「農民」記事データベース20050418-680-07

徹底検証

政府の農政新「基本計画」は何をねらっているのか(3/4)

輸入増え 安値は続き将来(さき)みえず
世直しせねば 生きる術(すべ)なし(詠人不知)

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「集落営農」の前途は…

村の崩壊みちびく危険も

 農業団体の中には、集落営農を「日本農業の実態、特性を踏まえた構造改革のポイント」と持ち上げるむきもあります。しかし、新計画が言っている集落営農は、現在、農地の利用調整や機械の共同利用のために、各地で懸命にやっている集落営農とは大違い。

 農水省が示しているモデルでは、四十四ヘクタールの集落営農経営で「農民」といえるのは、たった一戸。三十〜四十戸の集落で、一戸だけ農民を残し、あとは全部やめることを「合意形成」する――こんなことができるはずはありませんし、これを強行すれば、村はこわれてしまいます。さらに、自家飯米さえ買わなければならなくなるという事態さえ想定されます。


 集落営農とは

 集落をひとつの単位に営農。現在約一万ある集落営農のなかで、九割は集落内の農地調整と機械の共同利用を目的とするもので、「集落内の営農を一括管理・運営」は十二%にすぎない。米改革ビジョンで認定された「集落型経営体」は、全国でわずか百十三組織。


米価暴落で悲鳴

大規模農家も数百万減収に

 一方、政府が育てようとする「担い手」はどうでしょうか。「品目横断的」と言われる「経営安定対策」が二〇〇七年から実施される予定ですが、これはWTO・FTAの自由化・関税大幅引き下げを前提に、国産農産物をアメリカや中国からの輸入原価と裸の競争にさらすもの。これでは、経営「不安定」対策ではないでしょうか。現にいま、米価暴落で大規模農家は数百万円の減収で悲鳴の声をあげています。

 農水省は、新「基本計画」で、水田十四ヘクタールの経営で年間所得五百三十万円というモデルを示していますが、その前提は、米価一俵(六十キロ)あたり一万六千四百四十五円。

 ところが米価が一万二千円に暴落すれば、所得はわずか百六十六万円!(図)。十六ヘクタールも作って、パートかアルバイト並みです。これが農水省が育てようという「担い手」の年収です。再生産費も保障されない米価で、どうして農業を続けることができるでしょうか。

 いま求められている政策は、全国稲作経営者会議(会員約千五百人、平均経営規模約二十ヘクタール)の井田磯弘議長が、「下支えのセーフティ・ネットが欠落している。第二次生産費(一万四千円)を下回った場合には、その差額を補てんするような『最低粗収益保障制度』の創設がぜひとも必要」(農業協同組合新聞05年2月1日)と述べているように、価格政策をベースに直接支払い制度で補完する仕組みです。


小規模農家救えぬ

岩手の農家 久保田彰孝さん

 政府が推し進める担い手への集約を中心とした集落営農では、小規模農家を救うことはできない。県内でも集落ビジョンづくりのなかで「一元経理をめざす」というが、簡単には進んでいない。それをムリに推し進めれば地域社会が破壊されてしまうだろう。

(新聞「農民」2005.4.18付)
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2005年4月

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