第16回大会第二回全国委員会への報告(2/4)二〇〇六年一月十四日 農民連常任委員会/第二回全国委員会への報告(2/4) /第二回全国委員会への報告(3/4) /第二回全国委員会への報告(4/4)
(2)「農業構造改革」、品目横断的対策とのたたかいについて 1、農民連としてのたたかいの基本 (1)「大綱」を中止させ、すべての農家を対象にした価格保障の実現を 「大綱」のねらいを国民的に明らかにし、「大綱」の中止を要求してたたかいます。同時に、がんばるすべての農家を対象にした、価格保障を軸にした政策の確立を要求して全力をあげます。また、農業と工業の違いをわきまえない考え方を批判し、克服するためにたたかいます。 (2)地域ぐるみで生産から撤退しないための多様な助け合いを 農家を減らすことが「大綱」の中心的なねらいであり、農家を生産から撤退させないための運動こそが焦点です。農民の要求を踏まえて現場で柔軟な対応を行い、自治体、農協などとも共同して地域での助け合いなどによって生産を拡大する運動を強めます。また、「日本に農業と農村が必要だ」という点で農民と消費者、流通 業者、市場など、国民的な連帯・提携を広げて輸入農産物を跳ね返す運動を広げます。 (3)視野を広げた新たな組織づくり 農家、生産者グループ、集落全体が存立条件と進むべき道を問われ、農協事業が解体にさらされているもとで、情勢の変化に対応した農民連の新たな組織的発展が求められています。組織づくりこそが「農業構造改革」への最大の反撃です。農民連は、「大綱」への批判者としてたたかうとともに、農山村や農業、農民に最も深い思い入れをもった組織として、農家と苦悩を共にし、このなかで組織を発展させ、農山村の多数者をめざします。 2、「農業構造改革」のねらいを学習し、地域農業を守る実践を すべての都道府県連・単組、産直組織が「大綱」のねらいを学び、どうたたかい、対応するかについての議論を深めましょう。新聞「農民」PR版は、座談会を通 して農民の目線で「大綱」を批判し、たたかいや日本農業の展望を語る内容となっています。PR版をたたかいの基本的資材と位 置づけて大量活用し、学習や議論に生かすとともに、広範な農家、農協などの団体にも届けて運動を広げましょう。 「大綱」は、都道府県や自治体、農協、農業委員会、土地改良区などを総動員して翼賛的に推進されようとしていますが、自治体も農業団体も地域農業の現状とのかい離に悩み、対応に苦慮しているのが現実です。また、農業を基幹とする農山村にとって、「大綱」は地域経済や地域の成り立ちに重大な影響を及ぼし、農業問題だけでなく地域づくりの問題として広範な住民との話し合いや共同も求められます。こうした視点から地域の農業や 経済、地域づくりを話し合う多様な集会などを市町村ごとに開きます。 3、農家を撤退させないための取り組み (1)自治体に働きかけ、ともに運動を広げることが決定的に重要 1) 国の押しつけを跳ね返し、地域の実情にあった自治体農政の展開を 地域の実態に即した特認や認定を求めて都道府県や市町村に働きかけ、全国で運動を積み上げて実質的に「大綱」を緩和・骨抜きさせる運動を進めます。同時に、自治体で「地産地消宣言」や地域農業振興条例を制定し地域の実情にあった農政の展開を共同して進めます。 2) 多様な担い手を確保し支援する施策を 地域では自主的で多様な助け合い組織・グループ、受託組織が奮闘しています。これらを実質的に担い手に認めさせること、参加する農家の意欲や生産力を生かした集落営農を認めさせること、自治体単独の援助施策の実現など、具体的な要求を練り上げ、農業委員会や農協などとも共同して運動を広げます。また、定年退職者の就農促進、都市住民と連帯して生産をサポートする取り組みなどを進めます。 3) 自主的な助け合い組織を確立しよう 農民連会員が集落の人たちと協力し、中心的な役割(リーダーシップ)を発揮して奮闘し、すべての単組、支部、班が、機械の共同利用や作業を受託できる助け合い組織を確立することが大切です。