘り強く中小米流通業者との交流を積み上げ、前年を上回る準産直米の扱い量を確保したことは前進です。また、1年間を通して準産直米の要求での加入が相次ぎ、農協組織との共同が広がっていることも前進面です。

 5、組織作りを振り返って

 新聞「農民」は、11月現勢で7年ぶりに前年を400部余り上回ることができました。会員拡大では通年的に取り組まれるようになり、拡大数で前年を上回ったものの、退会者があって増勢に転じることができませんでした。

 各県の取り組みでは、90人を超える拡大を成功させた奈良県連をはじめ、兵庫県連などの前進は貴重な成果です。この間の特徴は、重税や国民負担増が押し付けられていることを反映して、税金や国保税などの負担を軽減する要求が切実になっていること、大規模農家や集落営農組織が準産直米や産直、直売所などの生産・販売の要求で加入していることです。

 新聞「農民」は、世界の食や環境、米価問題、食の安全など、国民や農民の関心にこたえる報道を行い、自公政治に審判を下す役割を果たしてきました。特に、農協や農業委員会関係者に一定の読者を持っていることが世論を変え、運動を前進させるうえで力を発揮しています。購読を働きかければ読者拡大を前進させることは可能であり、その頻度を増やすことが前進のカギとなっています。また、多くの組織や会員が魅力ある紙面作りに参加する努力を強めることが求められています。

(新聞「農民」2010.2.1付)
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2010年2月

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