「農民」記事データベース20050418-680-06

徹底検証

政府の農政新「基本計画」は何をねらっているのか(2/4)

輸入増え 安値は続き将来(さき)みえず
世直しせねば 生きる術(すべ)なし(詠人不知)

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価格暴落は野放し

生産者、消費者に犠牲強要

 国民が望んでいるのは、国内生産を拡大して自給率を引き上げることです。ところが政府の自給率「向上」の決め手は、消費を減らすこと。計画では牛肉と乳製品、野菜の消費が多少伸びることを見込んでいますが、これ以外は軒並み減少の見通 し。一方、品目別生産努力目標をみると、ほとんどの作物で前計画の目標を下回り、現状維持がやっと。

 消費者は、「適正な食事のありかた」を示したフードガイドにより「食育」を通じて“食い改め”、生産者は、農産物の全面自由化と価格保障政策の全面放棄のなかでも、価格暴落にもめげずに生産を続けろというわけです。

 国内生産の増大をはかるためには、農産物輸入に歯止めをかけ、農家の生産コストを償う価格保障を復活することが必要です。しかし、こういうまともな「農業政策」を実行する気はサラサラなく、消費を減らして自給率を「引き上げる」――これでは「目標」の名に値しません。

エッ 一俵五万九千円で売れる?

担い手農家も仰天
農水省のモデルプラン

 新「基本計画」では、「経営安定対策」と称して、政策の対象を一部の「担い手」にしぼりこんでしまおうとしています。新「基本計画」で示されている「農業構造の展望」は、まさに農家のリストラ計画(下の図)。

 経団連は「数千年来の家族営農というビジネスモデルを見直すべきだ」と放言し、「小規模等のため生産性が低い農家の農業からの撤退」を求めましたが、まさにこれの具体的計画です。

 そのうえで農水省は、小規模・兼業農家の行く末を三つあげています。(1)生産から全面 撤退し、「担い手」に農地を貸して“地主”になるか、(2)水路の草刈りなどに参加して年十万円の“小遣い”をもらうか(集落営農)、(3)「高付加価値」型農業で現在の米価の四倍以上という途方もない価格(一俵=六十キロ五万九千円!)で売って生き残るか――です(四コマ漫画)。


本当の健康食を

家庭栄養研究会 蓮尾隆子副会長

 いま「食育」がビジネス化されようとしています。本当の「食育」は、「健康食品」ブームにみられるようなサプリメントの常用ではなく、毎日の食事の大切さ、健康によい食べ方を正しく伝えることではないでしょうか。その土台に、安全・安心な国内の農畜水産物の生産がきちんと座っていなければならないと思います。


百姓をばかにするな

石川の農家 牧田孝允さん

 私も有機米を作っているが有機農業のなんたるかも理解せず、私たちの気持ちを踏みつける内容だ。「一俵五万九千円の有機米を生産し続けろ」とは何事だ。こんな高値の米をだれが買うのか。百姓や消費者をバカにするのもいいかげんにしろと言いたい。


実情は一万円以下

埼玉の農家 原 秀夫さん

 私も十五ヘクタールで米作りをしているが、米価暴落でここでは一万円以下で買いたたかれている。「米改革」で打ち出された稲得(経営安定対策)もなんら足しになっていない。今後「担い手」といわれてもやっていけるのか。

(新聞「農民」2005.4.18付)
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2005年4月

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