「農民」記事データベース20080128-813-08

第一回全国委員会への報告(3/4)

第17回大会 二〇〇八年一月十六日 農民連常任委員会

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III 結成20周年を迎える   今年の重点課題(方針の補強)

〔1〕今後の運動の重点

 (1)結成二〇周年を会員と新聞「農民」の過去最高現勢を回復・突破し、すべての組織がたたかいのスタートラインに立てる組織になって迎えるために全力をあげる。その第一歩として「春の大運動」の大飛躍を勝ち取る。

 (2)国際的に食糧危機が深刻化し、財界主導の戦略や農業構造改革の見直しが避けられなくなっているもとで、食糧主権の確立を求める運動と合流し、EPA戦略や品目横断対策、米政策改革の転換、農地制度を守る運動、価格保障の実現など、農政の流れを変える運動に全力をあげる。

 (3)地域と生産を守り、担い手を作る運動と、ふるさとネットの強化・もう一つの流れを作る運動を本格的に前進させる。

 (4)憲法改悪、消費税増税を許さないたたかい、価格保障確立の運動とむすんでナショナル・ミニマムの確立を求める国民共同の運動を展開する。

〔2〕「農業構造改革」路線を跳ね返すたたかい

 1、米改革の中止、「品目横断」から価格保障へ

(1)米を守るたたかいについて
 「緊急対策」は、運動の成果の面とともに、重大な問題を含んでいます。

 第一に、米価下落の原因である米改革路線に固執し、米の需給調整を農協組織など生産者団体に押し付けていることです。そして、生産調整の厳格な実施を打ち出し、未実施者への強力な対応や、生産調整目標が未達成の都道府県や地域に「他の補助金等の採択や配分について考慮する」として、ペナルティを復活させています。

 第二に、米価に影響を与えている輸入米(SBS)を主食用に販売し、百五十万トン以上にも積みあがっているMA米の在庫一掃の要求に背を向けていることです。

 第三に、古米を七月以降、売却しようとしていることです。売却すれば〇八年産とあいまって需給が緩み、価格の再暴落は必至です。

(2)強権的な減反押しつけとのたたかい
 強制減反は食糧法を逸脱する無法・不当なもので、「米改革」路線の完全な破綻を印象付けるものです。

 具体策では、すべての稲作農家に「生産調整」への参加を押し付けるとともに、自治体へのペナルティーを公然と打ち出し、農協が生産調整非実施者の米に価格差をつけることも奨励する有様です。そして、全国、ブロック、地域にいたるまで農協や業界団体、行政が目標達成にむけた「確約書」を交わすなど翼賛体制で推し進めようとしています。

 「米改革」の破綻のリスクをすべて農家に押し付ける「米減らし」は絶対に容認できません。また、こうしたやり方は、農家や農協、業界団体との矛盾をきたし、必ず破綻するでしょう。

 強権的な減反の押しつけとのたたかいは、今年の重要な課題となります。たたかいの基本は、国際的に食糧事情が一変しているときに、わずかな米の「過剰」だけを理由に生産を減らすことを強権的に推し進める異常さを国民的に暴露することです。また、生産調整を強制するのではなく、水田を活用して他の作物の生産を拡大するために十分な支援措置を講じる「誘導策」に転換させることです。

 また、棚上げ備蓄にすれば約二十万ヘクタールの減反緩和は可能となり、さらに備蓄水準を二百万トンにすれば減反を廃止して増産が必要になること、生産調整の対象から飯米農家を除外することなどを要求してたたかいます。

 運動上で重要なのは、強制減反とは断固たたかうとともに、農協や自治体と「減反に参加する、しない」にとどめず、減反する人もしない人も、地域の生産を守るために共同することです。

 農水省、農政局・都道府県交渉、農協などとの懇談の実施、三月議会請願、強制減反を問う地域集会など、多様な運動を展開しましょう。

(3)米生産と国民への安定供給を実現するための当面の要求について
 米改革を中止に追い込むことを基本に、米生産と国民への主食の安定供給実現のために、次の要求を掲げ全力をあげます。

