わたしたちの店は、“おいしいから国産”こだわりのこころ〈訪問取材〉
『八百屋の飯屋 びわとも』 大 阪大阪の大繁華街、なんば。このアーケード街のなかに「やおめし」の暖簾(のれん)がかかるおシャレな和食屋さんがあります。「八百屋の飯屋 びわとも」です。暖簾をくぐると、木をふんだんに使った明るい和風の店内。若いOLから仕事帰りのサラリーマン、年配の御夫婦までゆったりとできる雰囲気で、値段も手頃。若いスタッフがキビキビと働いています。ふとかたわらに目を遣ると、トマトやサトイモ、レンコンが。そう、ここ「びわとも」のご主人、松本光司さんは飲食店や業者専門の八百屋さんなのです。 「大阪は“食い倒れの街”なんて言われますが、それを支えてきたのが大阪の地場の野菜やと思います。ところがいまは市街地化や高齢化で減ってしもうて、このままやとイカン、たくさんの人に食べてもろうて大阪野菜のおいしさを知ってもらいたいと思いまして、この店を開いたんです」と松本さんは言います。 開店して一年目の昨年は大阪野菜が中心でしたが、これからは地場野菜のネットワークを全国に広げて、旬を追って日本列島を北上・南下しながら、おいしい野菜料理を食べさせる店にしたい、と抱負を語る松本さん。「ぜひ“ウチにはこういう地場野菜があるよ”という情報を、全国の農家の皆さんから教えてもらたいんですよ」と期待を込めて語ります。 旬の野菜を料理するのは、若いけれども熟練した技術の板前さん。同じく大阪の地場野菜を復活させようと奮闘している親方のもとで修行を積んできました。なかでも関西風に炊かれた「季節の大阪野菜の炊き合わせ」は絶品です。えび芋は甘く、フキは香りよく、筍は歯触りよく…。これまた地物のそら豆「一寸豆の煮物」も香ばしく、「なんでもないようでも、これが職人にしか作れない味なんですよ」と松本さんはしごく自慢げです。 コストや安定供給を理由に輸入に切り替える業者が多いなかで、農業生産の不安定さを熟知しながら「まぁ長い目で見守っていきますよ」と松本さん。「うちのような個人店は、多少もうけを薄くしてもがんばっておいしい野菜をお出ししていれば、必ずわかってくれるお客さんはいますから。おいしいものを見分ける舌はなくなりません(笑)。楽観していますよ」と話してくれました。
『八百屋の飯屋 びわとも』 (新聞「農民」2002.4.29・5.6付)
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[2002年5月]
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