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第16回大会

第二回全国委員会への報告(1/4)

二〇〇六年一月十四日 農民連常任委員会

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 1 全国委員会の目的と任務

 昨年は、数年来続いている輸入農産物の激増と流通大企業の買いたたきによって農産物価格の暴落がさらに進み、農民経営と産地の危機がますます深化した一年でした。また、国のあり方にかかわる憲法改悪の危険な動き、消費税増税をはじめとした大増税と国民負担の増大、食糧の外国依存をさらに強め、国内農業を破壊する「構造改革」など、国民を犠牲にして大企業と一握りの者だけが生き延びることのできる「国家改造」が「改革」の名で推し進められています。しかし、米軍基地の再編やBSE問題にみられるようなアメリカいいなり政治、小泉首相の侵略戦争への無反省と靖国神社参拝がアジア諸国からの孤立を深め、「小泉改革」と国民との矛盾も抜き差しならないほど深まっています。

 農民連は、国際的な新しい動きと連携しながら「もう一つの流れ」を草の根から世界の流れにするために全力をあげ、改憲阻止や平和を守る国民共同を広げ、危険なアメリカ産牛肉の輸入解禁、九割の農民を切り捨てる「品目横断的経営安定対策」など、国民の暮らし、農業と農民経営、国民の食糧にかかわる問題について農民や国民の目線にたってたたかってきました。また、生産の拡大と国民的ネットワークづくり運動の推進、食健連とともに百八名の代表をWTO閣僚会議(香港)に派遣し、国際連帯を力にWTOとのたたかいに尽力しました。こうした運動は農民連への共感を広げ、期待を高めています。

 全国委員会の目的は、第十六回大会決定を基本に、この間の活動の到達点と今日の激動の情勢下での農民連の役割を確認し、〇六年の活動方向を意思統一、第十六回大会で提案した「行動綱領の一部改正案」を議論し決定することです。また、憲法改悪と国民大増税、「農業構造改革」の攻撃を跳ね返し、小泉「改革」を国民的に包囲するたたかい、農業をめぐる新たな情勢のもとで、情勢に対応できる農民連の組織と運動の新たな発展方向を議論し、会員と新聞「農民」読者拡大のうねりをつくることです。

2 情勢とたたかいについて

[1]改憲、国民大増税、暮らしの破壊の緊迫した情勢とたたかいについて

(1)改憲阻止のたたかいについて

 総選挙後の政治情勢の特徴は、自公が衆議院の三分の二を独占して悪政を暴走させ、民主党が「改革競争」の名で与党と一緒に悪政を推進する状況がつくられたことです。自民党が改憲草案を打ち出し、自公民が〇六年の通 常国会に改憲に向けた「国民投票法案」の提出を合意するなど、緊迫した局面 を迎えているなかで改憲阻止の国民的世論と行動をつくることは今年の最重要課題です。

 改憲は九条に矛先を向け、先制攻撃を禁じた国連憲章を無視するアメリカが引き起こす戦争に日本が軍隊を送り出せるようにすることがねらいです。運動の基本は、「農林水産九条の会」を含め四千以上の地域・階層に広がっている「九条の会」をさらに網の目に広げること、「憲法改悪反対共同センター」に結集し、すべての都道府県・地域に世論と行動を広げる「共同」組織をつくり、改憲に反対する署名を中心に位置づけ、国民過半数をめざして推進することです。

 すべての都道府県連と単組が共同組織と協力して県民・住民過半数の署名目標をもち、学習を力に会員一人十筆を当面の目標として大きく広げましょう。また、運動に弾みをつけるために県・地域ごとにいち早く住民過半数の署名を集める先進地域をつくりましょう。第二次のチラシを活用し、「農林水産九条の会」の賛同者を広げ、都府県やブロックに「農林水産九条の会」をつくり、憲法を守る世論を広げましょう。

 農民連の独自行動として「守れ憲法・九条苗リレーキャラバン」を呼びかけます。「九条苗リレーキャラバン」は稲の苗を北海道と沖縄を基点にリレーし、拠点地域で宣伝や集会、申し入れ・懇談を行い、全都道府県連をまわり、「国民投票法案」が重大な局面を迎える五月に東京に集結します。

(2)国民大増税阻止など、国民的運動

 小泉内閣が閣議決定した〇六年度予算案には、所得税・住民税の定率減税の全廃、高齢者の自己負担増など、新たに二兆七千億円の国民負担増が盛り込まれ、さらに今後三年間に実施する年間負担額三兆九千億円を合わせると六兆六千億円にのぼります。

 さらに〇五年六月に財界の強い要求を受けた政府税調「報告」は、大企業減税はそのままにして、〇七年から消費税率を二ケタ台に引き上げる方向とともに、所得税・住民税の定率減税の廃止、配偶者控除、扶養控除、給与所得控除など各種控除を廃止・縮小するという大増税計画を打ち出しています。これが実地されれば二十四兆円規模の増税であり、農民経営にとっても国民の暮らしにとっても死活にかかわる問題です。また、今回の増税攻撃は累進課税の理念を投げ捨て、大企業と大金持ちだけが生きのびる小泉「改革」の税制版というものです。

