豊作喜べる改革こそ必要だ千葉 コメどころルポ
農水省の生産調整研究会が中間取りまとめを発表してから約二カ月。稲作農家は、稲の刈り取りが始まったこの夏、「米つぶしを許してたまるか」と各地で怒りの声を上げました。 規則正しいコンバインのエンジン音が、利根川の南西に広がる稲穂の波の上を渡っていきます。 「無事に収穫できればいいが、刈り終わってみなければ安心できない」 千葉県柏市船戸に四十ヘクタールの田を持つ大規模稲作農家、染谷茂さん(53)の日焼けした顔は、心なしか緊張気味です。 「収穫の喜びというのは、人がいうほど感じていない。苦しみですよ。生活もあるし、人も雇っているし、借金もある。経営となると、すべて刈ってみないと決まりがつかないんだよね」 「米価が下がることはある程度覚悟したから」という染谷さんは、経費節減に知恵を絞ってきました。それまで三年か四年で交換していたコンバインも、五年、六年と「使えるだけ使う」作戦です。 それだけ大事に使っている農機具ですが、「米の価格は三分の二になったというのに、農機具ばかりか肥料も、米袋一つとったって昔のままの価格だ。下がったのは生産者の手取りだけだ」と、染谷さん。そのことがどうしても腑に落ちません。
大規模ほど打撃米価の下落は、染谷さんのような「担い手」といわれる大規模農家ほど打撃を受けています。しかし中間取りまとめは、市場原理にまかせて、米価をもっと下げようとしています。主役の農民が脇役以下に扱われる。そんな農業を粗末にする政治、社会の風潮。「農家だって、農業が社会的に認められないと、やっていても誇りを感じなくなる」。染谷さんの実感です。 千葉県君津市山本で十・五ヘクタールの田んぼとともに、施設ハウスもやっている常住文夫さん(54)は、「米作りだけで生活したい」といいます。「夫婦二人と、雇用者一人でやっているので、ほかのものを作る余裕はない」からです。だから「そのためには一年間生活できるだけの収入がほしい。田んぼは増えてもいいから」と思っています。
一千万円も減少「米が一俵二万円のときなら、最低限の生活はできた。だけど一万八千円でも苦しいのに、いいときから比べると一万円下がっている。米だけで年間の売り上げが一千万円は落ちている」そんな状況で「米はあるのに、なぜ輸入する必要があるのか」と常住さん。ところが生産調整研究会は、「輸入米の影響はない。あっても心理的影響だ」といって、農家の思いに背を向けます。 常住さんも、いまでは豊作の喜びはない、と言い切ります。 農民が豊作を素直に喜べる農政。いま待たれているのは、そのための改革ではないでしょうか。
農業委員が地振研究会愛媛県農民連他「地域農業の振興研究交流集会」が七月二十六日、愛媛県今治市の中央公民館で開かれ、中山間地の直接支払い問題など、農業振興について交流しました。これは、農業委員会選挙後、新たな農業委員を中心に今後の地域農業のあり方などで研究交流しようと、愛媛農民連と実行委員会が主催したもので、四十五人が参加しました。京都府農業会議の元事務局次長で立命館大学講師の渡辺信夫氏が「地域農業の振興と農業委員会」と題して講演。中山間地の直接支払い制度を活用した荒廃地の再生、村起こしの実例などを挙げて興味深い話を聞きました。また、価格下支え制度を作った自治体農政、食べ物の安全性と学校給食の取り組みなどの報告も出されました。 (愛媛農民連 大野政信)
(新聞「農民」2002.9.2・9付)
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[2002年9月]
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