「農民」記事データベース20061113-756-07

世界的視野で食料主権の確立をめざし、
地域で農業と農村を再生する運動を広げ、
強固な農民連をつくろう!(3/5)

農民連第17回定期大会決議(案)

二〇〇六年十一月一日 農民運動全国連合会常任委員会

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(3)農業構造改革を許さず、価格保障を軸にした農政の転換を求める共同

 1 品目横断的経営安定対策に対する態度と要求

 品目横断的経営安定対策に対する農民連の基本的な態度と要求は次の点です。

  品目横断的経営安定対策を中止し、すべての農家を対象に価格保障を軸にした経営安定対策を実現すること。

  当面、すべての農家が制度を理解して判断できるようにすると同時に、現場で生まれている矛盾の改善を要求することを、制度そのものを問う運動として重視する。品目横断対策の加入者の要求に耳を傾け、農協などとも共同して政府に改善を要求する。

  加入する条件がないのに無理やり品目横断対策に加入させるのではなく、生産を守ることを最優先した地域ぐるみのとりくみを進める。「集落の助け合い組織」を組織し、安全・安心な生産の拡大、加工や販路の確保など、生活と生産、経済の基盤である集落を守るとりくみを進めること。

 2 品目横断的経営安定対策を中止させ、 がんばるすべての農家を対象にした価格保障を実現する共同を

  (1)『食糧主権宣言(案)』を対置し、国民的世論に
 WTOを絶対視して生産と農民を切り捨てている国は日本ぐらいなものです。こうした亡国農政を全国民に知らせ、議論を巻き起こして品目横断対策を中止させ、全農民を対象にした価格保障を軸にした経営安定対策を要求し、その流れを強めましょう。『食糧主権宣言(案)』を品目横断対策への対案として普及し、国民的な世論に発展させましょう。

 〇六年九月からの秋まき小麦に続いて、〇七年四月からは、米を含めた五品目の加入受け付けが始まり、強引な加入押しつけが行われることになります。品目横断対策のねらいや制度の内容を農家に知らせ、すべての地域で学習と話し合いを進めましょう。地方議会での請願運動を強め、農民連会員のいる農業委員会を先頭に「建議」を採択し、自治体や政府への働きかけを強めましょう。都道府県や市町村との交渉、提案を進めましょう。

  (2)認定農家と、対象からはずされる農家の両方の要求を視野に入れ、地域の生産を守るとりくみを
 農家や地域の条件を無視して品目横断対策の受け皿になることを最優先するのではなく、地域の生産と農地を守ることを最優先に、地域の条件と農家の意向を踏まえた多様な作業の共同、機械の共同利用などの助け合いを進めましょう。

 集落の農地の利用調整だけでは経営を維持できません。加工、地産地消、多様な販路の確保まで視野に入れた「集落助け合い」を農協・自治体ぐるみで推進しましょう。

 加入農家も価格下落のもとでは経営を維持することは困難です。要件緩和や共通する要求実現のため共同を広げましょう。

  (3)集落と生産を維持する助け合いの実践、多様な担い手を確保する運動
 集落と生産を守る助け合いをすべての組織に共通する課題としてとりくみましょう。進んだ集落組織の教訓は、みんなの条件を尊重した民主的な話し合いや、これを保障するリーダーが存在していること、地産地消や多様な販路と結びついて生産を維持していることです。また、こうした自主的なとりくみを自治体や農協が支援していることです。はじめから集落全体を対象とせず、可能なところから知恵を出し合って実践しましょう。全国的な「地域助け合い交流会」(仮称)を開催します。

 農外の市民を「農業サポーター」として養成して農作業をサポートすること、青年や退職労働者を農山村に迎え入れて農業の担い手になってもらうとりくみなど、各地で担い手を確保するための多様なとりくみが展開されています。こうしたとりくみを全国に広げるとともに、新規参入者の定着を支援する制度も都道府県や市町村に提案しましょう。農民連組織と産直組織が共同して、こうしたとりくみの先頭にたちましょう。

 3 ふるさとネットワークと共同して生産拡大と販路の拡大を

  (1)農民連の産直、準産直米の経験を生かすとき
 〇七年産から生産調整は農協に丸投げされ、流通のいっそうの混乱や、一時的な米の過剰に輸入米の攻勢も加わり、価格競争の激化は避けられません。今後、米を作り続けるためには、品目横断対策に乗っても乗らなくても、確かな販路を持つかどうかが決め手になります。販路の確保は生産者(団体)に共通する切実な要求です。