★回転備蓄を棚上げ備蓄に改め備蓄米を主食以外の用途に振り向けるシステムに変更すること。異常気象の影響や国際的な米のひっ迫をふまえて二百万トン水準の備蓄を確保すること。

★MA米のスタート時に国民に約束した「閣議了解」を守り、SBS米の主食用販売を中止すること。米価に影響を与え、税金の無駄遣いであるMA米の在庫を一掃するとともに、輸入数量を大幅に削減し、制度そのものを廃止すること。

★JAS法を改正してクズ米を主食用から完全に隔離すること。

★強権的な減反は行わないこと。飯米農家は生産調整の対象から除外すること。生産調整を飼料など自給率の低い作物の生産拡大に誘導することを基本とし、引き合う水準の転作助成を実施すること。

★生産費を補償する不足払い制度と直接払いを組み合わせた価格制度を実現すること。

(4)準産直米のとりくみと結んだ米を守るたたかい
 米価の暴落と流通の混乱は、生産、流通の両面から抜本的な政策転換を求めています。

 また、農協中央と単位農協や業界との矛盾が深まり、強制減反は、さらに矛盾を拡大することになります。

 こうしたもとで、生産者、流通業者、消費者が交流・提携して国民の主食・米を守る運動としての準産直米の役割はますます重要となり、量・質ともに大きく飛躍させることを求めています。広範な農家、農協などと対話を広げ、文字通り、米政策と流通に影響を与える規模への発展を展望して参加を働きかけましょう。

 2、「品目横断的経営安定対策」を中止し、価格保障を要求するたたかい

 「品目横断」が、農民の経営と地域農業に重大な影響をもたらすことを広く知らせ、全ての農家を対象にした価格保障を要求してたたかいます。

 また、「品目横断」に参加する農家や集落営農組織の多様な要求を取り上げて改善する運動を重視します。

 3、農地制度を守るたたかい

 戦後農政の柱である耕作者主義にもとづく農地制度を、財界の強い要求で株式会社が農地を所有できるようにするねらいは、〇八年度がヤマ場となります。

 耕作放棄地を解消する運動とあわせ農業委員会関係者との共同、農地法改悪のねらいを国民に知らせるなど改悪を阻止するため全力をあげます。

 4、地域ぐるみで生産と農地を守る運動を

(1)自治体に向けた提案と自治体農政確立運動
 国の農政との矛盾が深まっているなかで、自治体独自の施策を推進する動きが広がっています。

 こうした流れをさらに広げるために、これまでの地産地消宣言運動に加えて「農業振興条例」の制定運動を地域ぐるみで展開しましょう。

(2)担い手づくりや、地域の助け合い、遊休地対策運動
 地域の生産を守るための助け合いの組織、担い手を確保・育成するとりくみは待ったなしの課題です。農家の後継者支援や農外の人たちを受け入れて定着できるように支援する施策、農作業を支援する「サポーター制度」など、自治体ぐるみの担い手づくりのとりくみを進めましょう。農外の人たちを対象にした「農民塾」を具体化しましょう。

 共同の力で遊休地を解消するとりくみも全国共通課題です。飼料が高騰しているなかで耕畜連携によるホールクロップ・サイレージなどの生産を「転作対策」として全国的に展開しましょう。

 5、いっせい農業委員選挙に多数の会員を送り出そう

 〇八年は全国いっせい農業委員選挙の年です。農業委員会の骨抜きを許さず、機能を強化するためにも多数の農民連会員を当選させましょう。

 6、洞爺湖G8(先進国首脳会議)に向けたたたかいと、食糧主権確立をめざす運動

(1)地球温暖化と食糧主権をめぐる日本政府・財界の三つの異常
 今年七月七〜九日に北海道・洞爺湖で主要国首脳会議(G8サミット)が、地球温暖化問題を中心課題にして開かれます。日本政府・財界には、その立場と両立しえない三つの異常があります。

 日本は食料(カロリー)の六一%、穀物の七三%を輸入に依存し大量の石油を浪費して農産物を輸入しています。しかも政府と財界はさらに輸入依存を深めようとしていますが、これは地球温暖化防止にも食糧主権にも逆行するものです。

