「農民」記事データベース20050418-680-05

徹底検証

政府の農政新「基本計画」は何をねらっているのか(1/4)

これが小泉流戦後農政総決算工程表?!

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 小泉内閣は三月二十五日、今後十年間の農政の方向を示す新たな「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定しました。

 形のうえでは五年ごとの計画見直しですが、今回の新基本計画の口火を切ったのは小泉首相です。FTA(自由貿易協定)交渉が進まないことにイラだった財界の意向を受け、小泉首相が二年前の〇三年十月に「これ以上『農業鎖国』は続けられない。農業構造改革は待ったなしだ」と言い放ちました。審議会の議論がスタートしたのは、この小泉発言の二カ月後。やり方も内容も、新「基本計画」は、さらに輸入自由化をすすめ、国際競争に勝てない農家を切り捨てる小泉「構造改革」戦後農政の最終決算の“工程表”というべきものです。

 新「基本計画」の内容を検証しました。


食料自給率目標を放棄

無責任な数字操作でごまかし

 新「基本計画」の中で、焦点となっていた食料自給率(カロリーベース)の目標は、これまでの「基本計画」で定めた「二〇一〇年度までに四五%」を棚上げし、五年先延ばしして二〇一五年度の目標にしました。

 この五年間で、自給率は五%アップどころか、小数点以下でいえば下がっています。ところが政府は、自給率が上がらなかったのは、消費者が飽食を改めず、輸入激増と価格暴落のもとで、農民が「計画」どおりに生産しなかったからと国民に全責任をかぶせ、政府自身の責任にはまったくほおかむりしています。

 それもそのはず、いまや農政をあやつる財界の本音は、「現段階で食料自給率の数値目標を掲げるべきではない」(経済同友会二〇〇四年三月)。しかし、さすがに国民世論の前にそれはできず、そこであらわれたのが、金額ベースの自給率(七〇%)です。

 四〇%ではいかにも低い印象を与えるが、七〇%だとそうでもない――。見えすいたパフォーマンスと舌先三寸で政権を維持してきた小泉首相ならではの“猫だまし”――これが、金額ベース自給率をカロリーベース自給率と同格の目標にした最大の動機です。

 そもそも金額ベースの自給率は、為替相場や関税に左右され、円高になれば自給率が上がることになります。国民の食料の実態を示す指標としても、国際比較のデータとしても、ほとんど使い物にならない金額ベース自給率を、財界の要望にこたえて使うことにしたところに、まじめに自給率向上に取り組む気がないことが示されています。


食料自給率目標とは

 カロリーベース自給率は、人間が生きていくうえで不可欠なエネルギーをどの程度国内でまかなえるかを示したもので、国民一人一日あたり国産熱量を国民一人一日あたり供給熱量で割った数字。一方、金額ベース自給率は、国内生産額(十兆六千億円)を国内消費仕向額(十五兆二千億円)で割った数字。


「基本計画」とは

 農政の基本法である食料・農業・農村基本法では、「情勢の変化と施策の評価を踏まえ、五年ごとに基本計画を変更する」となっており、今回の見直しでは、二〇〇六年度から二〇一五年度までの十年間を対象にしています。これまでの計画は、二〇〇〇年三月に決定、食料自給率を二〇一〇年度には四五%に引き上げる目標などを掲げました。

(新聞「農民」2005.4.18付)
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2005年4月

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