 農民連は十五年前から新婦人会員との産直にとりくみ、七年前から準産直米に取り組み、二年前にはふるさとネットも立ち上げて、「もう一つの流れ」を消費者や中小の業者と築いてきました。この間、蓄積してきた経験と実績を今こそ生かすときです。

  (2)販売ルートをつなぐことを第一義に取り組もう
 米の集荷をめぐって、「米の農協出荷を集落営農への加入条件にする」「農協に出荷を強制された」「生産調整に参加しない農家の米は二千円差別する」などの状況が生まれています。国が米の管理責任を放棄したもとで、助成金と絡めて販路をしばることはできません。また、農協が生産調整への未参加を理由に買入価格を差別することは独占禁止法上、許されません。生産費を割った価格が続くなか、困難もありますが、消費者や中小業者とルートをつなぎ、共同して米・農業を守るとりくみであることを最大の眼目にして運動を強めましょう。

 すべての組織が新たな情勢と「もう一つの流れ」をつくる準産直米の意義を役員会などで議論し、自ら掲げた目標を必ずやりきりましょう。

 米を生産しているすべての会員や、つながりのある農家にあと五俵、十俵と運動への参加を呼びかけましょう。地域の生産組織や農協にも準産直米のとりくみへの共同を呼びかけましょう。

 〇七年産のとりくみの飛躍をめざし、今から農家、組織ごとの出荷登録(予約)を組織しましょう。

 4 異常な農産物価格を是正させる運動

  (1)価格保障の復活、不足払いの実現を
 松岡農相は「日本の農産物は、世界のあらゆる農産物の中で、味・品質は断トツの特級品」「宝石のようなもの」とブチあげていますが、「特級品」であるはずの米の価格は「水」以下の水準に暴落しています。その結果、稲作農民の日給は二千六百四十七円(時給三百三十円)で、生活保護水準以下といわれる地域最低賃金(五千三百四十四円)の半分にまで下がっています。これは、農民に高校生のアルバイト代の半分以下の時給で暮らせということであり、借地によって経営規模を拡大する農家にとっては地代も払えない水準です。

 私たちの要求は、せめて水よりは高い米価にしてほしいということであり、稲作農民の「日給」を、せめて地域最低賃金並みにしてほしいということです。かりに現在の最低賃金が保障されれば、米価は生産費をぎりぎり償う一俵(六十キロ)一万八千円弱になり、日給八千円という最賃改善要求にもとづけば約二万円になります。

 私たちは、価格保障の復活を要求します。具体的には、暴落が始まった過去五年間の全国平均生産費(一万七千五百四十円)を基準価格とし、農家の手取り価格(指標価格−出荷経費、〇六年産の平均は一万三千八百八十四円)がこれを下回った場合に、すべての販売農家に対し、差額を全額国費負担で「不足払い」することを要求します。

  (2)大資本の買いたたきに対する規制
 大資本の買いたたきに対する民主的な規制も重視されなければなりません。野菜の生産者価格と消費者価格の格差は十倍、二十倍というケースが珍しくありませんが、フランスでは「量販店の顧客である消費者に、量販店の“汚い”やり方を見てもらい、取引の透明性を高めること」を目的に、小売価格と生産者価格の二重表示を義務づける制度が実施されています。

 日本の独占禁止法は、「不当な対価をもって取引すること」「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること」を「不公正な取引方法」として禁止しています(第二条)。明白に生産費を割り込むような農産物価格は「不当な対価」そのものです。現段階で、日本政府が、この条項を農民や中小業者救済のために活用する状況にはありませんが、ルールなき資本主義に対する規制という角度から、せめてフランスが実施している程度の規制を実現し、大資本の買いたたきを規制することを要求します。

  (3)ナショナル・ミニマム、国民的な合意を求める運動
 政府は現在、最低賃金法の大幅な見直しを進めており、ワーキング・プア、“下流社会”などの格差解消の有力な対案として、全国一律最低賃金制度の確立を求める運動が大きく盛り上がりつつあります。「生活賃金」原則にもとづく全国一律最低賃金制度を軸に、労働時間短縮・解雇規制の“三点セット”にもとづくナショナル・ミニマム(国民生活の最低保障)を確立させることは、農民にとって二重の意義があります。一つは、最賃制が農産物価格保障の復活と自家労賃確保の基礎になることです。もう一つは、労働者(消費者)に“三点セット”が実現されれば、「安かろう危なかろう」の輸入食品や「割高・低品質」のインスタント食品ではなく、国産の農産物に対する安定した需要が生まれることです。さらに、全体として「ゆとり」が生まれれば、本来の意味でのレクリエーションや文化、民俗、芸能などに人々の目が向く条件ができ、農山村の復権や持続可能な国土・環境の維持につながるでしょう。