 バイオ燃料では多国籍企業の暗躍が目立ちますが、日本の多国籍企業も、インドネシアやブラジルなどでプランテーション作りを進めています。

 日本の温暖化ガス排出量削減目標は二〇一〇年までに六%ですが、逆に六・四%増えています。しかも、排出量の半分は日本の大企業三十五社が占め、財界は削減にまったく後ろ向きです。

 広範な運動によって、この異常をただすことが私たちの責務であり、G8行動の戦略目標です。

(2)洞爺湖G8サミットに向けて
 サミットに対する対抗行動は、二〇〇七年ハイリゲンダム(ドイツ)七万人など大規模な集会やデモが行われ、「農民の日」の中心になったのはビア・カンペシーナでした。

 今年の洞爺湖サミットは、日本の民主勢力やNGOにとって初めての大規模なとりくみになるもので、すでに農民連も加入している「G8を問う連絡会」や「市民フォーラム北海道」、さらに「G8サミットNGOフォーラム」などが準備を進めています。

 農民連は、食健連や国内の広範なNGO、ビア・カンペシーナと共同して「食糧主権の日」行動を設定し(七月四〜五日)、札幌市内で国際フォーラムやパレードにとりくみ、全国の仲間の参加を呼びかけます。

(3)国際連帯の活動
 ビア・カンペシーナ国際総会への男性・女性・青年代表の参加(十月)、ラテンアメリカ視察・交流などにとりくみます。

 7、食健連運動

 例年を上回る規模で展開された〇七年グリーンウエーブは、米価暴落対策を求め、国民世論と共同を広げる大きな力になりました。開店休業状態を脱して運動を再開した県食健連が生まれていることも重要な前進です。

食料自給率の向上と食の安全、地域を守る食健連運動への期待が高まっています。すべての県、単組にいたるまで対応する食健連を確立しましょう。

〔3〕生産を拡大し、「もう一つの流れ」を広げる運動

 1、大見本市の成功を踏まえたネットワークの多面的展開

 学校給食等にじゃがいも、たまねぎ、ニンジンを全国リレーで年間供給するとりくみを、ふるさとネットと協力して軌道に乗せることを戦略目標とします。大見本市に参加した業者等との結びつきを広げ、販路の開拓につなげましょう。今回の教訓を活かして「第2回大見本市」を開催します。

 果樹、畜産などの多面的な流通、カタログ、組織内産直を発展させるためにとりくみましょう。

 2、地域で頑張る生産組織、グループとの共同

 地域の生産は、農民連が核になって、地域でがんばる多様な生産組織・グループと手をつないでこそ発展させることができます。こうした団体との信頼を広げ、農民連への組織化の展望をもって共同を広げましょう。

 3、安全な生産への努力と機能を強化した食品分析センターの活用を

 食品の偽装表示事件や輸入農産物の残留農薬問題などが相次ぐなかで、食に対する国民の不安・不信が高まっています。国民の“安全で安心”の願いに応えることは、生産者組織の強い責務となっています。

 法令やルールの遵守、信頼を損ねない努力とともに、安全な生産への努力を強めるとりくみが求められています。分析センターを活用した農産物の定期的検査は、安全性の証明だけでなく組織の信頼性を高め一人ひとりの生産技術の向上にもつながります。組織で予算を組み定期的検査の仕組みを確立しましょう。

 加工食品の細菌検査を行い、衛生管理の向上にも活用しましょう。

 〇八年度を目途に法人設立の準備に入ります。「十周年記念二千万円募金」の目標を達成していない組織は、三月末までに達成しましょう。

〔4〕多面的な要求運動の発展を

 1、切実な税負担軽減、国保減免の運動

(1)目白押しの庶民大増税
 〇七年は所得税と住民税の定率減税が廃止され、住民税は一律一〇%になり、税負担が二倍から五倍になったという人が続出し、役所の窓口に問い合わせが殺到しました。こうした増税によって、国保税や介護保険が大幅に値上がりしました。所得が低下しているもとでの増税感が自主申告運動を発展させる条件となっています。

 国保の滞納者は四百八十万世帯、資格証明書の発行は三十五万世帯(〇六年六月一日)となり、病気になっても医者にもいけないという国民皆保険制度が崩壊する事態となっています。

