米の受給と価格に国が責任を持ち、農家の工夫や努力が生かされる米政策を米「改革」に対する見解と私たちの提案(5/5)二〇〇二年七月農民運動全国連合会/米「改革」に対する見解と私たちの提案(2/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(3/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(4/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(5/5)
(5)家族農業経営にこそ生命力! 日本には農業と農民が必要だという合意を武部農相は「(稲作は)一ヘクタール未満が八割。これはガーデニングに近い。民間企業の参入が必要だ」と言い放ち、農水省と日本経団連とのトップ会談では、農業への大企業の参入で合意しました。小泉内閣の「総合規制改革会議」は、家族経営に農業はまかせられないといって、大企業に農地取得・支配を認める「全面参入」方針を打ち出しました(七月二十三日、「中間取りまとめ」)。しかも、政府は、こういう企業農場に対して「支援策を集中化・重点化」することさえほのめかしています。 私たちはこう考えます (1)日本の農地の面積当たり人口扶養力はアメリカの十三倍、ヨーロッパの三〜四倍。こういう生産力の高さが、狭い日本列島に多くの人口を抱えてきた条件であり、日本の小規模農耕を歴史的に規定してきました。土地をめぐる歴史的条件が入り組んでいる日本で「一ヘクタール程度の稲作はガーデニングだ」などとヤユし、欧米並みの「構造政策」を性急に追求すること自体に無理があります。 (2)農業は家族経営を基本に営まれるべきです。リストラと国内産業の空洞化が進んでいるなかで、農業から農民を追い出し、失業を増加させ、日本をますます「ものを作らない国」にする政策をとるのは愚の骨頂です。 しかも、日本は世界一の長寿国であり、高齢者は高齢者としての経験をいかし、大規模農家も中小規模農家もそれぞれの役割を果たしあいながら、地域・集落の農業を維持し、環境や国土を守り、農業の多面的機能をいかんなく発揮することこそ合理的であり、持続可能です。こういうなかでこそ後継者も育つでしょう。 荒廃がとくにひどい中山間地域や市街化区域への直接所得補償の改善や固定資産税の減免なども緊急に必要です。 (3)大資本の農地支配のための農地法改悪が検討されていますが、これはただちに中止すべきです。資本に乗っ取られ、持続可能でも国土保全的でもなく、安全・新鮮・本物・旬への志向を強めている国民のニーズにこたえることができない「工業型農業」ではなく、その対極にある家族農業経営をこそ守るべきです。 いまこそ、国民的な対話と共同を 世界でも最高水準の生産力を誇る水田。国土面積の八割に責任を負う農林業。命の源である食料。日本には、現在も将来も農業と農民が必要です。 雪溶け水で田植えして、梅雨の雨が苗を育て、熱帯にも匹敵する夏の暑さと陽光が穂をはぐくみ、秋晴れが米を肥らせる――日本の農民は、日本列島の自然の力の利用と勤勉によって、何千年にもわたって稲作を発展させてきました。 目先の利益に走って、こういう価値を売り飛ばそうとする者たちには、道理も未来もありません。BSE、インチキ表示、次々に検出される輸入農産物の残留農薬……。「安心・安全な国産農産物を」の声は列島に満ち満ちています。 ものを作ってこそ農民です。希代の農業つぶし政策が検討に付されているいまこそ、正直、本物の農産物をおおいに作って国民の期待にこたえながら、農業と食糧、米を守る国民的な対話と共同を広く呼びかけようではありませんか。
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(新聞「農民」2002.8.12付)
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[2002年8月]
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