 一方、国民の反対世論の前に、増税を先送りする発言が政府与党から出ているように、大増税に国民の抵抗が強く、増税推進側にとっても一種の賭けにならざるをえません。都道府県や地域単位の共同組織に結集して宣伝・署名を推進し、増税阻止の一点で流通業界、商工会、農協などとの共同を広げ、農村で増税を許さない世論と行動を広げましょう。核戦争阻止・核兵器廃絶の運動、介護制度の充実と負担軽減、福祉切り捨てを許さない運動などを共同の力を広げて推進します。

(3)「小さな政府」「官から民へ」などの間違った考え方への反撃と共同

 小泉内閣は、「小さな政府」「官から民へ」をうたい文句に国民を分断し、公務員や農協、兼業農家などへのバッシングを強め、公務員減らし、公共サービスの民営化、福祉切り捨て、農政「改革」などをゴリ押ししています。

 昨年十二月に「規制改革・民間開放推進会議」が打ち出した第二次答申は、今後の工程表です。この小泉「改革」がもたらすものは、大企業へのビジネスチャンスの提供であり、国民に対しては生活と地域の破壊であることは、この間の農業分野でのできごとからだけでも一目りょう然です。すなわち、食糧庁が廃止されて政府が米の流通責任を放棄して民間流通化したことは「小さな政府」「官から民へ」の最たるものでした。その結果、大手の米卸が米流通を一極支配し、米価の大暴落となって生産者に押し寄せています。農協事業の分割攻撃も、農協の事業と資産をめぐって大企業や大手金融資本にビジネスチャンスを提供することにほかなりません。また、「三位一体改革」をはじめとした一連の「改革」は、重大な農山村の切り捨てです。

 国民を分断する宣伝に対し、そのねらいと国民や地域にもたらす弊害を広く明らかにして反撃し、地域ぐるみの助け合いと提携を広げ、一人ひとりの住民が大切にされ、住み続けることのできる地域づくりが求められています。こうしたとりくみを小泉「改革」を打ち破る「国民のたたかう力」をつくる運動として発展させましょう。

[2]今日の農業・食糧をめぐる情勢とたたかい

(1)戦後農政を最終決算する農業「構造改革」について

1、 政府の責任を棚上げした戦後農政の最終決算

 昨年十月、農水省は「新基本計画」の具体化として「経営所得安定対策等大綱」を打ち出しました。「大綱」は、日本農業を危機に追い込んだ政府の責任を棚上げし、国際的孤立を深めているWTO協定を絶対視するとともに財界の要求に応えて、さらに輸入自由化を推し進め、国際競争力に勝てない農家を切り捨てる冷酷な小泉流「構造改革」そのものです。

 大綱は、これまでの全農家を対象にした小麦、大豆などの品目ごとの価格保障を全廃し、〇七年から「諸外国との生産格差の是正」(げた)と「収入変動による影響緩和」(ならし)を組み合わせた「品目横断的経営安定対策」を打ち出しています。しかし、対象は認定農業者で都府県四ヘクタール、北海道十ヘクタール、特定農業団体(集落営農)で二十ヘクタールであり、全農家の一割以下、対象となる農地は六割であり、四割は切り捨てるというものです。多数の農家を農政の対象から排除し、外国から輸入される安い農産物との競争にさらす冷酷なものです。

 今、食料自給率を向上させるために担い手を増やすことこそ緊急の課題であり多数の農家を排除することほど逆立ちはありません。「大綱」は、ものを生産する農民がいなくなるほどの打撃を日本の農業にもたらし過疎を加速させるなど、農村地域社会を崩壊させかねないものであり絶対に容認することはできません。

2、「品目横断的経営安定対策」は「担い手」の経営維持に役立たない

 「大綱」は、WTOやFTAによって関税を引き下げてさらに輸入を拡大し、アメリカや中国などの安い輸入原価と競争することが前提です。一切、価格保障を否定して「品目横断的経営安定対策」を実施しても、「担い手」の経営を維持することはできず、 「経営安定対策」の名に値しないことは明白です。

 農業と工業の違いをわきまえず「効率化」を唯一の基準にすることほど愚かなことはありません。農業は農地と耕作する農民が存在してこそ成り立つのであり一度失ったら取り返しがつかない農業の特質を顧みない亡国農政を批判するとともに、多様な形態の家族経営を価格保障と直接支払いで支える経営安定対策を要求します。同時に農業の存立にかかわる歴史的事態のなかで農民運動の真価を発揮してたたかい、地域農業の発展を願う自治体や農協、広範な関係者との共同を強め、自主的助け合いによる生産の拡大に全力をあげます。

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(新聞「農民」2006.1.30付)
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2006年1月

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