「農民」記事データベース20050627-689-08

アメリカBSE汚染の深刻さ実感(3/3)

全国食健連訪米視察団に参加して

関連/アメリカBSE汚染の深刻さ実感(1/3)
  /アメリカBSE汚染の深刻さ実感(2/3)
  /アメリカBSE汚染の深刻さ実感(3/3)


食肉処理現場からの告発は巨大企業の圧力で消された

 坂口 企業の不正を指摘した食肉検査官の報告は農務省が握りつぶし、クリークストーン社のような自主的全頭検査の動きは政府によって抑え込まれる。実は今回の視察でタイソン社の労働組合とぜひ会いたいと思っていた。しかしすでにつぶされていた。このチームスター労組五五六分会は、昨年来日して食肉処理現場の実態を告発したんだ。こうやって一つ一つ、大企業に不都合な動きをつぶしていく。ここに本当のアメリカの怖さがあると思った。

 佐々木 パティ・ロベラさんは「日本の消費者の運動が結果としてアメリカの対策の充実につながる」と語っていた。日本政府に全頭検査を堅持させ、アメリカにもき然とした態度で万全な対策を求めることは、第一義的には日本の消費者・農民のためだが、それが世界に与える影響は大きい。

 輸出でもうけ、輸入でももうける

 坂口 「アメリカには輸出しないとアメリカの農業は成り立たないという神話がある」と、シーバー・ピーターソンさんが話していた。輸出される牛肉は生産量の一割程度だが、アメリカ政府は執ように圧力をかけてくる。それは、農家のためではなく、巨大アグリビジネスのためだ。

 佐々木 そう。アメリカは、日本や韓国などに牛肉を輸出する一方で、それを上回る量をオーストラリアなどから輸入している。その両方にアグリビジネスがからんで、輸出でも輸入でももうける“ノコギリ商法”をやっている。

 石黒 そういうなかで最近、直売所やファーマーズマーケット、学校給食に地場産を供給するとりくみなど、産直運動が急速に広がっているという話だった。

 佐々木 シーバーさんは大豆とトウモロコシの農家だが、四分の一の畑で野菜を作り、ミネアポリス市内に二十六カ所の直売所を開いている。今では、直売所の売り上げが経営の柱になっているという。

 一方、飛び込みで話を聞いた農家は、巨大な機械を使って、七百ヘクタールの農地で遺伝子組み換え大豆・トウモロコシを作っている。たぶん一般的なアメリカの農家だろう。あの機械代の償還だけでも経営は楽ではないだろうなと想像できた。

ホルモン剤,抗生物質漬け

遺伝子組み換え作物が主流に

 坂口 マイク・カリクレイトさんも、千五百頭の肉牛肥育農家だが、直売所を開いているほか、六十カ所以上の地元レストランに、ホルモン剤や抗生物質を一切使わない牛肉を卸している。

 石黒 カリクレイトさんは、ホルモン剤、抗生物質を使わないことをウリにしていた。ということは、アメリカの牛肉生産では使うのが当たり前ということだ。カリクレイトさんは「そういう薬剤はどこでも売っているし、自由に使える。逆に使わなければ競争に勝てない」と言っていた。ホルモン剤漬け、抗生物質漬けだ。

 佐々木 遺伝子組み換え作物も、こんなにアメリカで主流になっているのかと驚いた。結局、モンサントなどの支配下に入って、個々の農家の努力や工夫が少なくなっている。営農指導から農薬・種子の供給、販売の戦略まで大手に握られている。規模が大きくなればなるほどガンジガラメにしばられる。アメリカの農業が苦しんでいると感じた。

 石黒 全米家族農家連合(NFFC)のキャサリン・オザー事務局長は、カーギルやコナグラなど巨大アグリビジネスが独占的に支配していて、アメリカの農民はそういった大企業に支配された奴隷農家だと言っていた。そのもとで規模拡大を迫られ、ホルモン剤などを使わざるをえないと。結果として、消費者のためにもなっていないと語り、そういう生産を変えるために、日本とアメリカの農家・消費者が手を組まないといけないと強調していた。

 日米の農民の交流を呼びかけ

 坂口 BSE問題は、大規模・輸出型の農業の内包する問題を象徴している。スタウバーさんは「日本政府がアメリカ産牛肉を解禁しないよう思いとどまらせるために、世界中が協力しよう」と呼びかけていた。

 佐々木 日本とアメリカの農民の交流が、グローバリゼーションに対する“もう一つの流れ”を作っていくうえで大きな役割を果たすだろう。

〔前ページ〕<< □         

(新聞「農民」2005.6.27付)
ライン

2005年6月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2005, 農民運動全国連合会