「農民」記事データベース20061113-756-08

世界的視野で食料主権の確立をめざし、
地域で農業と農村を再生する運動を広げ、
強固な農民連をつくろう!(4/5)

農民連第17回定期大会決議(案)

二〇〇六年十一月一日 農民運動全国連合会常任委員会

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(5)生産拡大による食糧自給率向上と、流通の「もう一つの流れ」を広げる運動

 1 自給率を向上させる生産の拡大を農民運動の中心課題として全力をあげよう

 農業構造改革は、生産を削減して食糧の外国依存をさらに進めるだけでなく、日本の農業の存亡にかかわるものです。多数の農民が農業から撤退せず生産を拡大すること、農業でがんばる人を増やす運動は、農民運動の最も中心的な課題であり、農業を守る最も鋭い対決点です。

 農家が生産を続け、経営を守ることなしに日本の農業は守れません。専業農家が経営を守ってがんばるとともに、「農業構造改革」や「米改革」によって生産から排除される対象である女性や高齢者の力を生かすことは特別に重要です。地域の条件に見合った多様な実践を大いに進めましょう。

 2 農民連ふるさとネットワークを生かし、日本列島三千キロをつなぐ運動の発展を

 適地適作を基本に、すべての地域で「もの作り計画」をもち、ブロック・都道府県ネットワークと力を合わせて「販売戦略」をもってとりくみを前進させましょう。

  (1)ネットワークを生かした本格的なとりくみを前進させよう
 「準産直米」を全国ネットワークの要として、流通に影響をあたえる規模に発展させることが求められています。じゃがいも、玉ねぎ・にんじんや落葉果樹、かんきつ、加工品などの販路拡大や全国的規模でのリレー出荷、都市の学校給食へのリレー出荷など、ブロック・都道府県ネットワークと提携してとりくみを具体化し実践に踏み出しましょう。「ふるさとギフト」は、消費者から歓迎され、労働組合などとの提携にまで広がっています。さらに全国の豊かな農産物を紹介できるとりくみに発展させましょう。

 学校、保育園、病院給食等に地場産や国内産を供給するとりくみ、中小業者と提携した麦、大豆などの加工の推進、畜産品や野菜、果物など、多様な販路づくりを県・ブロック・農民連ふるさとネットワークを生かして広げましょう。

 市場や卸との話し合いや交流、八百屋さんとの提携を広げ、全国的な市場へのリレー出荷を進めましょう。

  (2)“産直の要”新婦人産直の発展を
 全都道府県に広がっている新日本婦人の会の会員との産直は、農民連組織に共通する産直の要です。新婦人は、産直を安全な食と日本農業を守る重要な運動として位置づけ、広範な女性への呼びかけと、産直小組の発展をめざして奮闘しています。こうした努力に、農民連がどう応えるかが求められています。

 この間、ふるさとネットワークとともに「新婦人産直交流会」を開催するなど、全国のとりくみを前進させる努力を強めてきました。前進している組織に共通する教訓は、約束ごとを守り、信頼を大切にすることを基礎に(1)農民連の側が新婦人産直の意義を認識し、惰性やマンネリを排して攻勢的にとりくんでいる、(2)新婦人と一緒に、学習や多様な交流を旺盛に展開して、理解と信頼を築き上げてきている、(3)多様な作物を生産する組合員を結集し、地域の特性を生かしたもの作り運動を豊かに展開している、(4)新婦人会員のニーズをつかんで魅力あるものを提供している、(5)新婦人会員の要求を踏まえて米や野菜に加え、果物や加工品など、農民連ふるさとネットワークを生かして様々なアイテムを増やし、より豊かな新婦人産直を発展させている―ことなどです。十六年間の全国の経験や蓄積に学び、さらに新婦人産直を発展させるために全力をあげましょう。

 3 農業・食糧を守る運動を先行した事業の発展を

 産直事業をめぐる情勢は、農業破壊政策や生産コストを無視した農産物の買いたたき、国民の暮らしの困難などを反映してきびしい側面があります。私たちが情勢をみる際、いま引き起こされている現実を事実にもとづいて分析し、根底にある原因を深く見極めることが大切です。

 農民連の産直運動とは、消費者に安全な農産物を提供するだけにとどまらず、輸入農産物をはね返して国内産の農産物を食べてくれる消費者を増やすこと、農業・食糧への国民合意を広げることにあり、運動的な努力なしに事業を発展させることはできません。

