米の受給と価格に国が責任を持ち、農家の工夫や努力が生かされる米政策を米「改革」に対する見解と私たちの提案(3/5)二〇〇二年七月農民運動全国連合会/米「改革」に対する見解と私たちの提案(2/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(3/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(4/5) /米「改革」に対する見解と私たちの提案(5/5)
(3)輸入自由化をあてこんだ米つぶしのための減反拡大はやめよ(1)輸入自由化と「米ビジネス」のための減反これまで、減反は「食管を守るため」「米の輸入を防ぐため」と言われてきました。しかし、食管制度がつぶれ、米輸入が自由化された九五年以降は「米価を維持するため」の減反ということになりました。ところが、減反をいくら拡大しても、米価は下がるばかり。自民党政府の政策の破たんは誰の目にも明らかです。 そこで研究会が言い出したのは「誰のため、何のための減反か?」です。 「誰のため」か? 政府と研究会が、やたらに力を入れている「米ビジネス」のためです。 「何のため」か? 加工用やエサ用を含む超安値の米作りを迫り、それができないのを見越して米輸入を完全に自由化するためです。 減反強化で農民の生産意欲をますます失わせるとともに、米の生産基盤そのものをこわして、いやおうなく輸入に依存せざるをえなくする――こういうねらいが透けて見えます。
(2)転作奨励金を廃止し一俵八千円以下に暴落させて米不足に政府や研究会がえがく青写真は「将来」と「経過期間」の二段階です。「将来」の姿は、(1)国は減反目標を設定せず、せいぜい米市場の情報を提供するだけ、(2)転作奨励金などの支援も一切しない、(3)農家は、政府の「情報」にもとづき、暴落を覚悟のうえで減反するかしないか、どんな米をどれくらい作るかを決める――というものです(食糧庁が研究会に提出した「生産数量調整手法の考え方」による)。 一見「自主減反」のように見えますが、そんな甘いものではありません。 覚悟を迫られる「暴落」の水準は驚くべき低さになることは間違いありません。食糧庁が昨年試算した主食用米の暴落水準は、現在の半値の一俵八千円。これで米生産が激減し、不足になって一万二千円まで回復するという想定でした。 しかし、いま研究会で検討されているのは、一俵千円以下という飼料米を含めてのことで、暴落の水準は八千円どころではありません。 そのうえ、水田の「畑地化」や「構造改革特区」構想などによる農地転用によって水田面積自体を大幅に減らすことも計算ずみです。 これらを通じて日本の米生産が壊滅的な打撃を受け、米不足の事態になれば「減反配分」の必要などない――これが、研究会がえがく「あるべき米作りの姿」です。 これでは、アメリカとWTO、財界のための“あるべき米つぶしの姿”ではありませんか。
(3)「経過期間」中は減反百五十万ヘクタール?当面の「経過期間」は“あるべき米つぶしの姿”に移るための「移行期間」です。その中身は (1)減反面積の配分ではなく、農民に対し「これ以上絶対に作るな」という数量を、しかも銘柄別に配分する (2)数量配分は政府・都道府県以外の「第三者機関」が行う (3)現在の減反配分は「リセット」(御破算に)し、県・地域間の生産数量目標の調整も「第三者機関」が行う (4)減反をやったうえで出る余り米は農民の「自己責任」で処理する――というものです。 しかし、米の銘柄別の需要を都道府県別・全国ベースで予測するなどということを「第三者機関」が本当にできるのか、大いに疑問です。 そして、農民にはいいかげんな予測にもとづいて生産統制的な数量配分を行って、少しでも余り米が出ればペナルティ的に超安値処理を行わせる――。しかも次に見るように、流通は完全自由化する一方で、農民には戦時中のような生産統制を強要する――こんなやり方が通用するとでも思っているのでしょうか! 加えて食糧庁は、米の需要減退によって「今後毎年、生産調整を五万ヘクタールずつ拡大しなければならない」と予測し(針原企画課長、「中間取りまとめ」説明会で)、加倉井弘・研究会流通部会長(前NHK解説委員)は「減反は百五十万ヘクタール必要だ」と脅しています。これでは、米作付面積よりも減反面積がはるかに多い「減反国家」になってしまうでしょう。 さらに、政府と研究会がまったく念頭に置いていない米の不作・凶作が襲ったら、米パニックさえ再来しかねません。
私たちは提案します「輸入しながら減反とはなにごとか!」の怒りを出発点に(1)まず、ミニマム・アクセス米輸入を削減・廃止し、減反面積を十五万ヘクタール減らすべきです。(2)数量配分は、米を一粒でも多く収穫したいという生産農民なら誰でも持っている願いにまったく逆行し、生産意欲を決定的につぶすものです。大資本には米流通支配の「自由」を認め、農民には封建時代にも戦時中にもやらなかった「統制」を押しつけるなどというバカげたことはやめるべきです。 (3)私たちは、政府が宣伝するほど「米の潜在生産力」があるとは考えません。農作業を委託に出したい人は数多くいても、受託する人が減っているのは、その一例です。 同時に、転作条件の整備に力を注ぎ、自給率が異常に低い麦、大豆、ナタネ、ソバなどの増産に結びつけることこそ政府の責任です。これらの作物の価格保障の充実と販路の確保、学校給食での活用や農村での加工の奨励などの援助を自治体、農協、農民グループなどと力を合わせて行うことを要求します。 転作条件整備のもう一つの柱は輸入規制です。野菜・果実などの輸入激増をおさえるためのセーフガードの発動を要求します。 (4)ゆとりある需給計画にもとづき備蓄制度を拡充すること(回転備蓄方式をやめ棚上備蓄に)。 (5)EU諸国は、価格保障政策を堅持するとともに、生産調整に対して手厚い助成を行っています。確かに保証価格は引き下げられましたが、生産調整実施を条件に、引き下げ分を補てんしています。しかも二十ヘクタール以下の中小農家に対しては生産調整実施を免除しています。 アメリカは九六年農業法で生産調整を廃止したのに続き、二〇〇二年農業法でも今後六年間にわたって生産調整をやらないことを決め、価格保障制度まで復活させました。 減反でも価格保障でも、日本の農政の逆立ちぶりはきわだっています。こういう姿勢を根本的に転換することが求められています。
(新聞「農民」2002.8.12付)
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[2002年8月]
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