わたしたちの店は、“おいしいから国産”こだわりのこころ〈訪問取材〉
『唯一茶』 京 都「コンニチワ〜。今日の献立はなんですか」――お昼どき、馴染みのお客さんが笑顔で訪れます。ここは京都御所から歩いて数分、烏丸通りからちょっと曲がって、住宅街の一角にある和食処、『唯一茶(いっさ)』。「日本の伝統食を考える会」が発行する「伝統食だより」の発行責任者をつとめる中筋恵子さんのお店です。四人しか座れないカウンターに、テーブルが二つ。小さな小さなお店ですが、たしかな食材で作った伝統的な家庭料理が食べられます。 近くの和菓子店で働く二十代の女性は、毎日、昼食を『唯一茶』で食べます。「おいしいし、栄養補給に。一人暮らしなので料理はジャマくさいし(笑)」。おいしそうな匂いにつられて店に入り、ここで食事するうちに嫌いだった豆や野菜を好きになったそうです。 この日の昼定食は、焼き鯖、筍の木の芽あえ、ハクサイ菜のお浸し、切り昆布とキュウリとレンコンの酢の物、ごより豆、、切り干し大根の煮付け、おすまし、滋賀の在来稲シガアサヒと雑穀のご飯。「“こだわらないのがこだわり”というか、おいしいものを食べたいと追求してきたら、今のようになっただけなんです。素材を生かして、あるものをどう食べるかという工夫ですね。凝ったことせず、家庭の延長で」と、中筋さんはまったく力まずに言います。 でもやはり、そこにはこだわりが。農民連のボックス野菜をはじめ、食材は国産。旬でないものも使いません(ちなみにこの日はキュウリの“解禁日”でした)。とくに調味料は「私の腕がダメでも、調味料さえちゃんとした(醸造・製造メーカーの)ものであれば“本物”の味になります」と言う熱の入れよう。 長年、消費問題を扱う新聞社の記者を勤めていた中筋さん。琵琶湖の水質汚染や大阪のお婆さんたちの食生活、良心的な食品会社などを取材するなかで「日本の伝統食を考える会」と出会ったのだそうです。そのネットワークを生かして、十二年前『唯一茶』を開店。 今は地域で伝統食を伝えていく拠点を作ろうと、「伝統食を考える会」のサロンの準備で超多忙の毎日です。近所の西陣織の機屋のおかみさんに得意の伝統食を作ってもらい、昼定食の一品に加えたり、京都産直センターの民谷さんを講師に農業の学習懇親会を開いたり、『唯一茶』も「伝統食の地域ステーション」として活躍中。「おいしいものは、力になる」――リキまない中筋さんの説得力ある一言です。
『唯一茶』(いっさ) (新聞「農民」2002.4.29・5.6付)
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[2002年5月]
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