 また、組合員の経営を守り、活力ある地域をつくる運動のなかに事業を発展させる展望があることを確信にとりくみを進めることが大切です。

 さらに、個々の産直組織が経営努力を強めることは当然ですが、大手流通企業の支配があらゆる分野で強まっているなかで、これに対抗できる「もう一つの流れ」をつくる視点なしに展望が生まれないことを確認しあいましょう。

 4 食の安全を実現し、 安全な農産物を生産する運動

  (1)安全な食の実現を求めて
 安全対策が未確立なアメリカ産牛肉への監視を強め、「食べない、買わない、売らせない」運動と世論をさらに盛り上げて政府を包囲しましょう。

 また、アメリカが要求する月齢基準の緩和(二十カ月齢以下から三十カ月齢以下へ)を許さず、輸入牛肉の検査を徹底し、再び違反が見つかれば、即刻、全面禁輸にすること、学校給食などにアメリカ産牛肉を使用させないこと、外食や加工品などにも原産地(国)表示を広げること、自治体が独自に行っている二十カ月齢以下のBSE検査に対する補助を継続することなどを要求して運動を進めましょう。

  (2)ポジティブリスト制の二つの側面を踏まえた運動を
 〇六年五月から実施された残留農薬などのポジティブリスト制は、野放しの輸入農産物を監視する積極面を持っています。

 同時に、小麦や大豆の暫定基準は一〇ppm、二〇ppmなど、著しく緩和されていることや、日本の残留基準が設定されていない農薬は一律に〇・〇一ppmの基準が設定され、生産現場では隣接するほ場への飛散などをめぐって大きな不安が広がっています。

 輸入農産物の農薬などの検査体制を充実すること、日本国内で使用されていない農薬の残留基準を、輸出国の基準やコーデックス基準に当てはめるのではなく、農薬取締法の登録基準に従った残留農薬基準にすることを要求します。

 また、日本国内で使用されている農薬で、残留基準がなく一律基準が適用されるものの残留基準は、速やかに作物ごとの使用実態にあった基準にすることなどを要求して運動を強めましょう。

  (3)分析センターを活用し、安全・安心な農産物を届けよう
 農民連加盟組織が、食品分析センターを積極的に活用して生産物の残留農薬検査を定期化し、農産物の安全性を証明できる検査体制を確立しましょう。

 病体生理研究所との共同宣言「国民の医と食を守るためにともに力を合わせよう」にもとづき、細菌検査などの事業提携も生かし、食品分析センターが食の安全にかかわる様々な点に対応できるよう、さらに機能を高めることが求められます。食品分析センターの社会的役割や責任の高まりに応えるため、法人化を検討します。

  (4)安全な農産物の生産は農民連の使命
 食の安全を求める国民の要求に応えて、安全な農産物を生産して国民に提供することは農民の使命です。

 生産物の安全証明に不可欠な生産履歴の記帳運動に組織をあげてとりくみましょう。また「田・ほ場まわり」などを進め、専門家の蓄積も活用して技術を高めるための研修を強めましょう。農業試験場や農業改良普及所などの退職者を都道府県連ごとに「生産技術協力員」として登録し、日常的な協力を求めましょう。

(5)農家の要求に応える多面的要求運動

 1 重税を許さないたたかい

  (1)目白押しの庶民大増税
 安倍内閣は、小泉前内閣の「構造改革」路線の継承をかかげていますが、その継承とは大企業優遇と庶民負担増を押しつける政治にほかなりません。

 政府税制調査会は、〇五年六月、〇七年度をめどに、「消費税を含む抜本的な税制改革を実現する」と、消費税の一〇%への引き上げと「個人所得税の抜本的見直し」を公表し、〇六年八月に「中間答申」を行う予定でしたが、参議院選挙への影響を恐れて答申を一年間延長しました。しかし、政府内では増税の準備は着々と進められています。

 農産物価格の暴落と消費税の免税点の引き下げで、農家の経営と暮らしが圧迫されており、税金運動を前進させる意義はますます重要です。

  (2)自主計算・集団申告の運動をすべての組織でとりくみましょう
 記帳簿を軸に、自主計算・自主申告運動を広げる条件は満ちています。全農家規模の宣伝を強め、すべての市町村で税金相談会を開催しましょう。

 会員による「紹介運動」は組織拡大の要です。全国やブロックで税金運動交流会を開催し、経験の交流をはかりましょう。消費税を含む税金相談員養成講座を開きましょう。

 税金運動は、とりくんでもとりくまなくてもいいという課題ではありません。本部は、税金運動を重要な要求運動として発展させ、組織拡大に結びつけるために、税金対策部の体制強化を進めます。