また、産直組織は、生産の拡大と販路の確保とあわせ、事業のなかに「農作業の共同」を位 置づけ、地域の生産の担い手としての役割を発揮することを呼びかけます。 (2)地産地消を軸に、都市と農村、農業と商業、中小流通 業との提携を全国あげて 財界は、短期間での同対策の廃止と市場原理化を主張しています。担い手の経営安定に役立たない「品目横断」に依存したのでは経営を守ることはできません。 国民から信頼され、環境に配慮した生産技術を広げ、農民連が蓄積してきた運動を今日の情勢に即して本格的に発展させ、地産地消を地域ぐるみで推進するとともに、多様な消費者、流通業者、国民と提携して販路を広げます。非遺伝子組み換えや残留農薬のない安全な大豆、小麦の加工を広げ、加工業者や設備をもっている農協との提携、学校給食などへの供給などにも挑戦します。適地適作の地域の特産物を掘り起こすことも重要です。この取り組みを「ものの流れ」にとどめず、大企業の生産と流通支配に抗した国民の側のネットワークづくりと位置づけ、地産地消を軸に、都市と農村、農業と商業・中小流通業者と提携する運動として全力をあげます。 この運動を進めるうえで「ふるさとネットワーク」の役割は決定的に重要になっています。都道府県・ブロックでの多様なネットワークと全国ネットワークを結んで大きな運動に発展させるために力を尽します。 4、農協解体とのたたかい
(1)農協事業解体は農民に向けられた攻撃――これとのたたかい 異常なまでの農協バッシングが展開されていますが、これは大企業のもうけのために農協の経済・信用・共済事業を分割し、農民の財産を奪うことが目的です。一方、協同組合の旗を投げ捨てた乱暴な農協合併が強引に推進され、協同を実践して地域で奮闘している農協関係者との矛盾が深まっています。 農協事業を解体すれば農協は存立できなくなり、地域農業に重大な影響をもたらします。農協関係者がこのねらいを自覚し、事業と組織を守るためにたたかうことを呼びかけます。すべての農協に農民連の立場を伝え、共同をよびかける取り組みを強めます。協同組合への攻撃は農協だけにとどまらず生協や漁協などにも向けられたものです。各協同組合組織と「協同の原点」を確認しながら共同を広げます。 (2)合併攻撃とたたかう農協との共同 乱暴な農協合併に抗して自立の道を選択して奮闘する農協との共同を重視してたたかいます。特に、大分県下郷農協は一県一農協という大合併を拒否し、きびしい自立の道を選択しています。農民の共同と役職員の団結を力に、産直農協としての四十五年の蓄積を生かし、農民連運動への組織合流を含めてたたかいに立ち上がっています。「農業構造改革」や農協つぶしとのたたかいとして位 置づけ、下郷農協を支え、ともにたたかいます。 5、株式会社の農地所有や農業参入を許さないたたかい カゴメが巨大なトマト生産工場をつくったり、「ワタミ」が地域の標準小作料の二倍の賃料で優良農地を集めるなど農外企業の農業参入が相次ぎ政府は経済特区の一般 化や破格の融資制度までつくって推進しています。 これらは、「耕作放棄地対策」を口実に推進されていますが、戦後の農地制度を転換して大企業が農地を取得できるようにすることを既成事実化するものです。アジア諸国の農民の最も切実な要求は自作農になることであり、農地改革を要求するたたかいが前進しています。アジアの農民がうらやむ日本の農地制度を改悪する動きは、こうした世界の流れに逆行するもので許されません。 「農地は、その耕作者みずからが所有することを最も適当であると認め……耕作者の地位の安定と農業生産力の増進をはかることを目的とする」(農地法第一条)という理念を守り、資本による農地支配を阻止する運動も今年の重要な課題です。この運動を自治体や農業委員会と協力して耕作放棄地を解消する運動とあわせて進めます。 (3)アメリカ産牛肉の輸入再開をめぐって 1、食の安全よりもアメリカと大企業の利益を優先した輸入再開 政府が十二月、圧倒的多数の国民の声を無視してアメリカ、カナダ産牛肉の輸入解禁を強行したことは容認できません。 政府は、一昨年十月、アメリカの圧力に屈して輸入再開にむけた「日米合意」を結び、国内の全頭検査の見直しをゴリ押しし、「輸出プログラム」が順守されるという仮定を前提にした諮問を食品安全委員会に行うなど、輸入再開のために食品安全委員会を利用してきました。しかし、食品安全委員会「答申」は、安全評価について「科学的評価は困難」と明確に結論づけをしました。科学的知見を旨とする食品安全委員会が「科学的評価は困難」とした結論は重く、これ自体、輸入を再開するために食品安全委員会を利用しようとした政府のねらいを破たんさせるもので、農民連、食健連の奮闘をはじめとした国民世論の成果です。 同時に、食品安全委員会は、政府が諮問した輸出プログラムが守られると仮定すれば日本の牛肉との「リスクの差は非常に小さいと思われる」という矛盾する記述をおこないました。これは、食品安全委員会の役割放棄に等しいもので、許されるものではありません。 今回の輸入再開は、政府が経済や貿易を食の安全よりも優先するアメリカの圧力に屈し、国内の大手外食企業の要求を優先したという点でも、また、食の安全リスクを国民に負わせるという食品安全行政を一大転換したという点でも重大です。 2、アメリカのBSE検査の実態と危険なアメリカ産牛肉を告発して 韓国がアメリカからの骨つき牛肉の輸入を拒否しており、圧力に屈して輸入再開した日本政府の態度は許されません。この不当性を引き続き告発するとともに、輸入が再開されたもとで、国民の要求に立った運動展開が求められています。 (1)ズサンなBSE検査の実態と、危険なアメリカ産牛肉を告発 輸入が再開されたとはいえ、危険部位の除去の不徹底、月齢判断、肉骨粉の規制など、アメリカのBSE対策のズサンさは明りょうです。政府が行うとしている「査察」も査察の名に値しない形式的なものです。この間の運動の成果を踏まえ、アメリカの消費者団体、労働組合などと提携して現地情報をチェックし広く国民に知らせる運動を進めます。また、成長ホルモンの使用実態など、アメリカ産牛肉の危険な実態を暴露するキャンペーンを展開します。 (2)原産国表示の徹底を求めて 厚労省は今年十月から外食も含めて新たな牛肉の原産国表示のガイドラインをスタートさせるとしていますが、強制力のない「お願い」の範疇(はんちゅう)であり実効あるものにはなりえません。 「国民もリスクを共有せよ」というなら、加工や外食を含めた原産国表示をすることは不可欠であり、政府に向けて運動を展開します。また、食健連などと共同して直接、業界や店舗を訪問して牛肉の原産国表示を求める運動も進めます。 (3)消費者団体との共同、産地での畜産団体との共同を アメリカ産牛肉の輸入再開は食の安全とともに畜産農民の経営に大きな影響をもたらします。全国の産地で農民連と畜産団体の共同が広がっています。消費者団体だけでなく産地での畜産団体との共同を重視します。 国に対して自治体が担っている国内の全頭検査への助成継続を要求することも重要です。すべての都道府県議会と市町村議会への請願運動の展開、食の安全と産地を守る集会など多様な行動に取り組みます。BSEビデオの普及と上映、パンフレットの普及と学習を引き続き進めます。 (4)安全・安心の牛肉・豚肉、畜産加工品を供給する運動 七割の国民がアメリカ産牛肉を「食べたくない」という声を上げています。安全・安心の畜産物を供給する取り組みをふるさとネットワークと共同して推進し、加工施設をもっている団体、中小流通 業者との提携を実践的に探求します。
(新聞「農民」2006.1.30付)
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[2006年1月]
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