 農政改革の核心は価格保障廃止であり、その根源は“国産農産物割高”論にあります。しかし「割高」というなら、米やガソリンより高いペットボトル入りのお茶や飲料水こそが超割高です。スイスの大手銀行の調査によると、米一キロ買うのに、世界一の米輸出国であるタイの労働者は二十三分、第三位のインドでは八十九分働かなければなりませんが、日本は十七分です(世界平均は十九分)。また、ビッグマック一個を買うのに、世界平均では三十六分働かなければなりませんが、茶わん十〜十二杯分の米一キロは十九分です。国民の購買力という点からいえば、日本の米は「割高」ではありません。事実をゆがめる宣伝やイデオロギー攻撃に反撃し、異常な農産物価格を是正させる国民的な合意を追求しましょう。

  (4)異常な農産物価格、とくに米価を国連機関に提訴
 労働者の時給程度になっている稲作農民の日給、生産費を恒常的に下回っている生産者米価などの異常事態は、農民の人権侵害にあたります。しかも、食管法廃止後は、政府買い入れ自体が入札によって最安値のものから落札され、さらに六十キロあたり七千円前後という超安値で売却されており、政府が調査した生産費を大幅に下回る「不当な対価」を政府が強要するという異常事態が恒常化しています。

 こういう事態を国連機関に提訴し、日本政府への是正勧告を要請することを検討するとともに、内外のマスコミ・世論に広くアピールします。

 5 農協つぶしや農協制度の破壊を許さない共同を

  (1)農協をめぐる問題と運動について
 農協三事業の分割や、独占禁止法の適用除外を批判する財界の要求は、自らのビジネスチャンスを拡大するためです。こうしたねらいを背景に進められている農業構造改革は、全中や全農に事業や組織の「改革」や、品目横断対策の推進を押し付けています。

 全中は、こうした攻撃に有効な運動を組織せず、政府と一体になって農業構造改革を推進し、〇六年十月に開かれた第二十四回JA全国大会では、こうした方向をいっそう強く打ち出すとともに、一握りの担い手を中心にした事業展開を進める方針を決めました。

 これらは、協同組合の立場を放棄するもので、農家の農協離れにますます拍車をかけ、単位農協の経営を脅かすものです。地域農業と農協経営を守るために懸命にがんばっている単位農協関係者との矛盾の拡大は避けられません。

 「米改革」によって農協が〇七年から「生産調整」を担おうとしていることも重大です。本来、生産拡大の担い手である農協が米の減産、生産縮小を推進するのは本末転倒です。生産調整への参加の有無によって組合員への締め付けや差別など、新たな内部矛盾を生み出すことは避けられません。

 さらに、農業つぶしの自民党公認の参院比例代表選挙候補に前専務を押し立てて事実上の農協ぐるみ選挙を展開していることも重大です。

 農民連は、主人公たる組合員と地域農業を守るために奮闘する農協関係者を激励し、共同のために力をつくします。

  (2)農地制度を守る運動
 農地法の適用を除外する経済特区による株式会社の農業参入を政府が強力に推進しているもとで、首相の諮問機関である経済財政諮問会議は、戦後農政の柱である農地制度の改悪を重要な柱に位置づけています。このねらいを広く明らかにするとともに、農業委員会との共同を広げ、農地制度の改悪を許さないために全力をあげます。また、生産の助け合いを、遊休地を解消し、農家が自主的に農地を管理できるとりくみに発展させましょう。

(4)食健連運動の発展を

 食健連運動は、農業と食、健康を守る国民共同の核であり、農民連運動にとって車の両輪です。食の安全や地域農業にかかわる多様な要求を実現する運動にとりくむとともに、地域経済を活性化させ、安心して住み続けることのできる地域づくりを視野に入れて共同を広げることが求められています。

 食健連運動の原動力は、(1)食と農にかかわる国民要求を実現する先頭に立つとともに、安全な国内産の食の生産・加工、流通、消費の運動を両輪にしてきたこと(2)要求で結集し、幅広い共同のとりくみを広げる努力を一貫して追求してきたこと(3)学習を力に、広く宣伝・対話して国民合意を求めてきたこと(4)食を真ん中にした楽しい企画、文化を大事にしていること(5)国際的な視野で情勢をとらえ、草の根からの運動を展開してきたことなどです。

 すべての県と単組に対応した地域食健連づくりを全国で進めましょう。

(新聞「農民」2006.11.13付)
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2006年11月

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