わたしたちの店は、“おいしいから国産”こだわりのこころ〈訪問取材〉
かっぽう『味処はし本』 千 葉「チェーン店は増えても、ウチはウチ。少しでもいいもの、新鮮なものを仕入れて、できるものを作っていくだけです。そういう所にはそういうお客さんが来てくれるのでは」――言葉を選び選び、こう話すのは千葉県船橋市のかっぽう「はし本」のご主人、橋本信也さん。板前歴四十七年、十五歳から板場に入り、銀座の大きな厨房も預かったという生粋の板前さんです。感動してしまうのは、その料理の「繊細さ」です。職人技の精緻とはこういうことをいうのでしょうか。料理番組では「おいしい」は禁句だそうですが、しかしおいしいものはおいしいとしか言いようがない。野菜の炊き合わせ、天ぷらなど、野菜のうま味、甘味、ほろ苦さ、そして香りが、噛みしめるたび、波のように口のなかに広がってくるのです。 開業して以来、食材はずっと“築地の河岸(かし)”=築地市場で仕入れてきました。こまめに仕入れに行くとはいえ、すべての材料を運んでくるのは重労働。「でもやっぱり、河岸はいいものが集まってるよ。本当は近くの農家を回って仕入れるのが一番いいけど、時間的にも限界がある。市場はその時々の一番旬の産地のものが集まってくるからね」と橋本さん。市場の活気が小さな料理店の味を支えているのです。 橋本さんは「取材されるような特別なことは…」と謙遜しきりですが、食材について語りだすと話が尽きません。「千葉には天かぶっていう京都の聖護院かぶに似たカブがあって…。小松川(江戸川区)の根つき春菊もすごくおいしいけど高いから、今年は京都の春菊にしたんだけど好評だったね…」。農家にも「季節を大切にして栽培してほしい。春のものは春に食べてこそ、ほんとにうまいんです」と言います。 「野菜でも魚でも“本物”は供給が少ないから、どうしても値段は高くなるけど、やっぱり味が違う」。そう、たしかに橋本のお料理は庶民には少々高級ではあるのですが、暖簾をくぐれば家庭とはまったく違うとびきりの「豊かな食文化」の世界が広がっているのです。
かっぽう『味処はし本』 (新聞「農民」2002.4.29・5.6付)
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[2002年5月]
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