(2)自主計算・集団申告の運動をすべての組織でとりくみましょう
 自主申告運動は、暮らしを守り、不当な税務行政をやめさせて申告納税制度を守るたたかいです。また、税金の「取られ方」「使い方」を学習し、「大企業や大金持ちに適正に課税し、税金を社会保障や農業に」の要求を結集し、改善させる運動の出発点にすることです。さらに、自らの経営実態を確認して経営対策に生かすことです。

 組織を前進させているところでは、税金要求を軸に会員拡大を前進させています。税金は強固に団結した組織づくりの基礎的運動です。全農家規模の宣伝・対話を強め、すべての市町村で相談会を開催しましょう。会員による「紹介運動」は組織拡大の要です。全国やブロックで税金運動交流会を開催し経験交流しましょう。

 「三・一三重税反対全国統一行動」を、集団申告と地域の重税に反対する行動として全国で大きく成功させましょう

(3)高すぎる国保税の引き下げ、年金、介護制度の改善を求める運動
 国保料(税)、介護保険への国庫負担の増額を要求するとともに、自治体に減免を要求する運動を進めましょう。後期高齢者医療制度の廃止など高齢者負担の軽減を要求する運動を広げましょう。

(4)固定資産税の負担軽減、相続税の納税猶予制度の廃止を許さない運動
 引き続き、農業用施設用地の農地評価、造成費の引き下げ、小作料を上回る固定資産税の減免、市街化区域農地の生産緑地の追加申請などの運動を強めましょう。

 2、農業資材高騰対策

 燃料や飼料・農業用資材の高騰が経営を圧迫しています。石油独占企業のボロもうけの実態暴露と国民への還元対策、ガソリン税の暫定税率の廃止などを要求し運動を強めましょう。

 飼料問題では、政府に配合飼料安定基金を破綻させないよう基金の積み増し、乳価の引き上げを要求するとともに、自給飼料を増産させる抜本的な対策を要求して運動を強めましょう。

 3、暮らしを守る相談活動

 農家の営農、暮らし全体にわたって困難が広がっているなかで「駆け込み寺」が求められています。労働団体や医療団体、弁護士、税理士などとも協力して「なんでも相談会」「生活相談会」を開きましょう。

〔5〕憲法、平和、格差を是正する国民的運動、政治を変える運動

 1、憲法改悪を許さない運動

 憲法改悪を許さない国民の多数を結集する運動は、引き続き重要課題です。国民署名の推進はその中心課題です。

 「九条の会」を無数に広げることに協力するとともに、「農林水産九条の会」をすべての都道府県に確立し、農林水産関係者のなかで憲法を守る世論と運動を広げましょう。「九条たんぼ」や牧草を使った「九条ロール」など創意あるアピールを行いましょう。

 2、貧困と格差を解消する共同、ナショナル・ミニマムの確立を求める国民的共同

 貧困と格差を是正し、憲法二五条にもとづいてすべての国民の暮らしを守る運動は、当面の重点課題です。

 全労連は、貧困と格差を是正する時給千円の全国一律最低賃金の確立を基本要求としてたたかっています。この要求は、最低限の暮らしを保障する課税最低限の確立、最低保障年金、農産物価格保障を実現する軸です。国民春闘との共同を広げ、ナショナル・ミニマムの確立を求める共同を草の根から発展させましょう。

 3、消費税増税を許さない運動

 最悪の国民いじめの消費税増税を国民的たたかいで阻止する課題も今年の重要課題です。財界と政府・与党が消費税増税を打ち出し、自民・民主の「大連立協議」でも消費税増税が政策の柱にされました。その言い分は社会保障の財源論です。

 大企業と大資産家への行き過ぎた減税、年間五兆円にのぼる軍事費などの問題には手をつけず、国民に増税を押し付けるねらいを広く知らせ、学習を力に地域から国民的な反対世論と行動を組織しましょう。消費税廃止各界連が呼びかけている「一千万署名」を農村で大きく展開しましょう。

(新聞「農民」2008.1.28付)
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2008年1月

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