「農民」記事データベース20020812-551-04

米の受給と価格に国が責任を持ち、農家の工夫や努力が生かされる米政策を

米「改革」に対する見解と私たちの提案(1/5)

二〇〇二年七月農民運動全国連合会

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 米価の大暴落や百万ヘクタールを超えた減反をなんとかしてほしい――これが農家の腹の底からの願いではないでしょうか。

 ところが、もっと米価を下げ、もっと減反を増やす――いま、政府は、こんなことを検討しています(「米政策の再構築に向けて――中間取りまとめ」=食糧庁生産調整研究会、「食と農の再生プラン工程表」=農水省)。

 なぜこんなバカなことが? いったいどうしたら米と農業の危機を打開できるのか? 一緒に考えてみましょう。

日本の米をどん底に追い込んだのは自民党政治とWTO

 昨年秋、農水省は、稲作所得が二兆九千億円から一兆九千億円に激減したことや、減反面積が百万ヘクタールを超えたことを指摘したうえで、「現在の米政策がこのまま続けば、果てしのない縮小生産のサイクル」に入ると言い出しました(「米政策の総合的・抜本的見直し」検討素案)。

 いうまでもなく「現在の米政策」とは、自民党政府が進めてきた政策のことです。実際、外米(ミニマム・アクセス米)輸入による減反の大幅拡大、食管制度の廃止と市場原理の導入・規制緩和による米価の大暴落は、自民党政治の結果そのものです。

 「オレたちが何をしたというのか!」――これが稲作農家の叫びですが、現在の米危機は自然現象でも、農家の責任でもありません。

 それならば、自分たちの政策の破たんを深刻に反省し、間違った政策の「大転換」をはかるのが当たり前です。

 ところが、輸入自由化を前提に、競争力のない農業、余ってしまう田んぼはつぶしてしまうという小泉「改革」のもと、国民の主食・米に対して政府が果たすべき責任を大きく後退させて、米つぶし、農業つぶしを進めようというのです。

これでは米生産は壊滅し、自給率は下がるばかり

 そのポイントは、

 (1)「輸入しながら減反とはなにごとか!」という怒りなど素知らぬ顔でミニマム・アクセス米輸入には何一つ手をつけず

 (2)米価の回復・保障どころか、「市場原理」にもとづいてさらに引き下げ

 (3)減反を強化する一方で、稲作経営安定対策も転作奨励金も廃止し

 (4)国の責任を完全に投げ捨てて、国民の主食・米を大企業に明け渡し

 (5)そのうえ農地・農業まで大企業に支配させる――というものです。

 こんなことを許したら米生産は壊滅します。しかも、その影響は米にとどまりません。

 いまでも輸入激増と暴落に苦しむ野菜や果実、畜産にも及び、世界最低の食料自給率はさらに下がって、一億二千万の国民は、いくら国産の農産物がほしいと思っても、安全・新鮮・美味・栄養とは縁遠い輸入食料に依存するしかなくなるでしょう。

 以下に、いま政府が検討している「米改革」(主に生産調整研究会の「中間取りまとめ」)の問題点の数々を分析し、私たちの要求と提案を対置します。

(1)外米輸入の削減・廃止こそ出発点

 米価暴落と大幅減反の最大の要因は、九五年から始まったミニマム・アクセス外米の輸入。この問題の解決なしには、農家は絶対に政府を信用しないでしょう。

 (1)輸入しながら減反とはなにごとか!

 ところが「中間取りまとめ」は「心理的影響はあるが、実害はない」などといって、ミニマム・アクセスには一言も触れていません。

 「ミニマム・アクセス米は加工用や援助用にあてているから、国産米には影響を与えていない」「影響があるなどというのは気のせいだ」というわけです。しかし、ミニマム・アクセス米が輸入されるまでは加工・援助米には全量国産米があてられていたこと一つとっても、こんな言い訳は通りません。

 減反面積は九〇年の八十三万ヘクタールから百一万ヘクタールへと十八万ヘクタール増えました。一方、二〇〇一年のミニマム・アクセス米輸入は七十七万トンで、面積にすると十五万ヘクタール。減反増加分の大部分はミニマム・アクセス米輸入によることは明らかです。

 (2)WTO交渉に悪影響

 もう一つ問題なのはWTO交渉への影響です。日本政府は、及び腰ながらもミニマム・アクセス米の削減を要求して交渉しているはずです。

 しかし、アメリカなどが「国内で影響がないと宣伝しているのだから、削減する必要はないではないか」と迫ってきたら、いったいどう答えるつもりなのか。それとも、ミニマム・アクセス削減は国内向けの宣伝文句にすぎず、削減を要求する気はまったくないのか――いずれにせよ、きわめて無責任な態度だといわなければなりません。

 (3)米の完全自由化まで展望して

 さらに問題なのは「中間取りまとめ」が、米の完全な輸入自由化を展望していることです。

 「先物取引については、生産調整や国境措置を行っている現状では導入すべきではないが、将来において……その可能性を排除すべきではない」これが問題の部分です。

 これは「将来、生産調整や国境措置がなくなれば、先物取引を導入する」という意味にほかなりません。

 ミニマム・アクセスの削減をまともに主張する気はない、それどころか米の完全自由化さえ認めかねない――。こんな姿勢で「米改革」をやられたら、いったいどうなるか、空恐ろしい話ではありませんか。

輸入しても減反を強化しないのは「手品」だ!

 ウルグアイ・ラウンドで農業交渉の直接の責任者であった塩飽二郎農水審議官(当時)と渡辺好明・現農水事務次官(当時官房企画室長)のやりとり

 塩飽「米市場を開放するのに、なぜ転作を強化しないのか。まるで手品だ」

 渡辺「世の中を安心させるための表現です。先行きのことを言うとやや舌がもつれますが……」(「日経」九四年二月七日)。

 研究会の議論はタネもシカケもばれた「手品」そのものです。


私たちは提案します

ミニマム・アクセスの削減・廃止こそ大前提

 (1)「いらない米」「余っている米」まで輸入を押しつけるのが、いったい「自由貿易」なのでしょうか? 政府はミニマム・アクセス制度の廃止を要求するとともに、義務でもないミニマム・アクセス米輸入を削減すべきです。

 (2)「回転備蓄」を「棚上げ備蓄」に切り換え、備蓄の役割を終えた国産の古米を加工米や海外援助米、飼料用払い下げに回すべきです。

 (3)ミニマム・アクセス米を削減・廃止し、とりあえず減反面積を九〇年代初頭の水準に大幅に減らすべきです。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2002.8.12付)
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2002年8月

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