わたしたちの店は、“おいしいから国産”こだわりのこころ〈訪問取材〉
ちょっと外で食事をしようと思ったら、街にあふれているのはチェーン店ばかり、という経験はありませんか? 実際、ファミリーレストランやファストフード、居酒屋チェーンの食材は、輸入農産物でつくられた冷凍・加工食品であることがほとんど。「安かろう悪かろう」で値下げ競争を繰り広げています。でも一方で、そんな風潮には流されず、「おいしさ」を何より大切に、「国産」にこだわる個人経営のお店が、全国各地でがんばっています。小さいけれど、個人経営ならではの温かさ・個性が光る、そんなお店の思いを取材しました。
『陶楽』(陶芸工房兼和食処) 千 葉「昔ながらの家庭の味を大切に。いい素材のものを、手作りの器で食べる“ほんとうのぜいたく”を」――「陶楽(とうらく)」は、周囲に近郊住宅地が広がる千葉県船橋市、東船橋駅前にあります。お昼どき。小さな店内は近くのサラリーマンや主婦でいっぱいです。そのうちにお客さんの一人が“にわかウェートレス”になってお水を出したり、注文をとったりし始めました。あまりに手慣れた様子なので、「あなたはお客さんですか? 店員さんですか?」。答えは「いつも来てる客」。ここ「陶楽」には、初対面でもうちとけた友達になってしまう居心地のよい“気さくさ”があります。地域の大切なコミュニケーションの溜まり場になっているのです。 陶楽のオーナーで、料理人で、陶芸の先生でもある寺澤惠美子さんは「昔からある、当たり前のおいしいものを食べさせるお店をやりたい」と二年ほど前、陶芸教室の休憩スペースを利用して、このお店を開きました。 陶芸教室は好きな時に自由に作ってよいというスタイルで、陶芸仲間たちが休憩スペースでワイワイと集い飲み、語らううちに、生徒のなかに野菜農家、米農家、漁師の娘がいることが判明。ならばお店ができるじゃないかというのがそもそもの始まりでした。 メニューは「イワシの丸干しとトロロ汁飯定食」「豚味噌焼き肉定食」「地鳥の焼き鳥定食」など、どれも旬の地場野菜をたっぷり使った懐かしい「お母さんの味」。夜はモツ煮など一品料理も充実しています。米と野菜、味噌は地元の船橋農産物供給センターから、魚は千葉県内の大原漁港の漁師さんから、地鳥や豚肉もたしかな生産者から仕入れています。 休日には若いカップル客も多いそう。「若い人も残さず食べてくれますよ。素材のおいしさに一番敏感なのはお客さん。うれしいですね」と言う寺澤さん。「冷凍を使ったりするようなもうけ主義ではなく、オカカと昆布でダシをとって、手をかけて、素材を生かした料理を作りつづけたいですね。将来は“本物”の持ち帰り惣菜作りもしていければ」。人の輪がますます広がりそうです。
『陶楽』 (新聞「農民」2002.4.29・5.6付)
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[2002年5月]
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