  (3)固定資産税の負担軽減、 相続税の納税猶予制度の廃止を許さない運動
 自治体の税収減や、「三位一体改革」によって国からの交付金が削減されているもとで、自治体の自主財源として固定資産税が増え続け、農家の暮らしと経営を圧迫しています。また、自治体合併によって特定市となり、新たに農地が宅地なみに課税される状況も生まれています。

 財界は、相続税の納税猶予制度を認定農家のみを対象にすべきだと主張するなど、農地税制を通して生産から締め出す動きを強めています。

 この間の運動で、農業用施設用地を農地として評価させることや造成費の引き下げ、課税ミスの是正など、固定資産税を適正課税に改めさせる成果をあげています。

 引き続き、農業用施設用地の農地評価、造成費の引き下げ、小作料を上回る固定資産税の減免、市街化区域農地の生産緑地の追加申請などの運動を強めましょう。「固定資産税相談会」の開催、都道府県や市町村交渉にとりくみましょう。全国的な活動交流も適宜、開催します。政府に対して相続税の納税猶予制度の廃止を許さない運動を、農業委員会などとも共同して進めます。

  (4)高すぎる国保税の引き下げ、年金、介護制度の改善を求める運動
 農業経営が悪化しているもとで、国保料が引き上げられ、保険料が納められない世帯が増え、保険証の取り上げによって国民の医療が脅かされる事態となっています。特に、高齢者を狙い撃ちした所得税増税は国保料や介護保険料の引き上げに連動し、暮らしを著しく圧迫しています。老年者控除の復活や公的年金控除の拡大などとあわせて、国保への国庫負担の増額や自治体に減免を要求する運動を進めましょう。

 2 多面的な要求運動、 農山村を守る運動

  (1)燃料費高騰対策
 燃料費高騰が経営を圧迫しています。石油独占のボロもうけの実態暴露と国民への還元、政府に燃料諸税の引き下げなどを要求し、要求の一致する諸階層とも共同して運動を強めましょう。

 農家の営農、医療・福祉、兼業農家の雇用など、暮らし全体にわたって困難が広がっているなかで「駆け込み寺」が求められています。労働組合や医療団体、弁護士、税理士などとも協力して「なんでも相談会」 「生活相談会」を開きましょう。

  (2)中山間地を守るとりくみ
 中山間地を切り捨てる流れが強まっているもとで、中山間地で生活する農民の暮らしと農業を守る要求は切実です。予算規模の拡大など、中山間地への「直接支払い」を改善・充実させる運動を進めましょう。

 中山間地では、鳥獣被害が農作物に深刻な被害をもたらし、経営が脅かされています。生産と地域を守るために、政府への対策を要求し、自治体とも協力してとりくみを強めましょう。全国やブロックで交流も行いましょう。農村を産業廃棄物の捨て場にさせないことなど、環境や生産基盤を守る運動を進めましょう。

(6)憲法改悪を許さない国民過半数の世論を結集する運動を農村から

 憲法改悪を阻止するたたかいは、今期の最大の焦点です。憲法改悪の地ならしである教育基本法改悪、改憲に連動する「国民投票法」を許さないたたかいに全力をあげましょう。

 1 国民の過半数をめざす署名運動

 自治体や地域の有権者の過半数を目標にした憲法改悪反対署名を実現するため、諸団体と力をあわせて「地域共同センター」を立ち上げて運動を広げましょう。憲法改悪のねらいや、憲法を生かしてこそ農業を守れることなどについて学習と話し合いを強め、会員に署名簿を届け全会員参加の運動に広げましょう。

 2 農民らしい創意ある行動を

 すべての都道府県や地域、単組で「九条田んぼ」など、農民らしい宣伝を行い、本部が作成した「九条パネル」やのぼり旗を無数に設置し、農村に「九条を守れ」の風を起しましょう。

 3 「農林水産九条の会」への賛同を広げ、都道府県の「会」立ち上げに協力しよう

 「農林水産九条の会」アピールに賛同し、賛同を広げる目標をもってとりくみましょう。北海道、大阪、新潟、滋賀につづいて、秋田、千葉、愛媛、鹿児島などで「会」づくりの準備がはじまっています。アピール賛同者の方々と協力し、すべての都道府県に「会」を立ち上げる運動に協力しましょう。

(新聞「農民」2006.11.13付)
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2006年11月

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